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【原発避難者から住まいを奪うな】避難者側が福島県職員などの証人尋問を申請 裁判官は「何を尋問するのかイメージできない」~〝東雲追い出し訴訟〟第8回口頭弁論

福島県が昨年3月、原発事故で〝自主避難〟した4世帯を相手取り、国家公務員宿舎「東雲住宅」(東京都江東区)の明け渡しと未納家賃の支払いを求めて提訴した問題で、うち1世帯に対する第8回口頭弁論が10日午前、福島地裁206号法廷(松川まゆみ裁判官)で行われた。被告(避難者)側代理人弁護士が第6、7、8準備書面を陳述。復興庁や関東財務局、福島県生活拠点課の担当者、被告本人に対する尋問を申請した。松川裁判官は「被告の主張は尽くされた」と述べたうえで次回12月14日の弁論期日までに採否を決めるとの方針を示したが、採用には消極的とみられる。



【「尋問事項が概括的」】

 この日の弁論も10分足らずで終了した。
 被告(避難者)側は第6、7、8準備書面を陳述。復興庁被災者支援班の責任者、関東財務局東京財務事務所長、福島県生活拠点課長(いずれも氏名不詳)、そして被告本人の所在尋問(東京地裁での出張尋問)を申請した。

 復興庁の官僚については「2017年3月末をもって災害救助法に基づくみなし仮設住宅の提供打ち切りを決定した経緯」などについて、関東財務局東京財務事務所長に対しては「2020年3月26日付本件建物の使用許可申請について使用許可を行った経緯」などを、福島県生活拠点課長には「2020年3月26日付の本件建物の使用許可申請を行った経緯」などを尋問する予定だ。被告本人尋問では「入居に至った経緯」や「福島県に帰還できない理由」を明らかにする方針。

 しかし、松川裁判官は「尋問事項が概括的すぎる。民事訴訟規則107条では『尋問事項書は、できる限り、個別的かつ具体的に記載しなければならない』となっている。それぞれどういうことをお聞きになるのかイメージができない」、「尋問事項を個別具体的にしていただかないと採否を決められない」、「採否を決めなければいけないので尋問事項を個別具体的にしてください」などと再三にわたって注文をつけた。

 被告(避難者)に対する本人尋問についても「『避難民である』という主張をしているが、それを基礎付ける具体的な主張がない。震災・原発事故当時、被告がどこに居たのか、そこでの生活歴は裁判所として把握していない」として、次回期日の一週間前までに客観的な証拠と一緒に陳述書を提出するよう求めた。

 平松真二郎弁護士と山川幸生弁護士は「福島原発被害東京訴訟」の代理人も努めており、12月1日(第2陣一審)と9日(第1陣控訴審)に弁論期日が予定されていることから難色を示したが、松川裁判官は「では、そのままで判断するかもしれません」として、あくまで12月7日までの提出を求めた。

原発事故に伴う〝自主避難者〟が入居した東京都江東区の国家公務員宿舎「東雲住宅」

【「使用許可」の裏に何が?】

 閉廷後、取材に応じた平松弁護士は「裁判官は尋問の申請を採用しない方向で考えているのだろう。『被告(避難者)側が裁判所の判断に堪え得る材料を出さないから採用を決定できない』という形をとろうとしているように思える」と語った。

 「福島県は行政活動として明け渡し訴訟までやっている。その過程でどのようなことが考慮され、県とセーフティネット契約を結んでいない避難者に対して明け渡し訴訟など始めたのか。契約が結ばれないと分かっているのに、あえて国の請求権を代位行使をするために使用許可を申請して賃料を払い続けている。どうしてそういう判断になったのか。その辺りをきちんと確認したい。2018年~2019年当時に福島県生活拠点課長を務めていた職員がふさわしいと思う。申請をし続けている。なぜこういう裁判を起こすに至ったのかというものを明らかにしたい」

 関東財務局東京財務事務所は逆に、なぜ福島県に使用許可を与えたのかが焦点となる。

 「避難者側が福島県とセーフティネット契約を結ぶ意思がないと分かっていながら、なぜ県に使用許可を出したのか。さすがに『契約締結しない意思を把握しながら許可した』とは言わないだろうが、『避難者側が締結しないことを知っていたら許可しなかったのではないか』という点は確認したい。許可を取り消すべきではないかということです」(平松弁護士)

 「裁判官は『尋問事項が概括的すぎる』と言うが、今回提出した尋問事項が抽象的だと言うなら、ではどこまで具体的に書けば良いと言うのか。使用許可が出された日付まで特定して、許可した理由ついて質問したいとまで書いているのに、それが個別具体的でないと言うのは理解しがたい」と語ったのは山川弁護士。

 「尋問事項書の改訂版を出すことになるだろう。日程的に厳しいが12月7日までに提出する努力をする」


被告(避難者)側が提出した準備書面の一部。松川裁判官はこれをもって「被告の主張は尽くされた」との認識を示した



【「国際人権A規約違反だ」】

 避難者側が陳述した準備書面の主な内容は以下の通り

 ◆第6準備書面(12ページ)
 「2017年3月31日をもって災害救助法に基づく避難住宅の提供を打ち切った措置が『経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約』(国際人権A規約)12条に違反し、かつ、憲法13条、22条、25条等にも違反するものであって、被告は現在においても本件建物等の占有権原を有している」

 「国際的に見れば、公衆被ばく線量限度年間1ミリシーベルトは、まさに『放射線の許容限度』であり、2017年の段階においても、被災地の住民らの健康に対する権利の侵害は継続していたということであり、そのような被災地からの避難者の避難の相当性が否定されてはならず、住宅提供を含めて避難者支援を打ち切ることが許される状況ではなかった」

 「被告の避難元は、現在においても子ども被災者支援法の『支援対象地域』に含まれているうえ、放射性物質汚染対処特別措置法の汚染状況重点調査地域に指定されている。本件事故によって放出された放射性物質による環境の汚染が人の健康または生活環境に及ぼす影響から免れるため、最も端的な方法である『避難』を選択することが現在でも十分に合理性を有している」

 ◆第7準備書面(6ページ)
 「人権条約には裁判規範性を認める裁判例が多数存在し、かつ、A規約の規定や内容が法の解釈に反映されることを認めた裁判例があることに照らせば、A規約が裁判規範性を有し、本件において、A規約に基づく健康に対する権利への侵害が考慮されるべきであることは明らかである」

 ◆第8準備書面(4ページ)
 「本件においては『国が原告に対し明渡請求権の代位行使を求めた事実はない』(原告第1準備書面2ページ)のであるから、原告による代位行使によって国の財産管理行為への不当な干渉とならないか、すなわち、代位行使を認めるべき事情が全く明らかにされておらず、代位行使が必要やむを得ないものであるということはできない」

 「不法占有であるのであれば、そもそも本件建物の所有者である国が被告に対して直接賃貸借契約の締結を申し出たり、賃料ないし賃料相当損害金を請求したり、あるいは本件建物の明渡し等を求めるのが本筋である」

(了)

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