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小栗旬の『日本沈没』 作品を薄く広く覆っている「軽さ」について

小栗旬は環境省の官僚を演じる

 秋ドラマも続々とスタートしているが、TBSの日曜劇場といえば、近年ヒット作を続々生んできた再注目の枠。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

【写真】『日本沈没』の制作発表会の後、夜は家族サービスをしていた小栗旬

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 小栗旬主演のドラマ『日本沈没-希望のひと-』(TBS系日曜午後9時)が絶好調。平均視聴率(世帯)第1話は15.8%、2話15.7%と高い数字をキープ。見逃し配信の再生回数も初回の放送後1週間で261万回(TVer、TBS FREE、GYAO!の合計値)と同枠の歴代作品1位に輝いたそうです。という数字もさることながら、豪華な俳優陣にびっくりした人は多いのではないでしょうか。

 エリート官僚役に小栗旬、松山ケンイチ。地球物理学者に香川照之、國村隼。内閣総理大臣に仲村トオル、副総理に石橋蓮司……。ズラリと居並ぶ有名俳優たち。コストをかけて作っていることがうかがえTBSの力の入れようが伝わってきます。とはいえ、その費用対効果がきちんと出るのかはまだ未知数です。

 原作はSF作家・小松左京のベストセラー『日本沈没』。その原作に大きくアレンジを加えて2023年の東京が舞台。日本地球物理学界の異端児・田所博士(香川照之)が“関東沈没説”を唱えるが、政治的な攻防によってデータの改ざん・隠蔽が行われてしまう。検証報告の結論に異を唱える環境省のエリート官僚・天海(小栗旬)は、何とか田所博士の研究を伝える手段を探っていくが……。

 まさしく一国の運命がかかっている壮大な話。いや壮大さだけでなく、テーマの深刻度もド級です。というのも現実の世界では阿蘇山をはじめ各地の火山が噴火し、海の中でも小笠原諸島付近の海底火山等が噴火中。東京は震度5の地震で帰宅困難者が出たばかり。30年以内に南海トラフ地震が70%~80%の確率で発生すると予測され、最悪の場合の死者は32万人と警告が出ている。

 まったく他人事ではありません。だからこそ、このテーマは今やるべきだとも言えるでしょう。警告の役割を担うという意味で。しかし、ドラマ全体を薄く広く覆っている「軽さ」が、現実の危機との落差を否が応でも感じさせてしまう。

 田所博士は「地殻変動によって関東が沈む」と主張。そんなショッキングな指摘をしているというのに、風変わりな研究者の単独の研究で偏屈な主張として描き出される。多数の人の生き死にを左右する問題という張り詰めた空気感が、なかなか伝ってこない。2023年の東京を舞台に設定したのだとすれば、そのあたりがやや中途半端ではないでしょうか。

 東日本大震災を経た日本では、大地震や地殻変動はすでにフィクションの領域ではない。つまり、50年程前の1973年に刊行された『日本沈没』の頃と人々の認識が全く違うものになっています。だとすると、今回のドラマも「最も深刻なテーマを扱っている」前提でいかに料理していくのかを考えなくてはならないのでは?

 田所博士のもじゃもじゃカールした髪型と丸メガネゆえか、その主張が「トヨタイムズ」のスクープ程度に見えてきてしまうのは困ったもの。マッドサイエンティストのパロディ版のような演出が必要なのかどうか。カリカチュア的芸風をわざわざ踏襲しなくてもよかったのでは? 香川さん自身はベテランで芸達者なので、演出によっていかようにも抑制をかけることは可能なはず。

 いや、あまりリアル感を出すと、娯楽として成り立たたなくなると判断した制作陣が敢えてこの形を選んだ? などとドラマを見ていても余計なことばかり頭に浮かんでしまいます。

 香川さんだけではありません。内閣総理大臣役に仲村トオルさん、外務省のエリート官僚に中村アンさん、ナレーションにホラン千秋さんと、どこか軽すぎる。もちろん役者が悪いのではなくいかに演出するかの問題でしょう。

 もし、キャスティングや演出をこのままに半沢直樹風のドラマをやるのであれば、地球相手の大災害というよりも、例えば今世間を賑わせている某大学の背任事件あたりをテーマとした方がフィットしたのかもしれません。

 とはいえ、主要人物のほとんどがオリジナルキャラクター。それだけに自由度が高くいろいろな展開ができそう。今後に注目です。日々実感する危機とドラマ世界の落差、現実に起こっていることとの何ともいえない違和感を解消していく、制作陣の手腕を期待します。

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