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「野党優位の状況だったのに…」維新は大躍進を遂げて、立民が惨敗した決定的な違い

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今回の衆院選で、立憲民主党は惨敗し、枝野幸男代表は引責辞任する意向を表明した。ジャーナリストの鮫島浩さんは「今回の野党共闘は不十分だった。立憲が『共産アレルギーで中間層が逃げた』と総括して共産を切り捨てたところで、多党時代は生き残れないだろう」という――。

衆院選、ふたを開ければ“野党共倒”

立憲民主党が衆院選で惨敗し、枝野幸男代表が引責辞任する意向を表明した。年内には新しい代表を選出して体制を一新し、来年夏の参院選で党勢の立て直しをめざす。


記者会見を終えた立憲民主党の枝野幸男代表=2021年11月1日未明、東京都港区(写真=時事通信フォト )

立憲の敗因は7割以上の小選挙区で野党候補を一本化した「野党共闘」のあり方に問題があったという見方が大勢だ。だが、野党共闘の何が悪かったのかをめぐっては、まったく逆方向のふたつの分析がなされている。

ひとつめの分析は、共産党と共闘したこと自体が「左に寄りすぎた」として有権者の離反を招いたというものだ。実際、自公与党は全国各地で「立憲共産党」と揶揄(やゆ)し、共産党を含む「野党連合政権」への警戒感をあおった。

共産党を敵視している連合もこの野党共闘を痛烈に批判。公明候補と共産候補が激突した東京12区で公明候補の支援に回るなど、与党寄りの姿勢をにじませた。連合の影響力を最も受ける国民民主党は自公政権と是々非々で向き合う姿勢を強調し、議席を伸ばした。

これに対し、枝野氏は共産党と連立政権を否定し、あくまでも「限定的な閣外協力」にとどまることを強調。共産党の志位和夫委員長が「野党共闘」を強くアピールする一方で、枝野氏自身は「野党共闘」という言葉さえ使わず、立憲による「単独政権」を目指す考えを強調し、「共産党隠し」に躍起になった。

ひとつめの分析は、それでも共産党色を消せず、とくに共産党へのアレルギーが強い地方で立憲離れが加速したという見立てである。小沢一郎氏(岩手3区)や中村喜四郎氏(茨城7区)が選挙区で敗れたのは、そのような見方を裏付けるものだろう。

なぜ立憲は議席を減らしたのか

もうひとつの分析は、まったく逆である。むしろ枝野氏の「野党共闘」が中途半端で、十分に機能しなかったというものだ。

枝野氏は野党第一党のリーダーとして、あるいは野党共闘の首相候補として、立憲、共産、社民、れいわの野党4党の共通公約や選挙協力といった「野党共闘」を主導する姿勢をまったくみせなかった。野党共闘はあくまでも山口二郎法政大教授らの市民連合の仲介に基づくものであり、立憲は一政党として加わっているにすぎないという半身の姿勢に終始したのである。


立憲民主党のウェブページより

枝野氏の衆院選の目標は「立憲の議席増」であり「政権交代の実現」ではなかった。勝敗ラインとして「政権交代」を掲げなかったことがそれを物語っている。

野党第一党の党首は「政権選択の選挙」で過半数を獲得できなければ「敗北」と判定するのが二大政党政治の掟なのに、立憲が議席を伸ばすことをもって「勝利」と位置づけ、代表の座にとどまろうという腹づもりがにじんでいた。

その結果、野党候補の一本化は共産やれいわ新選組が一方的に譲歩する形で実現するケースが相次いだ。れいわの山本太郎代表が立憲側と事前調整をしたうえで出馬表明したものの、立憲の党内調整不足で地元が混乱して山本氏が自ら身を引いた東京8区は、その象徴である。

「冷たい野党共闘」を貫いた枝野氏

枝野氏は共産やれいわの候補者の応援に駆けつけず、「冷たい野党共闘」を貫いた。市民団体が東京・新宿で主催した選挙イベントで共産党の志位氏と同席しながら最後の写真撮影を拒否して立ち去ったのは、「野党共闘」の機運を盛り下げる決定的な場面だった。

一方、選挙最前線では、立憲と共産、れいわの「心の通った選挙協力」が数多く実現した。共産党の小池晃書記局長は香川1区で勝利した小川淳也氏と共に、れいわの山本代表は東京8区で因縁の深い吉田はるみ氏とともに街頭に立ち、枝野氏と対照的に「大人の対応」をみせた。

結局、野党共闘は立憲を一方的に利しただけで、共産やれいわには見返りがほとんどなかったといえるだろう。共産党の議席減は数多くの候補者をおろしたことと無縁ではない。れいわも山本氏が小選挙区に出馬していればさらに議席を伸ばした可能性がある。

今回の「野党共闘」は互いに誠意をみせあい結束を固める「本物の野党共闘」とはほど遠かった。自公の連立政権や選挙協力と比べると、きわめて未熟だったといっていい。

枝野氏が「冷たい野党共闘」に終始した最大の理由は、連合の反発であろう。立憲候補には連合の力を借りなければポスター貼りなどの選挙活動を十分にできない者もいる。連合と決別して共産とタッグを組むことは、選挙現場の実態からかけ離れたものだった。

野党共闘が共産アレルギーを刺激して惨敗したのか、それとも野党共闘が不十分だったのか——。枝野氏の後任を選ぶ代表選は「野党共闘」のあり方が最大の争点となるが、まずは今回の敗因分析をしっかりすることが必要だ。

「野党共闘が不十分だった」

私は「野党共闘が不十分だった」という立場である。

野党候補を一本化した効果は確かにあった。自民党の甘利明幹事長(神奈川13区)や石原伸晃元幹事長(東京8区)ら大物を選挙区で倒したのは、明らかに野党一本化効果だ。

それ以外にも新聞各社の選挙情勢調査が大きく食い違ったことが物語るように、与野党激戦区が急増したのは間違いない。野党統一候補が1万票以内で惜敗した選挙区は約30あったことも一本化効果を裏付けている。

一方、「野党候補を一本化すれば勝てる」というのは幻想であることもはっきりした。どんなに一本化しても投票率が上がらなければ、組織票で上回る自公与党に競り負けるのだ。

今回の投票率は戦後3番目に低い55.93%。前回53.68%(2017年)、前々回52.66%(2014年)よりは若干上がったが、民主党が政権を奪取した2009年衆院選の69.28%にははるかに及ばない。少なくとも投票率を60%台に引き上げなければ、自公と互角以上に戦うのは難しいであろう。


※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kanzilyou

しかし、枝野氏の選挙戦略はオーソドックスで魅力に欠けた。

「次の内閣」をつくって共産党の田村智子参院議員や元文部科学事務次官の前川喜平氏ら無党派層に人気のある政治家・民間人を起用したり、コロナ対策の「野党版専門家会議」を設置して公衆衛生学の専門家だけではなく現場の医師や貧困・非正規労働問題などに取り組む人々をメンバーに加えたり、ドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』で話題を集めた小川淳也氏を要職に抜擢したり、カリスマ性のあるれいわの山本太郎氏を野党共闘の目玉候補として自民大物の選挙区にぶつけたり……野党に注目を引き寄せる手はいくらでもあったはずだ。

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