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「習主席の選挙?」 市民は関心薄、独立候補者への妨害も 中国で5年に一度の“直接選挙” その意義は


 中国・北京市で5日、各区議会にあたる人民代表大会の直接選挙が実施された。選挙は5年に一度で、当選者にはさらに広域の市や省の代表を選ぶ権利が与えられる。

 一方では、共産党の承認を受けずに独自に立候補しようとした市民らが、当局の圧力で選挙活動を断念していた。

【映像】投票の様子&選挙活動を“掃除”で妨害も

 共産党による“一党支配体制”の中国で行われる選挙とはどういうものなのか。また、市民の反応は。ANN中国総局の北里純一記者が伝える。

Q.今回の選挙はどういったもの?
 あまり馴染みがないと思うが、実は地方議会にあたる人民代表大会の代表の一部については市民による直接選挙が行われている。中国では、北京であれば区の代表までが直接選挙の対象となり、今回は市内16の区で5000人近くが改選される。


 人民代表大会の仕組み全体を説明すると、北京をはじめ今年全国で行われている直接選挙というのは、区・県(中国では市よりも小さい行政単位)などの代表を選出するもの。ここで選ばれた代表たちはもちろん地域のいろんな仕事をしていくが、それと同時により広域の市や省の代表を選ぶ権利も持っている。さらに、市・省の代表たちは全国人民代表大会(全人代)を選んでいく。実は、習近平国家主席も内モンゴル自治区から選出され、全人代に出ている。

 この人民代表大会制度について、習主席は先月演説を行い、「人民大衆の主体的地位を保証し、中華民族の偉大な復興の実現を保障する優れた制度だ」と意義を強調した。さらに、アメリカをはじめ、日本を含む民主主義国家を揶揄するかたちで、「投票の時にだけ目を覚まし、終われば冬眠期間に入るようなものは真の民主ではない」とも述べた。

Q.日本の選挙との違いは?
 いわゆる選挙活動、演説だったり街中に候補者のポスターが貼られたりといった光景はない。ただ1つあるのは、当局が用意した有権者と候補者の意見交換会のようなもの。これがわずかなやりとりの場になる。


 投票は少し複雑で、北京に住民票があるからその人に自動的に投票用紙が届くというわけではなく、投票したい人は事前に有権者登録を済ませなければならない。そうすると、投票の案内が来るという仕組みになっている。北京の前回の選挙は2016年で、この時の投票率は9割を超えると当局は発表しているが、全市民が分母に加えられているわけではなく、有権者登録を済ませた人を対象に出しているので高い投票率になっているのではないか、という指摘もある。

Q.5年に一度の重要な選挙ということで、市民の関心は高い?
 私たちも肩を入れて取材に臨んだが、意外と市民の関心は低かった。選挙の先週にオフィスの周りで「5日が投票日であることを知っているか」と聞いてみると、「知らない。投票したことはない」「通知がないから知らないよ」「政治のことはよくわからない」といった声ばかりで、20人ぐらいに聞いて、知っていたのは1、2割ぐらい。「習主席の選挙なのか?」と制度自体を理解していない人も多かった。


 なぜこんなに関心が低いのかと考えると、1つはメディアの取り扱いが非常に少ないこと。北京を代表する新聞『新京報』を9月からこの投票日まで直近2カ月分チェックしたが、選挙について取り扱ったのはわずか2日間だけで、投票日ですら報道がなかった。

Q.そもそも選挙には自由に立候補できる?
 選挙法では、18歳以上で政治的権利をはく奪されていなければ、民族や宗教、職業などによらず選挙権があり、10人の市民に推薦されるなど条件をクリアすれば立候補できると定めてある。一方でもう1つ、地区の選挙委員会が最終的な候補者数を当選枠の4/3倍から2倍の間に調整することが法律で決まっている。もし当局にとって都合の悪い人が立候補した場合、選挙委員会も当局の影響下にあるので、ここで排除できるのではないかという指摘もある。

 そういった制度上の話だけではなく、「政府を批判したり」「多様な価値観を訴える」ような当局の意に沿わない人々へのあからさまな妨害もある。先月、当局によって拘束された人権派弁護士の家族らが独自に立候補をしたいということで、街頭で選挙活動を行おうとしたところ、突然「掃除を行う」などとして腕章をつけた関係者に活動を妨害された。このほか、選挙活動を行おうとした人々は、活動の当日になると警察署に呼ばれたり、警告を受けたり、時には郊外に“旅行”に連れていかれたりしたということだ。


 私たちは妨害されたうちの1人、李文足さんという女性を取材した。李さんは2015年の人権派弁護士の一斉逮捕で夫が当局に拘束された方。その際に地区の代表に助けを求めようと思ったが、相手にされなかったという経験から、困った市民に寄り添う代表になりたいと思い立候補を試みた。

しかし、李さんにもかなり強い圧力がかかったようで、「私が選挙活動に参加すると発表すると(当局から)圧力がかかったのか、家主から『もう家を貸せないので早く引っ越してほしい』と急かされた。(他の仲間も)警察にコントロールされ、欠道を行えなくなっている」と話していた。李さんを含む14人の独立して立候補しようとしていた人たちは、身の危険を感じて立候補の取りやめを発表した。

Q.選挙は民意を反映することが前提ではないのか。中国の現制度はどこに意義が見出だせる?
 中国政府にとってのこの選挙に対する意義の見出し方が、日本などとは違うのだと思う。ある専門家は、市民・国民の声を吸い上げるという選挙が持つ本来の意義よりも、共産党にとっては「選挙法」という定められたルール・手続きに則って選ばれた集団が地域、そして国を率いているんだ、という実績を国内外にアピールすることに大きな意義があると話していた。

「習主席の選挙?」 市民は関心薄、独立候補者への妨害も 中国で5年に一度の“直接選挙” その意義は

 習主席は冒頭でも紹介した演説の中で、「国の民主主義の鍵は、国民が広く政治に参加できる権利を持っているかどうかだ」と強調していた。本来は5年に一度のこの人民代表選挙がそれ実現するタイミングだと思うが、市民の関心の低さや都合の悪い候補者を排除する動きを見る限り、現状はほど遠いと言わざるを得ない。

 一方で、中国が国として物事を進めるスピードや強さというのを、コロナ禍を通して見せつけられた。単純に「この選挙制度おかしいんじゃないか」との見方をしたくなるかと思うが、それとともになぜ中国がこれだけスピード感を持っていろいろできるのかという裏付けが、こういったところにも隠れているということを理解しないといけないと思う。

(ABEMA/『アベマ倍速ニュース』より)

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