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赤ちゃん救う「母乳バンク」が資金難 生後5日で母親が逝去…提供受けた父親の決意

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「本当に元気いっぱいで大変ですし、後追いの真っ最中なので、僕の姿が見えなくなったら大きい声で泣いて部屋に響き渡るような声で泣いてきます。なかなか自分の済ませたい用事も済ませられない、大変な毎日を送っています」

【映像】元気に歩き回るめいちゃん(6分ごろ~)

 1歳5カ月の女の子「めいちゃん」との生活について笑顔で話す、めいちゃんパパ。今は元気いっぱいでパパの腕の中にいるめいちゃんだが、末期がんのママの治療のため、妊娠24週という早産で生まれた。

 生まれてすぐは母乳を口に含ませることができたが、生後5日、ママの容体が悪化。翌日亡くなった。

 母乳をもらえなくなっためいちゃんに与えられたのが「ドナーミルク」だ。ドナーミルクについて、日本母乳バンク協会代表理事で昭和大学医学部の水野克己教授はこう話す。

「ドナーミルクというのは、母乳がたくさん出るお母さまから母乳を提供していただきまして、それを62.5度30分で低温殺菌処理をした母乳のことを言います」

 母乳バンクでは、母乳を必要とする早産・極低(ごくてい)出生体重児(※体重が1500g未満の赤ちゃんのこと)が自分の母親から母乳を得られない場合、医療機関からの要請に応じ、寄付された母乳を殺菌処理し、ドナーミルクとして提供する。


 母親の母乳を与えることができなくなった赤ちゃんのために、安全に処理された他の人の母乳を保管し、提供する母乳バンク。日本で母乳バンクを運営している水野教授は、ドナーミルクの重要性についてこう訴える。

「まず、小さく生まれた赤ちゃんにとって、一番いい栄養はそのお母さんの母乳です。早産で生んだお母さんの母乳は、正期産40週予定日くらいで出産されたお母さんの母乳とは違い、免疫物質やたんぱく質、小さな赤ちゃんが必要とするものがたくさん含まれています。24週、600gくらいで生まれた小さな赤ちゃんに粉ミルクをあげることは、壊死性腸炎という腸が壊死する病気のリスクが高まります。助かってもいろいろな後遺症が残ることがあり、そういう状況の中で『ドナーミルクか粉ミルクか選んでください』というと、当然赤ちゃんにリスクが少ないほうがいいわけです。ドナーミルクという選択肢を持っておくべきだと、私は考えています」


 2005年、オーストラリアに留学した際、海外の母乳バンクの立ち上げを目の当たりにした水野教授。その後、日本における必要性を感じ、一から準備を始め、2017年に日本母乳バンク協会を設立。2020年には、民間企業の支援のもと、現在日本唯一のバンクとなる「日本橋母乳バンク」を開設した。水野教授の地道な努力が実を結び、ドナーミルクの提供を受ける赤ちゃんは急増している。

「母親が『赤ちゃんをこんなに早く生んでしまって自分は申し訳ないことをした』『赤ちゃんのために早く母乳を出さなきゃ』と思うと、それだけでストレスになってしまって、さらに母乳が出なくなってしまう。お母さんの母乳が出るまでの間、例えば、母乳が出るまでのつなぎとして、12時間〜24時間ぐらいの間、ドナーミルクでつなぐ。お母さんの母乳が出たらスイッチすれば(切り替えれば)いい。だから、そこまでの間、ドナーミルクを使って、早く小さく生まれた赤ちゃんでも、より栄養価として高いものをあげていくために、ドナーミルクを使おうと。これは世界的に広まってきています」

 すでに世界50カ国以上、600カ所を超えて開設されている母乳バンク。2019年7月には、日本小児医療保健協議会栄養委員会から「自母乳が不足する場合や得られない場合、次の選択肢は認可された母乳バンクで低温殺菌されたドナーミルクである」との提言が出され、日本でも普及が期待されている。水野教授によると、最近では、新型コロナウイルスに感染した母親がエクモ治療を受けているケースで、生まれた赤ちゃんにドナーミルクを提供するといった事例もあるという。


 多くの赤ちゃんの成長をサポートしてきた水野教授の取り組みだが、一方で、なかなか寄附が集まらず、資金難に頭を悩ませている。2021年は年間収入見込みが1700万円だったのに対し、上半期だけで支出が2000万円あった。このままでは1000万円以上の赤字だ。サービスの継続が危ぶまれる事態に水野教授は「年明けくらいには通帳残高はゼロになります」と訴える。

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