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「最高裁・裁判官の国民審査」―制度改正の必要あり―

先の衆議院総選挙では、同時に最高裁判所裁判官11人の国民審査も行われた。10月29日付朝日新聞朝刊に掲載された「司法チェック 投じる一票」によると、国民審査の意味するところは、「『人権の最後のとりで』とされる最高裁の裁判官として、ふさわしいかどうかー。その適格性を有権者が直接チェックし、やめさせるかどうかを決める」点にある。

「国民審査は民主的な統制を司法に効かせるため、憲法79条に定められた手続きだ。最高裁の裁判官は、15人(長官1人、判事14人)のうち8人が『違憲』と判断すれば法律や行政処分を無効にできるほど強い権限を持つ。逆に違憲の状態を放置すれば、誰かの人権を不当に制約し続けることにもなる重い責任がある。裁判官の選任には内閣が関わるが、任命の過程は公表されないため、国民審査には内閣の選考を事後的にチェックする意味もあるとされる。」とも報じられている。

記事を読む限り、国民審査制度は竜頭蛇尾の感想を禁じ得ない。記事にあるように、内閣の任命過程が公表されないのであれば、有権者は何をもって裁判官の「人となり」を知ることができるのか? この点に何よりも疑問を感じる。

確かに本件の朝日新聞記事でも紹介されているように、事前に出身(裁判官、行政官、検察官、弁護士、学者)や経歴、人物像、関与した事件での判断などを知ることはできる。しかし、肝心の投票日当日は、審査の対象となる裁判官の名前を並べた用紙に、やめさせた方がよいと思う裁判官については氏名の上の欄に「×」印をつけるよう「注意」が書かれているだけで、恐らく司法の現状などに興味を持つ人以外は判断できない。

しかも「×」以外の記号は無効で、判断できないからと言って何も書かなければ事実上の信任として扱われ、現実に過去の国民審査で「×」が過半数を超え解職された裁判官はいない。

どうみても制度は形式的で機能していると考えにくい。しかし、国民審査の在り方に本格的な異議を唱えた報道を目にした記憶もあまりない。見落としている可能性もあろうが、メディアに対する最近の批判や新聞離れは、こうした点に対する不満も一因があるような気がする。
日本学術会議の会員候補6人の任命拒否があれほど激しく批判されたのに、さらに大切な裁判官の任命について、単に「内閣が関わるが、任命の過程は公表されない」で済ますのは矛盾している気さえする。

先のオリパラ開催では朝日新聞をはじめ多くの新聞が社説などで「オリンピック開会」に疑問を投げ掛ける一方、開会後のスポーツ欄にはメダルラッシュや選手の活躍記事が躍った。社論が統一されているわけではなく、現代風に云えば、多様性を重んじる風潮に変化しているのかも知れない。「警世の木鐸」は既に死語になった気もする。

話が新聞批判になってしまったが、本題は、裁判官の国民審査で、一体何%の有権者が裁判官の人格・識見を理解して投票しているのか、疑問を提起する点にある。個人としては、国民審査制度は見直しの必要があると考える。この件について全てのメディアに、もっと積極的な問題提起をしてほしく思う。

【参考】今回、国民審査の対象となった11人の裁判官の氏名と出身、罷免率(有効票に占める×印の割合)は以下の通り。(敬称略)
   深山卓也  裁判官出身 7.85%
   安浪亮介  〃     5.97%
   林 道晴  〃     7.72%
   堺  徹  検察官出身 6.24%
三浦 守  〃     6.71%
   岡 正晶  弁護士出身 6.24%
   草野耕一  〃     6.73%
   渡辺恵理子 〃     6.11%
   岡村和美  行政官出身 7.29%
   長嶺安政  〃     7.27%
   宇賀克也  法学者出身 6.88%

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