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総選挙番付 損した人得した人

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総選挙投開票日の岸田首相(2021年10月31日、自民党党本部) 出典:Photo by Behrouz Mehri – Pool/Getty Images

樫山幸夫(ジャーナリスト、元産経新聞論説委員長)

【まとめ】

・「得」東正横綱は岸田文雄内閣総理大臣、西は「日本維新の会」代表松井一郎大阪市長。

・「損」の横綱は、立憲民主党枝野幸男代表と自民党の甘利明前幹事長。

・朝日新聞、各紙予想外す中「自民が単独過半数確保の勢い、立憲はほぼ横ばい 朝日情勢調査」とほぼ的中させ、底力示した。 

「得意淡然 失意悠然」ー。

勝海舟の言葉というが、うれしい時は淡々と、つらいときも悠々としていろという意味だろう。

今回の総選挙で当選を果たした人、苦杯をなめた人、この言葉をかみしめ、永田町で活躍、または地元で捲土重来を期してほしい。

■ 「得るは失うのもと」岸田、怨念晴らし喧嘩も強くなった?

「得」東の正横綱格は、もちろん内閣総理大臣、岸田文雄。

理由をあげるまでもないだろう。

総裁選の勝利も危ぶまれ、総選挙も大幅議席減確実といわれながらふたを開けてみれば、総裁選は圧勝、総選挙では自民党だけで絶対安定多数を維持した。

国民に人気の高い河野太郎を蹴散らし、地元広島での参院選公認などにからむ二階前幹事長、菅前首相への深い怨念を晴らした。

幹事長交代に伴う外相人事でも安倍、麻生の両元首相の意向を慮ることなく自らの方針を貫き、「喧嘩に弱い」という悪評も返上した。

好事魔多し。今回はツキに恵まれていただけかもしれない。来年の参院選挙に勝利して初めて安定政権が見えてくるだろう。

■ 維新・松井は大阪都構想にこだわれぬ

もうひとりの横綱は文句なしに「日本維新の会」代表、松井一郎大阪市長だろう。

▲写真 日本維新の会松井一郎代表(2021年10月19日) 出典:Photo by Buddhika Weerasinghe/Getty Images

みたところも語り口も、いかにも大阪のおっさんだが、議席何と4倍増、全国政党に伸長させたのだから、なみの手腕ではない。

「大阪都」構想もいいが、全国政党になったからには、外交、安全保障問題なども今以上に発信が求められよう。中小政党が一時的に議席を伸ばして次の選挙では再び衰退というケースは過去少なくなかったから、心したい。

■ 林、野望むきだせば足下すくわれるか

大関ではまず、幹事長、甘利明辞任の〝玉突き〟で外相に就任した岸田派ナンバー2の林芳正をあげたい。

▲写真 林芳正防衛大臣(当時)2008年08月01日 出典:Photo by Koichi Kamoshida/Getty Images

参院議員を5期、防衛相などを歴任した政策通。今回の総選挙で山口3区に鞍替え、ベテランの河村建夫を引退に追い込んで初当選を奪い取った。2012年の総裁選にも出馬、「総理を狙うには衆院でなければ」と野心を隠さない。

しかし、父親の代からの安倍前首相との対立もあり、ギラギラしたところを向きだしにすると足元をすくわれるだろう。玉木雄一郎率いる国民民主党は、野党共闘への参加を見送り、今回3議席増やした。立憲民主党と共産党の選挙協力が不発に終わったのとは明暗を分けた。

選挙後、立民、共産、社民各党との「野党国会対策委員長会談」への参加を今後は見送ることを表明した。それが来年の参院選に向けての独自路線なら、維新の会との連携目的は何か。 

■ 相変わらず国民人気高い河野

いつの世論調査でも国民の人気が圧倒的な河野太郎。

▲写真 米国防長官のマークエスパーと河野太郎防衛大臣(当時)バージニア州アーリントンにて(2020年1月14日) 出典:Photo by Mark Wilson/Getty Images

総選挙に先立つ総裁選挙でも一番人気とみられながら、永田町での人望のなさからあえなく失速したものの、今回、神奈川15区では21万票を獲得し、応援演説も10日間で26選挙区にのぼるという人気ぶり。総裁選で完敗した直後は、はたで見るのも気の毒なほどだったが、選挙直後にはさっそく政治資金パーティーを開いて「再チャレンジ」を宣言。傲慢さが再び頭をもたげてこなけれいいがという危惧も少なくない。

れいわ新選組も3議席を獲得した。一昨年の参院選での2議席に続く善戦。代表の山本太郎は比例東京ブロックから国政に復帰する。 

立民と共産による選挙協力によって、自民党の石原伸晃氏を破った東京8区から公示直前に出馬の意向を示して反発を買い、すぐに撤回するなど軽率さは相変わらずだが、今回比例で220万票を獲得、侮れない存在に躍り出た。

■ 茂木、頭脳明晰もパワハラで悪評

茂木は甘利の辞任表明という予想外の事態によって念願のポストを射止めた。

▲写真 茂木敏充外務大臣(当時:右)2021年10月4日 出典:Photo by Yoshikazu Tsuno – Pool/Getty Images

政策通で知られ安倍内閣後期に外相就任、菅、岸田現内閣で留任した。昨年春、コロナ感染が中国で広がり始めた際、外相としていち早く、チャーター機派遣について中国側の了解、協力を取り付ける手腕を見せた。 

頭脳明晰、理解力の早さには定評があるが、役人いじめが目に余るという悪評もあり、これを克服するのも、総理・総裁を目指すうえでの課題だろう。

■ 取材の底力示した朝日新聞社

公明の斉藤鉄夫は、買収事件を引き起こした元法相、河井克行の選挙区、広島3区から初当選した。

当初は自民党の反発もあったが、岸田内閣で国土交通相に就任、地元で現職閣僚を落選させるわけにはいかないと意気込む岸田首相の応援遊説もあって、議席を確保した。

前頭筆頭は元知事、前長岡市長との〝首長みつどもえ〟の戦いを制した前知事の米山隆一をあげたい。女性不祥事で知事を辞職した後遺症など感じさせぬ完勝だった。

朝日新聞は、各紙の予想が外れた中で、「自民が単独過半数確保の勢い、立憲はほぼ横ばい 朝日情勢調査」(10月25日)とほぼ的中させた。他社は「自民単独過半数は微妙」(読売、29日)、「自民単独過半数の攻防」(日経、同)、「自民単独過半数へ攻防、立民140台」(産経、10月26日)など押しなべて正確さを欠く予測を打ち出していた。

時に物議をかもすことをしでかすが、今回はさすが底力を示したというべきか。

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