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【総選挙2021】ネガキャン連呼も奏功せず…復興大臣ポストどころか党公認も失った福島1区の自民・亀岡 笑顔なき〝2連続比例復活〟

第49回衆院選挙(総選挙)は10月31日、投開票された。当初から激戦区と言われた福島1区(福島市、伊達市、南相馬市など)は、野党統一候補の金子恵美氏(立憲民主党)が小選挙区で当選。自公候補の亀岡偉民(よしたみ)氏は前回総選挙に続いて2回続けて小選挙区で敗れ、比例で復活当選した。「2回続けて比例復活では大臣ポストどころか党の公認も危うい」と崖っぷちに立たされた亀岡陣営は金子陣営へのネガティヴキャンペーンを展開。政策論争など行われず、有権者不在の「野合」「共産主義」連呼。その結果、復興大臣のイスも党公認も失うことになったのだった。


【「二番では駄目なんです」】

阿武隈急行・卸町駅近くのコンベンションホール。広い会場にため息がこだました。

 日付が変わって程なくして、大画面に映し出されたNHKの選挙特番が「金子恵美当確」を報じた。相馬市や桑折町、国見町、新地町、飯舘村でリードしたものの、金子氏の地元・伊達市でつけられた5000票の差は大きく、最後に開票された福島市でも劣勢を覆すことはできなかった。静まり返り、涙を流す女性もいた。亀岡氏が2つの大きなものを失った瞬間だった。

 公示前に福島市内で行われた総決起大会。五輪担当大臣を務めた丸川珠代参院議員や福島市長・木幡浩氏らが熱のこもった演説をするなか、亀岡氏を支持する初老の男性は「今回は危機感があるんだ」と語っていた。

 「前回比例復活だったから…。せっかく4回も当選しているのに今回も比例復活というわけにはいかない。ぜひ小選挙区で勝って欲しい。地元に対する影響も違いますしね」
 いわき市出身の森まさ子参院議員(元法務大臣)は「単に勝つだけではない。一番でなければ意味がないんです。そうですね、皆さん。二番では駄目なんです」と支持者を鼓舞した。自民党系の市町村議の1人も取材に対し、同じことを口にしていた。

 「小選挙区で勝つのと比例復活とでは全然違います。小選挙区で勝ち上がらなければ大臣にさせられないと聞いています。副大臣止まりと。小選挙区で勝って来ないと大臣にはできないと。それに、今回敗けると2回連続比例復活ということになっちゃうから、次の公認も厳しくなるということも聞いている」

 だから亀岡陣営は何としても前回の1万3000票余りの票差を逆転しなければならなかった。なりふり構わぬ選挙戦が始まった。



【「野合」「共産」を連呼】

 高いレベルの政策論争などどこへやら。亀岡氏は野党統一候補の金子氏を「野合」、「共産国家」とネガティヴキャンペーンに終始した。

 「相手は野合です。延長国会で何をしたか。私はコロナの一番大変なときに『モリカケ問題』と『桜問題』。本当にそれで良いのだろうか。個人攻撃をするような、そんな国会で良いはずがないと私は思っています。だから、ぜひ皆さんにはですね、いまは野合ということでなんか共産国家じゃないですけれども、社会主義国家じゃないですけれども、自由と民主主義の対決になりそうな、そんな福島になってまいりました」(10月15日、総決起大会)

 「野党は人の悪口を言って足を引っ張って、それで何かが生まれるんだろうか。批判だけして相手を悪く見せて自分たちが選挙に勝とうなんていうのは私は選挙じゃないと思う。はいつくばって地域の皆さんのために何ができるのかを考えるのがわれわれの仕事。大変な選挙になってきました。野党との戦いです。野合に敗けてしまったら大変なことになります。まさに社会共産国家になってしまう。冗談じゃない。自由と民主主義は日本の誇り。何としても敗けるわけにはいかない」(10月19日、土湯温泉での演説)

 候補者本人だけではない。

 福島市の選対本部長を務めた佐藤雅裕県議は相手は安倍晋三元首相を招いた街頭演説で「相手は、共産党と手を組んで政権運営をすると言っております」としたうえで「共産党は太陽光も風力も水素も反対しています」(10月27日)と事実に反するデマ発言。別の個人演説会の場でも「共産党の色を出さないように出さないようにしながら相手はやっています…ま、政権を渡すつもりはございませんが、もし共産党が参画するような政治になったらどうなるのか」と聴衆の不安を煽った。


〝比例復活〟を果たしダルマに目を入れた亀岡氏。福島市長や伊達市長も祝福に駆け付けたが…

【有権者置き去り】

 〝比例復活当選〟が報じられると、亀岡氏はテレビ局各社の共同インタビューで「政策論争をしたかったが、できなかったのは私の力不足」などと語った。しかし、はじめから「政策論争」など無く、復興道路やイノベーションコースト構想など公共事業重点型の「ハコもの復興」の〝実績〟をアピールすることとネガティヴキャンペーンばかりが目立った選挙戦だった。終盤、金子氏サイドからは「亀岡陣営は『月刊タクティス』に掲載された記事のコピーまで配っている」との声があがった(亀岡氏サイドは「事実無根」と否定)。

 亀岡氏を支持する市町村議は「ネガティヴキャンペーンなんかやったって有権者には響かないよ。だいたい、共産党が政権に参画したって共産主義社会になんかならないんだから」と苦笑した。その背景には「復興大臣のイスと党公認」があった。それだけ亀岡氏は崖っぷちに立たされていた。有権者の想いなど初めから置き去りにされていたのだ。

 福島市での個人演説会に駆け付けた下村博文元文科大臣は「今回ですね、当選をさせていただければもう5期目ですから、復興大臣、文部科学大臣。そういうポストに十分就く可能性があると私は思いますし、またしっかりそれをサポートさせていただければというふうに思っております」と語った。

 しかし、大臣ポストどころか次の選挙は無所属で戦わざるを得ない可能性まで出てきた。それは亀岡氏本人が一番良く分かっている。だから〝比例復活〟が報じられ歓声が起こっても表情は曇ったままだったのだ。

 有権者置き去りのネガキャンの効果か否か、金子氏との差は5500票ほどに縮まった。原発事故被害の実相もほとんど語られず、汚染水海洋放出など山積する課題にも言及しないまま終わった自公候補の選挙戦。古臭い利益誘導型の政治家が復興大臣に就く可能性が消えたことは、福島県民にとっては良かったのかもしれない。

(了)

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