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2013.02.26

■2月某日 米国を訪問し、オバマ大統領と会談した安倍晋三総理が意気揚々としている。最大の懸案だったTPP(還太平洋パートナーシップ協定)における「聖域なき関税撤廃」で米国側の譲歩が得られたとして,参加に前向きな姿勢を打ち出し、しかも安倍総理に一任する方向性が決まったからだろう。TPPという自民党が割れるほどの難題を、総理に一任するというのだから、政治家にとって国民への説明責任など関係ないという事だろう。それに相乗りする公明党しかりである。普天間基地の辺野古への移設も、安倍総理が公有水面埋め立ての許可を県に申請する方針も決めた。こちらも、沖縄県民への説明責任も県民意志も完全無視である。

 数を頼みとした補正予算も一票差で可決された。野党の足並みが崩れたせいだ。次は、黒田元財務官を日銀総裁人事に押しこむつもりだろう。したたかな財務官僚の権益も安泰だ。不可解なのは、日本のメディアの恐るべき怠慢な報道姿勢だ。安倍総理の訪米にしても、日本のメディアは大はしゃぎだったが、米国メディアは実に冷静な報道だった。安倍総理がお土産にゴルフのパターを送ったことで会談の雰囲気が一転したなどとヨイショの記事でサポートしていたが、そこにはメディアとしての分析力も批判力も完全に欠如している。それで安倍内閣の支持率まで上昇するというのだから、まさに大本営報道のメディア効果というべきである。総理就任以来続いている円安、株高にしても国際的な経済関係やそもそもアベノミクスが抱える経済の危険性についての洞察力のある記事も見られない。イタリアの国政選挙の結果ひとつで円高になり、株も大幅低落している。日本だけがいい思いができるほど、国際関係は甘くないはずだ。

 沖縄の基地問題にしてもしかりだ。県民の総意を無視して辺野古新基地建設に向けての準備を着々と進め、空軍CV22用のオスプレイの嘉手納基地配備も予定されている。計画通りならば、沖縄の空にはいずれ30機以上のオスプレイが飛び交い、近隣諸国での飛行訓練が大々的に行われる予定だ。最近は日米の実弾使用の合同軍事訓練も活発だ。米国の国防予算が厳しくなっており、沖縄海兵隊のグアム移転も先送りされた。その分もいずれ日本政府に負担を持ちかけるはずだ。その一方で、米軍を補佐するために、下地島空港や与那国島にも自衛隊配備のための防衛予備調査の予算も新設された。緊迫する尖閣問題を理由に、日米両政府の東アジア戦略は中国封じ込めのための軍事要塞化を狙っていることは明らかだ。安倍総理とオバマ大統領の会談が成功し、日米同盟関係が強化されたのは自慢すべきことでもない。対等な日米関係には程遠く、対米従属はより一層強化されたというべきである。そのあおりを受けるのは沖縄の米軍基地である。

 TPPにしても、日本が米国と対等な交渉力を発揮できるとは思えない。戦後の日米関係を振り返るまでもなく、最後は米国の言いなりで落着することが目にみえている。TPPで最大の利益を得るのは間違いなく米国である。結論は見えているのに、安倍総理は米国と対等な交渉が出来ると本気で思っているのだろうか。72年の沖縄の本土返還においても、日米の間で裏協定が結ばれた。当時の毎日新聞・西山太吉記者がスクープした返還における外務省の密約である。日米関係は、日本が敗戦国という歴史もあって、常に力関係でねじ伏せられてきた。返還にまつわる密約をすっぱ抜いた西山記者は公務員法違反の共犯で逮捕され、有罪判決を受けた。西山記者が名誉を回復するまでに実に長い時間を必要とした。その西山記者を陰で支えてきた奥さんが亡くなった。葬儀には参加できなかったが、弔電と弔花だけは送っておいた。西山記者と苦労を共にしてきた夫人に合掌しておきたい。

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