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  • WEDGE Infinity
  • 2021年11月23日 17:17 (配信日時 11月23日 05:59)

大虐殺と首都戦場化の危機にあるエチオピア - 岡崎研究所

エチオピアでは政府軍と北部のティグレ人勢力との内戦がエスカレートしており、大規模な虐殺の懸念がある。

andreonegin / DancingMan / iStock / Getty Images Plus

昨年11月初め、ティグレ州に対する政府軍による武力討伐が開始され、1カ月足らずで州都を含む大半の地域は制圧され、ティグレ人民解放戦線(TPLF)は山岳部に逃げ込んで抵抗を続けるも、アビィ首相による勝利宣言が出された。他方、政府は同州全体に対する食料供給などを遮断し続け、また、非人道的な弾圧行為などが行われたことから米国やEUがエチオピアに対し経済制裁を課すような状況であった。

ところが、6月末に至り、TPLFが州都メケルを奪還、政府軍がティグレ州から撤退する事態が生じた。これは、スーダンとの国境紛争への対処やティグレ州全体を包囲するための戦略的撤退とも見られていたが、状況はここにきて更にTPLF側に劇的に有利に展開してきた。

反政府民族団体9派の同盟が成立し、TPLFは北から、オロモ族のオロモ解放軍(OLA)が南側から進軍し、TPLFは、首都まで250~300㌔のところまで進出してきているという。OLAは11月初めに、首都アディスアベバが数カ月あるいは数週間以内に陥落する可能性があると述べた。

政府は、9派の同盟は宣伝行為に過ぎず、アビィ政権も強気の姿勢を崩していないが、11月2日には、全土に非常事態宣言を布告し、首都のティグレ人を拘束し始め、首都市民に地域ごとの自衛のための組織化を求めるなど、危機感は露わである。

同5日には、米国は自国民にエチオピアからの退去勧告を発出し、国連では、中国、ロシアも加わって停戦と休戦交渉を求める安保理のプレス発表が行われた。中国としても自らが支援するアビィ政権の状況が深刻であるが故に、内政問題であるので安保理は関与すべきでないといった原則論を引っ込めている。

アビィ政権は、米国やEUから人権侵害の停止や停戦するよう圧力を受ける一方、国連では、ロシア、中国の支持を得て、イラン、トルコ、中国などからは無人機などの兵器の供給、資金面ではサウジアラビアやアラブ首長国連邦の支援を得ている。軍事面で有利であるはずのアビィ政府軍がなぜにこのように劣勢となってしまうのか一つの疑問である。

アビィ政権は先の総選挙で圧勝し、国民の支持も得たとは言え、ティグレ州は除外され、オロモ族系政党は選挙をボイコットし、事前に有力な政敵を排除するなど、完全に公正で民主的な選挙とは言い難い面もあった。また、ナイル巨大ダムで対立するスーダンやエジプトが反乱側に何らかの便宜を図っている可能性もあろう。

根本的な問題は、エチオピア国民の間には、長年民族の連合体としての国家観やそれに基づく政治的主張が定着しており、アビィの掲げる理想である中央集権的な脱民族主義的国家観が未だ十分な共感を得ていないことにあるのではないかと思われる。そしてこれが、政府軍の士気にも影響しているようにも見える。特に、民族意識の強いオロモ族、ティグレ族にとり、アビィの中央集権強化は、帝制時代やメンギスツの共産主義政権への回帰を連想させた。

政府と反政府の交渉は容易ではない

2018年、アビィは、長年にわたるティグレ族政権に対する国内の反発を背景に、多数派のオロモ族出身者(母親はアムハラ族)としては初めて首相に就任した。民族融和とリベラル的政策を推進し、エリトリアとの和平実現といったものでノーベル平和賞を受賞するなど、エチオピアの将来に対する期待を高めた。

しかし、ティグレ族政権下での利権構造や腐敗の摘発などに対するTPLFの反発と離反、そして民族連合政権から民族を超えた大政翼賛的な与党の設立に対する民族主義者の反発、オロモ族内のライバルや過激民族派との対立もあり、アビィは権力維持のためにかなり強権的な手法をとるようになっていった。また、オロモ族民族派からすれば、アビィの中央集権化は、結局ライバル意識がある歴史的支配勢力のアムハラ族の地位を復活させる恐れがあるとしてその離反を招くこととなった。

政府側、反政府側双方が非人道的な残虐行為を行っている様であり、反政府側はアビィの退陣を要求しており、他方、政権側はTPLFもOLAもテロリスト団体と指定しているので、双方とも交渉のテーブルに着くのは容易ではないであろう。

民族間の大量虐殺や首都を戦場とする武力衝突が生ずる可能性は極めて高く、ここ数週間が正念場であろう。アフリカ連合(AU)は、オバサンジョ元ナイジェリア大統領を仲介のための特使に指名し、政権側はこれを受け入れたが、TPLF側が難色を示しているとの情報もある。

問題の根本的な解決は容易ではないが、当面の大量虐殺といった事態を避けることが最優先であり、その為には、国連や欧米による働きかけに加えて、アフリカ人による仲介がより期待できるようにも思える。

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