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メルマガブームに一石?雑誌Atlanticの試み

米国のメディアシーンの動きにはいつも驚かされます。

2年ほど前からジャーナリストなどが個人として発信するニュースレター(メルマガ)を支援するSubstackの存在が際立ってきていましたが、今年になってFacebookやTwitterなどもメルマガ戦争に参戦、そして今度は164年の歴史を持つ名門雑誌The Atlanticまでが参画してきて、またまた新たな動きになりそうなのです。

Atlanticは、今春、New York Timesの”編集委員”のポストを捨ててSubstackでGalaxy Brainと題するメルマガを配信してきたCharlie Warzel 氏ら著名なジャーナリストや作家など、すでにメルマガ読者を抱える9人を採用、全員が早速、配信を始めています。(今月中は無料なので、興味のある方はここで購読申し込みをしてください)



12月からは、雑誌Atlanticの購読者かそのデジタル版の購読者だけしか読めなくなります。(9人の筆者の有料メルマガの購読者はその契約期間中はAtlanticの購読申し込みをしなくて配信されます)そして、年内にはAtlanticのスタッフによる複数のメルマガも出るとのことです。

さて、どうして有名雑誌がメルマガに進出したのか?上に書いたように、著名人のメルマガを読み続けるには、Atlanticかそのデジタル版の購読契約をしなければなりません。つまりは客寄せです。

その必要に迫られたのも、プリントメディア全体の衰退に加え、トランプ氏が大統領を去ったことやコロナウィルスによるパンデミックがやや沈静化したことで、Atlanticといえどもデジタル版の購読者が伸びず、赤字を出しているためです。

7月のNBC Newsによれば、経営幹部による社内向け説明で「今年は赤字になる」と伝えられたそうで、その回復の切り札としてブームのメルマガを採用したのです。

トンプソンCEOはAXIOSの取材に「2022年にはニュースレターが収益に貢献し、黒字化に繋がることを期待している」と語っています。

トンプソンCEOは、Atlanticでメルマガを書くライターは「読者との直接的な関係を築き、会話を楽しむ」と同時に「Atlantic社のブランドの安心感と編集をサポートも得られる」の両面のメリットがあるとも述べて成功に自信を示したよう。

実はAtlanticと同じように、New York Timesも本体の購読者のみに独自のメルマガを9月から提供しています。無料のメルマガは20年ほど前からあり、今は50種類ほどありますが、今のメルマガブームに乗り遅れまいと、既存の無料人気メルマガに著名人のメルマガ計15種類をデジタル版購読者限定にしました。狙いはもちろん新規有料読者の上積みです。

大手ばかりではありません。ニューヨーク市の郊外、ウェストチェスター辺りの無料週刊紙「Examiner Media」は、ひと月ほど前にSubstackで、こっちは「有料」のデジタルマガジン<Examiner +>を発行しました。

昨年はパンデミックで人の集まるイベントがなくなり、広告も激減、フルタイムの編集部員6人を2人にして凌いできましたが、読者に寄付を求めたところ。小口ばかりで3万ドル集まったことから、「読者から収益を上げるチャンスがある」と見て、Substackに進出したそう。

Substackから前払い金を計7万5千ドル受け取り、これで編集部員を5人まで増やしました。前払い金を受け取ったので、初年度は月極6ドル、年50ドルの講読料の15%しか入りませんが、来年からは通常の90%を受け取れるそうですから、一息つけるわけです。創業者は「このモデルはどこのコミュニティ紙でも使える」と語ったそう。

Atlanticの計画、発表の1月前に概要をスクープしたPeter Kafka氏はRecodeで、こう書きました

<メディアの今のトレンドは、ジャーナリストが大手の定評ある出版社で働く代わりに独自のニュースレターを作成することだ。反対の方向には、大規模で確立された出版社は、強力なビジネスモデルと支援者の元、さらに強力になる。そしてAtlanticの試みはその両方を行う物語だ>

記事見出しの下には「注意せよ!Substack、TwitterとFacebookも。そしてNew York Times・・・・」とあります。

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