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めでたさも最小限の自民減―総選挙の結果をどう見るか

 日本の命運を決するとして注目されていた総選挙の結果が出ました。政権交代を実現する道のりの厳しさを実感させるような結果です。

 「めでたさも最小限の自民減」というところでしょうか。今回の選挙に対する私の感想です。
 この総選挙での各政党の議席は以下の通りになりました。

自民は261で、改選前議席276から15議席減
公明は32で、29から3増
立憲民主は96で、110から14減
共産は10で、12から2減
維新は41で、11から30増
国民民主は11で、8から3増
れいわは3で、1から2増 
社民は1で増減なし

 自民党は改選前議席より15議席を減らしていますから、敗北したことは明らかです。しかし、当初予想され、また期待されていたほどの減少ではなく、残念ながら最小限の敗北で踏みとどまりました。

 単独過半数である233議席を超えただけでなく、「絶対安定多数」である261議席に達しています。常任委員会に委員長を出したうえで多数を占めることができるということですから、国会運営の上でもイニシアチブを維持することになりました。

 とはいえ、小選挙区で幹部の落選が相次ぎ、神奈川13区では甘利明幹事長が敗北して辞意を表明し、東京8区で石原伸晃元幹事長も敗北しました。自民党にとっての打撃は数字以上のものがあり、岸田首相の政権運営は予断を許しません。

 自民党が議席を減らしたのは、前回のような野党の分裂によるアシストがなく、安倍・菅政治やコロナ失政への批判によるものだと思われます。これまでの自公政権に対して、有権者は明らかに「ノー」を突きつけました。

 しかし、それがこの程度にとどまり、自民党の議席減を望んでいた私などにとって「めでたさ」が最小限になってしまったのは、巧緻に長けた自民党の「作戦勝ち」だったように見えます。

 菅前首相のままで総選挙を闘っていれば、このような結果にはならず、自民党はもっと多くの議席を減らしていたはずです。その菅首相は身を引いて岸田新総裁を選び、「表紙」を張り替えたことが奏功したのではないでしょうか。

 とりわけ、自民党総裁選でのメデイアジャックと言われたバカ騒ぎによって自民党への好印象と支持を高め、それが消え去らないうちに解散・総選挙に打って出ました。この自民党への支持や新内閣への「ご祝儀相場」が消え去らないうちに、新内閣のボロが出ないうちに、コロナの感染拡大が収まっているうちに、総選挙での決着を急ぐという奇襲攻撃が功を奏したことになります。

 これに対して、野党の側は「選挙共闘」という迎撃態勢を整えて迎え撃ちました。私は選挙の前に、次のように書いています。

 「とはいえ、情勢は楽観できません。総裁選でのバカ騒ぎと新首相誕生での『ヨイショ』報道で新内閣の支持率は上昇するにちがいありません。菅内閣への批判という『追い風』があった都議選や横浜市長選の時とは状況が一変しています。

 コロナ失政と菅首相による『敵失』をあてにすることはできなくなったのです。野党は『逆風』の中での選挙戦を覚悟する必要があります。どのような状況であっても揺るぎのない共闘態勢を組むことでしか、この『逆風』を跳ね返すことはできません」(日本科学者会議の『東京支部つうしん』No.648 、2021年10月10日付)

 野党の側では、この「揺るぎのない共闘体制」を組むうえで、充分な努力がなされたのかが問われなければなりません。この点では多くの課題が残され、それが立憲民主と共産の議席減をもたらしたのではないでしょうか。

 市民と野党の共闘が大きな成果を生んだことは明らかです。それが機能しなければ、小選挙区で甘利氏や石原氏など自民党幹部を追い落とすことは不可能だったでしょう。

 その成果が「逆風」を打ち破って「追い風」を生み出すほどのブームを生まなかったのは、とりわけ立憲民主とその背後にいる連合の対応にあります。連合が共闘の足を引っ張り、それに遠慮した立憲民主が共闘に対して及び腰だという姿が見えたため、政権交代の「受け皿」として有権者に十分に認知されなかったのではないでしょうか。

 これも選挙前の論攷になりますが、私は次のように書いています。

 「これらの国政選挙や首長選挙を振り返って明らかになるのは、共闘に向けての『共産党の献身』である。候補者一本化に際しての不公平な扱いや連合などからの異論に耐えて共闘を成立させてきた姿が浮かび上がってくる。しかし、共産が一方的に譲り、立憲だけが利益を得るのが当然だという共闘は公平で公正なものとは言えない。

 選挙では野党側が勝つのに立憲自体の支持率が高まらない要因の一つがここにある。連合の顔色をうかがって右顧左眄し、共産党の票はいただくが政権には関与させないという対応をいつまで続けるつもりなのか。このような姿勢こそ自分勝手で不誠実なものと受け取られ、自らの信頼を傷つけ評判を落としていることに気づかないのだろうか」(『法と民主主義』第561号、2021年8・9月号)

 この後、立憲の枝野氏と共産の志位氏との間で党首会談が開かれ、限定的な閣外協力での合意がなされましたが、遅すぎます。共産党はさらに候補者を取り下げたために選挙運動で多くの制約を受けることになり、今回の議席減に結びつきました。

 しかし、枝野氏の共闘への対応は依然として腰の引けたものであり、23日夜の新宿での野党共闘を呼びかける街頭演説の後、志位氏と2人で並ぶことを避けて走り去るという一幕がありました。これではブームが起きるわけがありません。

 連合の「選挙では協力して欲しい、政権には協力しないで欲しい」という訳の分からない言い草が有権者に理解されるわけもありません。このような中途半端なものではなく、「どのような状況であっても揺るぎのない共闘態勢を組む」本気の共闘こそが求められていたのではないでしょうか。

 今回の結果、決戦は来年7月の参院選とその後の総選挙へと先送りされました。これまで何度も書いてきたように、「今度の総選挙でたとえ野党が多数にならなくても、政権交代の可能性は残ります。来年の参議院選挙と、その後の解散・総選挙の可能性というプロセスがあり得るからです。今年から来年にかけての1年間、日本の政治はまさに激突と激動の時代を迎えるにちがいありません」(五十嵐仁・小林節・高田健・竹信美恵子・前川喜平・孫崎享・西郷南海子『市民と野党の共闘で政権交代を』あけび書房、2021年)

 その決戦に向けて、今回の経験を教訓に市民と野党の共闘を本気の共闘へと質的に高めていけるかどうかが問われています。とりわけ、立憲にとっては連合の横槍を跳ね除けて利敵行為を牽制し、本腰を入れた共闘に取り組めるかどうかが試されることになるでしょう。

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