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社会とつながり役割を持ち続ける「貢献寿命」の延伸を -「賢人論。」第150回(後編)秋山弘子氏

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人生100年時代になり、定年後も健康で長生きする人が増えている。一方、活躍の場所が与えられずにただ時間を潰して過ごす高齢者も多い。この状況は「生きがいを感じながら長寿社会を生きていくために大きなハードルになっている」と秋山氏は言う。

長年ジェロントロジー(老年学)を研究してきた東京大学名誉教授の秋山弘子氏が持つ働き方への問題意識とは。「定年はセカンドライフのスタートライン」と考え、幸福に生きるヒントをお聞きした。

取材・文/みんなの介護

何もすることがなく、虚ろに過ごす高齢者をつくらない

みんなの介護 東京大学の高齢社会総合研究機構ではどんな取り組みをされているのでしょうか。

秋山 私たちは大学を挙げて町のリデザインに取り組んでいます。典型的なベッドタウンである千葉県の柏市で行っています。

今ある「町」は人生50年時代の人口がピラミッド型をしていたときにできました。長寿社会のニーズに対応した町につくり変えていく必要があります。そこで、千葉県の柏市でいろいろな社会実験プロジェクトを同時並行で立ち上げて動かしています。

私は「セカンドライフの就労事業」を担当してきました。千葉県の柏市は典型的なベッドタウンで、リタイアされた方が帰って来て住まれています。大多数の人たちは元気ですが、「行くところがない、することがない、話す人がない」と言う人が大勢います。そういった方々の多くは、他人とほとんど話すこともなく家でテレビを見て過ごされています。

その方たちに役割を持って活躍していただきい。そのために、地域に仕事場をなるべく多くつくると同時に、セカンドライフの新しい働き方も模索してきました。

数十年にわたって「満員電車に乗って東京に行き、夜遅く帰ってくる」のが、その方たちの働き方でしたが、定年後は近場で働きたいという希望は多く、徒歩や自転車で行けるところで働ける場所をつくるようにしました。家庭の事情や体力に合わせて働ける時間だけ働くシステムも取り入れています。

一人に負担の重い仕事を与えないようにもしています。5人でチームをつくって2人分の仕事をワークシェアリングしています。また、異なる能力をもった3人でひとつの仕事を引き受ける「モザイク就労」にもチャレンジしています。異なるスキルや経験を持った人たちが力を合わせて、超能力を持った一人の労働者を合成します。

このようにして、セカンドライフの新しい働き方を開発しています。その実験結果を一つの参考として、厚生労働省に政策提案しました。一つの町で社会実験を行い、エビデンスをつくったうえで国に提案して政策につなげていくのです。この取り組みは「生涯現役進地域連携事業」という国の新たな事業に繋がり、全国で展開しつつあります。

その他の主要プロジェクトには、飯島勝矢教授が中心になって牽引されている「フレイル予防」、辻哲夫先生が精力的に取り組まれている「エイジング・イン・プレイス」プロジェクトがあります。

後者は「弱っても安心して快適に暮らせるまち」という地域包括ケアのシステムです。医療や介護サービスだけではなく、生活支援まで含めて取り組んでいるのが特徴です。

みんなの介護 「生涯現役進地域連携事業」が推進されると地域がどんなふうに変わるのか、楽しみですね。

秋山 そうですね。高齢になっても無理のない範囲で働いて皆で支えていく社会を実現したいです。年をとっても社会や地元とつながり、役割を持って生きられる仕組みづくりが大切です。それは個人の体と心の健康(ウェルビーイング)にとって、とても大きなことです。

いわゆる「お荷物」と思われているような高齢者が、社会の支え手に変わっていく。それは、社会にとっても大きな力になります。究極的には医療や介護費の抑制にもつながるでしょう。

DXは高齢者や障がい者の働き方も変える

みんなの介護 秋山さんは新聞のインタビューなどでも「長寿社会はイノベーションの宝庫」と語られていますね。

秋山 山積している超高齢社会の課題は、まさにイノベーションの宝庫だと言えます。医療や教育だけではなく、ほぼすべての産業に言えることですね。

今DX(デジタルトランスフォーメーション)ということが言われています。人生100年時代の高齢者の生き方に、極めて大きなインパクトを持つのではないでしょうか。

AIとロボットの活用によっても働き方が随分変わることが予想されます。高齢者だけではなく若い人も同じです。AIやICTの活用によって、いつでもどこでも働けるようになるでしょう。自由なライフデザインが可能になります。

新たな移動手段の開発も重要です。高齢者・障がい者も含めて誰もが行きたいところに行けるようにすること。それは超高齢社会という側面からもニーズがあります。マーケットは非常に大きいでしょう。

みんなの介護 「誰でも行きたいところに行ける移動手段」というのは、ワクワクしますね。例えばどんなモデルがありますか?

秋山 一つは、自動運転がレベル5になって安全に実用化されることです。今、世界中で実験が進められていますね。また「グリーンスローモビリティ」の開発も進んでいます。ゴルフカートのような簡単な乗り物で、町の中を行き来できる仕組みです。

グリーンスローモビリティは、輪島のほかいろいろな地域で実験が進められています。人口減ということもあり、公共の交通機関を廃止する自治体が増加しています。医療機関や買い物に行けない「難民」と言われている人たちが出てきています。

車の自動運転が5段階に行くまではまだ時間がかかりそうです。まずは簡単なモビリティで高齢者が移動できる仕組みの実働が待たれています。そのためには技術的なイノベーションだけでなく、社会の仕組みのイノベーションが必要です。

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