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  • 2021年11月05日 11:26 (配信日時 11月05日 09:45)

生活保護費に迫る コロナ禍「特例貸付」1.2兆円の衝撃 - 大山典宏 (高千穂大学人間科学部准教授)

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「このままでは 国家財政は破綻する」と題した矢野康治・財務省事務次官の論文が月刊誌『文藝春秋』に掲載され、各方面に波紋を広げている。自民党総裁選や衆院選をめぐる政策提案を「ばらまき合戦のようだ」と批判、数十兆円規模の経済対策や消費税率引き下げが主張されることについて「国庫には、無尽蔵にお金があるかのような話ばかりが聞こえてくる」と指摘した。

筆者は社会保障の専門家であり、特に市民生活を守るための財政出動は不可欠とする立場である。しかし、2020年の新型コロナウイルス感染拡大以降の政策動向をみていると、矢野氏が指摘するように「ばらまき合戦」と評価せざるを得ない現状もある。

(Oleksandr Shchus/gettyimages)

その代表格が、コロナ禍における国による「生活困窮者向け特例貸付」である。21年10月時点で貸付額は1.2兆円を超え、生活保護費の年間予算に匹敵する規模となっており、暴力団組員による詐欺事件も続発している。

本連載の初回では特例貸付について、なぜ「ばらまき合戦」と評価するのか、必要な人に支援の手は届いているのかという二つの側面から考えてみたい。

「実質給付!?」対面審査なしで進められる貸付

特例貸付の総額1.2兆円は、リーマン・ショックの影響を受けた09年の50倍以上である。とはいっても、その規模は多くの人にとってイメージのつきにくい数字であろう。事態の深刻さを理解していただくために、生活困窮者への支援の代表である生活保護制度と比較してみよう。

18年度の国の生活保護費負担金は、住宅や教育、医療・介護といった費用も含まれており、その総額は実績ベースで約3.6兆円。このうち、生活費に相当する生活扶助は1.1兆円である。つまり、コロナ禍の約1年半の間に、国の生活保護費の年間予算に匹敵する規模の財政支出が行われたことになる。


特例貸付の制度は二つある。一つは、緊急かつ一時的な生計維持のための①「緊急小口資金」で貸付額は20万円以内である。もう一つは、生活立て直しのための一定期間の生活費を貸し付ける②「総合支援資金」であり、2人以上の世帯だと毎月20万円以内で、最大9カ月。①・②合わせて200万円まで無利子で借りることができる。

特例貸付は休業や失業で収入が減少した者に貸付するものだが、収入が減少したというのは本人の記入した申立書のみで申請可能であり、給与明細や事業収入の入出金が確認できる預金通帳などの提出が必要であるわけではない。しかも資産要件もない。

窓口は民間団体である市町村社会福祉協議会(社協)が担っているが、コロナ禍により対面での審査は実施せず、郵送でのやりとりで貸付決定をしている例も少なくない。

しかも、YouTubeでは、公認会計士や税理士による解説動画が無数にアップロードされ、なかには「実質給付!?」などの過激なサムネイルを用いたものもある。たしかに特例貸付には返済免除があるが、対象となるのは全体の一部に過ぎないにもかかわらず、である。その根拠となるのが、特例貸付に続いて発表された「自立支援給付金」の利用者数である。

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