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ハンバーグサンドも買ってあげるから

「原発出て行け」連呼の隣人提訴=東北電力社員の一家―仙台地裁(時事通信)

自宅に向かって「原発出て行け」などと連呼され、精神的苦痛を受けたとして、東北電力の男性社員と小学2年の長男(8)ら家族3人が21日までに、近所の男性を相手に約540万円の損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こした。

訴状によると、2012年7月、近所の男性は飲酒運転し、仙台市内の男性社員宅のコンクリート壁に衝突、破損させた。社員が修理費の支払いを求めたところ、社員宅に向かって「原発爆発させて何やってるんだ」「東北電力出て行け」などと大声で叫んだという。

ほかにも、庭先で遊んでいた長男に向かって「原発出ていけ」と連呼するなど、計20回以上嫌がらせを受け、一家は精神的苦痛を受けたと主張している。 

 

 「東京電力社員の子供を、全員がボイコットしなさい」「皆が東京電力社員の子供を完全に無視しなさい」「電力会社社員は高給まで取っている。その子供の未来をなくすことが、デモよりも確実~」などと宣って話題を攫った反原発活動家もいたものですが、東北電力社員に「原発爆発させて何やってるんだ」「東北電力出て行け」などと迫った人もいるようです。東北電力の原子力発電所というと女川原発辺りでしょうか。女川原発は無事に冷温停止状態へ移行しただけではなく、震災後に施設を開放して避難者の受け入れに努めていたことでも知られ、石巻市の亀山紘市長(共産党系の首長ですよ!)からは「安全対策をした上で再開する方向で考える必要がある」と語られるなど、まぁ反原発な人にとっては福島第一原発以上の悪夢になっていたのではないかと思われるのですが、憎悪はあっても事実を見る目と受け入れる頭が欠けている人もいるわけです。

 

「肉の万世」、東電を提訴 「風評被害で売り上げ減」

 東京電力福島第一原発事故による風評被害で売り上げが減ったとして、首都圏を中心に和牛レストラン「肉の万世」などを展開する万世(東京都千代田区)が東電を相手に、約2億3400万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしていたことが分かった。

訴状によると、万世は2010年3月期に約1億8900万円の純利益を計上していたが、原発事故以降、売り上げが減少。12年3月期は約8200万円の赤字になったという。

牛肉の仕入れ先が福島県を含む東北地方と栃木県だけで約7割を占めており、福島県白河市内に牧場があることも宣伝。店舗内の個室に「白河」や「白河亭」といった名前もつけていた。「赤字になったのは放射能で汚染されたという風評被害が原因で、急激な客離れが進んだ」と主張している。

 

 昨年は仙台名物として外国産の牛タンを客に提供してきた事業者が「地元産と思い込んでいる客が多く、風評被害は大きい」として東京電力に損害賠償を求めるなんてこともありました(参考、誤解を広めてきたのは誰だ)。それに比べれば、実際に東北や栃木から牛肉を仕入れている肉の万世の主張には多少の分があるでしょうか。しかし「赤字になったのは放射能で汚染されたという風評被害が原因」というなら(そればかりが原因かというのはさておき/何事もなくとも経営悪化なんて珍しくないわけで)、その風評被害を巻き起こし、広めてきた人々を放っておいて良いのか?との疑問は尽きません。

 牛肉から検出される放射性物質を基準値以下に収めるために要した追加のコストであれば、まぁ東京電力に費用負担として損害賠償を求める権利はあるかも知れません。しかし、東北や栃木から仕入れられた牛肉が危険であり摂食を避けるべきであるかのような、事実とは全く異なる風評を流してきたのは誰なのでしょうか。それは少なくとも、被告となっている東京電力でないことは確かです。

 事実に基づかない風評を流した人や組織を訴えるのなら、筋は通ります。損害賠償は、その損害をもたらした「加害者」に請求する、当たり前のことですよね? ただし今回の風評被害の「加害者」は範囲が広すぎるために「訴えようがない」のが実態になっているのかも知れません。朝日新聞出版なり中日新聞社なり、あるいは週刊金曜日なり有象無象の活動家なり罪を償うべき対象は挙げていったら切りがないですから。風説の流布によって誰か/何かに損害を与えているからといって片っ端から裁判所に連行しようものなら、それもまた悪夢のような世界ですし。

 BSE騒動の時など普通にアメリカ人が貪り食べているものですら輸入禁止となってしまい、この中で肉の万世など比ではないレベルの大損をした企業もあったはずですが、その損害はどこに補償を求めれば良かったのでしょう? 結局「訴えやすい」かどうかが分かれ道になっているように思えます。訴えようにも自分に損害を与えた相手が茫漠としていて明示しきれない場合と、好都合にも世間のバッシングの対象で、今なら自分側の言い分が通りやすい、抗弁されることが考えにくく、相手方の反論も黙殺されるであろうと、そういう状況では必然的に後者が訴訟の相手に選ばれてしまうわけです。

 冒頭の東北電力社員へ嫌がらせを続けた男性の行為は、暴挙として非難されることが多いものと思います。では一部企業による東京電力への賠償請求はどうなのでしょう。実際に東京電力が防げなかった事故によるものならともかくとして、原発事故にかこつけて根も葉もないデマを流した人々がもたらした「被害」の補償を東京電力に求めるのは妥当なのやら。単に弱っている、与しやすい相手を選んだだけではないのか、そうした点では冒頭に挙げた被告と、次に引用した原告の立ち位置は意外に近いところもあるのではと感じるところです。まぁ賠償の原資は巡り廻って、風評被害を広めようとする輩を退けられなかった国民の懐に求められるので因果応報ではあります。

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