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市場を制する者はコンプライアンスを戦略として活用する?

2月25日の日経法務インサイドでは、「薬の登録販売者制度 相次ぐ不正受験に動揺」と題する特集記事が掲載されております。当ブログでも昨年11月に、西友社による医薬品登録販売者制度の不正受験をとりあげまして「虚偽申請は西友だけなのだろうか」等のエントリーを3本書きました。組織ぐるみでもないのに、これだけ露骨な不正行為が全国的に堂々と行われるというのは、おそらく他の小売業者でも同様のことがまかり通っているからではないか?と推測しておりましたが、案の定、別の大手スーパーさんや、ドラッグストアさん等でも大量不正受験の事実が発覚しております(ちなみに25日の上記記事によると、もうすぐ西友社でも大量不正受験に至った経緯について公表されるそうであります)。

上記記事のように、不正受験によって取締役らの株主代表訴訟リスクが高まるかどうかは、私はなんとも言えませんが、この西友社をはじめとした不正受験問題にひそむリスクは、なにも医薬品登録販売者制度に限るものではなく、業界を超えた他社においても同様の不正リスクがあることを物語っているように思います。

これだけの競争関係にある企業社会において、他社もやっているのに自社だけはやらないのはマズイ・・・といった意識が働けば、残念ながら誰でも不適切な行動に出る動機があります。「みんなで渡れば怖くない」症候群が社内に蔓延することで、不適切な行動によって利益を最大化することに、誰も社内で異を唱えないという事態に発展していきます。「営業が泥をかぶって働いているからこそ利益が出ているのに、管理は涼しいところから偉そうな口を叩くな!」と担当取締役から一喝されてしまえば、それでコンプライアンス軽視の社風が形成されていくのかもしれません。こういった中でコンプライアンス経営の重要性を唱えることはなかなか難しいところであります。

ところで医薬品登録販売者制度は規制緩和の一環として制度化されたわけでありますが、ドラッグストアや調剤薬局だけでなく、この制度のおかげでスーパーやディスカウントストア、コンビニまで大衆薬という売れ筋商品を販売する道が開かれたことになります。ただ、既存の市場占拠者たちも、新規参入組に対して手をこまねいているだけではありません。行政に働きかけて、できるだけ競争条件のハードルを高くしたいところであります。

たとえば今回の「実務経験証明制度(業者側が、資格試験受験者について、一定程度の医療品販売に従事していた経験があることを証明するもの)」というものも、これまでの医薬品販売業界が行政に対して強くプッシュをして採用された条件だとお聴きしております。もちろん消費者の生命、身体の安全を守るための制度であることは間違いないところでありますが、そのための具体的な条件設定を強く求めたのは競争を有利に展開するため、といった狙いがあったからではないかと推測いたします。たとえ規制緩和によって市場の競争が激しくなったとしても、容易には新参者が市場を席巻してしまうことができないよう、コンプライアンスルールを活用して対抗する、ということも十分考えられるところかと思います。この先、大衆薬のネット販売の議論とも関係しそうな論点になりそうです(たとえばネット販売の原則全面解禁を認める代わりに、到底「実質的な解禁」とは言えないような厳しい安全基準を設けるとか・・・)

市場を制する武器としてのコンプライアンスは、このような規制緩和が問題となる場面だけではないように思います。たとえば景表法違反によって消費者庁から排除措置命令が出されるといったケースで、とんでもない誤認表示を理由に排除措置命令を受けるのであれば仕方ありません。しかし、それなりに企業が商品の性能について自信をもっている場合、「表示された性能は具備されていない」とする排除措置命令(もしくはその予告)に不満を持つことがあります。

表示通りの性能を具備していると確信を抱いているにもかかわらず、行政が「これが正しい測定方法」として指定している方法によって基準をクリアしなければ、何ら効果がないものとして評価されてしまうおそれがあります。業者側としては「ほかにも表示通りの性能があることを示す測定方法がありますよ」と反抗してみても、なかなか覆りません。このあたりも、国民の権利保護が究極の目的ではありますが、表示の適正を判断するために、いかなる測定方法によって製品の性能を測定すべきか、という点は市場に強い力を持つ企業がイニシアティブをとっていることがあるのではないかと。実質的には行政に強い力を持つ大きな企業が中心となり、新規参入者側へ参入条件を高く設定する、ということも起こりうるのではないでしょうか。

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