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衆院選結果についての一考察

政権選択選挙と言われた衆院選が終わった。
しかし、フタを開ければ、自民は岸田文雄政権に対する評価以上に議席を増やし、立憲民主は深く沈み込んだ。
国政を均衡する勢力ではなく、1対2分の1の対立軸だ。しかも、その明二大勢力の背後には、第三の勢力として維新が異様な程に勢力を伸長し、国政の場でもじわじわと影響力を強めている。

自民は、神奈川13区で党幹事長の甘利明氏、東京8区で派閥の領袖の石原伸晃氏、香川1区で前デジラル相の平井卓也氏を落とすなど、話題性の高いところで変動はあったものの、獲得議席は事前予想を大きく上回った。

立民は野党統一候補を生むなどし、政権選択ムードを呼ぼうとしたが、結果にはつながらなかった。
つまり、結果的に話題性の高まった選挙区では強みを発揮したが、話題性のない地方の普通の選挙区には波及効果が及ばず票の上乗せには至らず、敗北を余儀なくされたということだろうか。

そうであるとしたら、立民の地方を基盤としたおこないの方に問題があるのではないか。

わたしの知る限りの範囲でしかものは言えないが、立民の選挙は「連合」系労組と、ふだんから推薦状を出している系列の県議や市議等に依拠して動くので部外・組織外の者は立ち入りにくい。

一種、閉鎖的な世界であると言える。それでは、労働界を中心とする組織外への支持の広がりにはつながりにくい。しかも、労働界自体、組織化された組合員数が減るなど、かつてのような強みは発揮できなくなりつつあるようだ。そのような条件の中、複数候補が当選する地方議員選挙ならともかく、自民候補と一騎討ちとなる小選挙区で勝ち上がるのは、候補者本人に特に際立つ何かが備わらない限り、難しい。

また、その地方議員たちの首長に対する立ち位置や議会内での発言や賛否の行動に自民党との差は見出しにくい。首長選挙においては自民党と手を携えて同じ候補を応援するパターンが多いのではないか。

このような姿を見ていると、国会における立憲のイメージと地方における実態とのギャップが大きく、とても信頼を寄せることのできる政党にはならない。

立民の枝野幸男代表は選挙結果について報道各社の取材を受けた中で「(政権交代に向けては)足腰を強くしないとたどりつけないと痛感した」と答えたそうだが、ここまでわたしが述べたような意味も含めてそういうことなのだろうと思った。

一方、岸田自民党がなぜ勝てたのかという点についての考えもめぐらせたい。

このことについては、
① 安倍・菅内閣と言われる9年間の政治に対する有権者の評価の仕方と今回の選挙結果の関係性
② 岸田文雄総理であることと選挙結果の関係性
③ コロナ禍対策と選挙結果の関係性
から見ることができるのではないかと思う。

選挙結果を見る限り、
①安倍・菅内閣の評価は自民党の総裁選挙と共に終わった話になってしまったということなのかもしれない。

②岸田総理は政権スタート時点にしては異常に支持率の低い中でスタートした政権であるせいか、今回の選挙の勝敗ラインを「過半数」と低めに設定されていたが、結果としては4年前の安倍総理のときに近い圧勝だった。

③2年近くに及ぶコロナ禍の中での選挙だったわけだが、コロナ対策に関する批判も菅義偉前総理の退陣と共に政権批判は収束し、選挙上の争点にはならなかったということか。もしくは与野党を問わず、政権公約の中でのコロナ対策には違いが見い出せなかったということか。

極めて不人気な中で退陣させた菅前総理のもとでは選挙が戦えないということで総裁選を行うことで批判をかわしたが、後継の岸田総理になっても人気は跳ね上がらなかったにもかかわらず、衆院選には影響がなかったということでもある。有権者の岸田氏への期待は大きくはなさそうなのに、このような結果となるということは、何かをして起きる政権批判は交わしようがないが、党首を念頭に置いた投票行動ではないということか。

自民党から民主党(当時)、民主党から自民党に政権交代が起きたときには政権批判が起きた後に何のクッションもない中での選挙だったが、今回は総裁選というワンクッションがあったこと、岸田政権が実質いまのところ仕事を始めていない中であるので失政には至っていないこと、政権の受け皿となる野党に対する信頼度の低さということが背景にあるということになる。


最後に、そんな中にあって維新が思いのほか、伸長したことについて、どのような影響力を持ってくるか考えていく必要があるだろうことを漠然とした懸念を持って示しておきたい。

わたしは、今回の選挙結果を受けて、このことが不安になった。
維新は近畿圏の地方議会や首長を席巻している勢力だ。大阪でスジを通し、良識ある議員活動をしてきた辻本清美さんをすら落とす勢いで、これまで国会では少数派だったが、一気に議席を3倍増し、第三の勢力となったことで影響力が格段に大きくなる。

4年前の衆院選では、小池百合子・都知事を党首とする「希望の党」が台風の目となりかけたが、「排除します」発言で失速。代わりに、枝野氏が急進力を持ち、立憲へと至った。

時々の選挙において、政権批判の受け皿となる勢力に一定の支持が集まる。今回は、政権への批判と、統一候補をつくる野党への批判の受け皿として維新の伸びにつながったのではないか。

気弱な岸田政治をポピュリズムが背中を押すような政治が醸成されないことを願う。

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