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  • ロイター
  • 2021年11月22日 18:20 (配信日時 11月22日 18:10)

アングル:地政学と経済の複合リスク浮上した中東欧、予想外の市場変動も


[ロンドン 19日 ロイター] - 普段なら十分に予測可能な中東欧の金融市場に突然、過去何十年間も経験したことがないほど非常に多様な地政学的・経済的リスクが出現し、投資家の目をくぎ付けにしつつある。

具体的な不安材料は、以下の通りだ。まず、欧州連合(EU)とベラルーシの強権的なルカシェンコ政権との対立によって、域内最東端のポーランドやリトアニアなどの加盟国が、移民の大量流入危機にさらされている。

他方、ロシアとウクライナの緊張が再び高まり、EU内でも法の支配と民主主義を巡って欧州委員会とポーランド、ハンガリー両国のあつれきが続く。ルーマニアはなお、政治空白が解消されていない。

資産運用業界はこれまで中東欧について、ユーロ圏の衛星圏として景気拡大が見込める超低金利を採用しているという面と、ロシアの影響力から完全には脱却していないという特徴を兼ね備える地域という視点で解釈してきた。

しかし、最近起きた一連の出来事は、それぞれ個別に切り分けて評価することができない上に、冷戦終結以降で物価が最も跳ね上がり、新型コロナウイルス感染が拡大しているという背景に照らして考えると、市場関係者にとって重大な意味を持っている。

外為市場では、ハンガリーフォリント、ポーランドズロチ、ルーマニアレイ、ロシアルーブル、ベラルーシルーブルが、今月になって世界で最も低調に推移した8通貨のうちの5通貨となった。東欧諸国の株式の値動きも、この1年間で最悪だ。

政府債は、物価高騰による実質リターンの減少によって価格が低迷。ポーランドとハンガリー、ルーマニアの国債は現在、新興国として実質利回りのマイナス幅が最大級となっており、トルコよりも大きい。ウクライナ国債価格は、ロシアの戦車が再び国境に近づいているとのニュースを受け10%も急落。西側諸国がロシア国債を保有する銀行やファンドへの包括的制裁に動く恐れがあることは、ロシアの金融市場を直撃している。

JPモルガンは17日に公表したリポートの表題を「ようこそ再び新興国へ」として、何年も平穏だった中東欧への重圧の高まりを反映させた。

15日以降の状況を見ると、EUはベラルーシがポーランドなどに中東などから戦禍を避けてきた何千人もの人々を送り込んでいると非難して制裁を強化する方針を表明。これに対し、ルカシェンコ氏は否定し続けている。

北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は15日、「相当規模」のロシア軍がウクライナ国境近くに配備されていると指摘した上で、NATOはウクライナとともにある、とロシアに警告。ルーマニアは各勢力がまだ政権樹立に向けた努力を続け、ボスニア国内では分離を求める声が消えずに、バルカン半島でまた民族紛争が勃発する恐れが出てきている。

アバディーンのポートフォリオマネジャー、ビクター・サボ氏は、ウクライナフリブナおよびルーブルや一部中東欧国債の値下がりを挙げて「ほとんどの資産に悪影響が及んでいる」と述べた。

<経済情勢も急悪化>

ニュースのヘッドラインをにぎわすのは、主に地政学的な緊張だ。だが、UBSの新興国市場戦略責任者、マニク・ナライン氏によると、中東欧の経済のファンメンタルズ(基礎的諸条件)も実は急激に悪化している。

ナライン氏の見立てでは、輸入増加に加え、自動車生産など幾つかの重要な輸出セクターにおける供給制約のため、ポーランドの今年の貿易収支は2012年以降で初めて赤字に転落する公算が大きい。法制度を巡る欧州委との長年にわたる紛争が解決されないと、それも経済的不安として、のしかかりかねない。

EUは今、新型コロナ復興基金のうち、ポーランド向け360億ユーロ(407億ドル)の配分を留保している。これは同国の国内総生産(GDP)の約1%に相当する。ただ、向こう6年で1200億ユーロ強に上る従来の地域開発基金まで差し止められると、GDPの4-4.5%の資金が入ってこなくなる。

JPモルガンの試算に基づくと、ポーランドとチェコ、ハンガリーの経常赤字の対GDP比はそれぞれ2.3%、1.8%、2.9%に達する。今年になって天然ガス価格が300%も上昇している点も踏まえると、各国通貨の下落はさらに進み、中央銀行は利上げを継続せざるを得なくなってもおかしくない。

同社は「対外収支の悪化がより恒久的だと分かれば、中東欧通貨のボラティリティーは拡大するだろう」と述べた。さらに経常赤字の対GDP比が1%拡大するごとに、50ベーシスポイント(bp)の利上げが必要になるという。

借り入れコストも増大し得る。中東欧で経済規模が最も大きいポーランド、チェコ、ハンガリー3カ国の現在の物価上昇率は平均で6.5%前後。これが最終的に3─5%に収まったとしても、10年国債利回りは3.9─5.2%と近年の水準よりずっと跳ね上がる。

ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの新興国市場専門家リュブカ・デュシャノバ氏は、中東欧の中銀は政策運営で後手に回っていて、インフレ抑制の面で信頼を失っていることが市場の弱さをもたらしているとみている。

「地政学的緊張だけをマクロ経済的な背景から取り出すのは難しい。恐らく、中東欧は相当困難な局面に入っていくだろう」とデュシャノバ氏は話した。

(Marc Jones記者、Karin Strohecker記者)

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