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1年半ぶりにプラスを記録した消費者物価指数(CPI)上昇率の先行きやいかに?

本日、総務省統計局から9月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比で+0.1%を記録しています。1年6か月ぶりのプラスです。ただし、エネルギー価格の高騰に伴うプラスですので、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は▲0.5%と下落しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

9月の全国消費者物価、1年6カ月ぶりプラス エネルギーが大幅上昇

総務省が22日発表した9月の全国消費者物価指数(CPI、2020年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が99.8と前年同月比0.1%上昇した。ガソリンや電気代などを含むエネルギーが大幅に伸び、CPIを押し上げた。プラスは2020年3月以来、1年6カ月ぶり。QUICKがまとめた市場予想の中央値(0.1%上昇)と同じだった。

原油価格の高騰を背景に、エネルギーは前年同月比7.4%上昇と2018年11月(8.1%上昇)以来の高水準だった。「灯油」や「ガソリン」が2桁の上昇となったほか、原油相場の影響がガソリンより遅行する「電気代」も4.1%上昇した。

政府による前年の観光需要喚起策「Go To トラベル」の反動で「宿泊料」は前年同月比43.1%上昇した。火災・地震保険料の上昇もプラスに寄与した。

一方、携帯電話の通信料は前年同月比44.8%下落した。NTTドコモのオンライン専用プラン「アハモ」など、携帯大手各社による新料金プランが影響した。

生鮮食品を除く総合指数の前月比は0.1%上昇だった。生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は前年同月比0.5%下落した。マイナスは6カ月連続。生鮮食品を含む総合は0.2%上昇し、1年1カ月ぶりのプラスとなった。

いつものように、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも+0.1%の予想でしたのでジャストミートしています。基本的に、国際商品市況における石油価格の上昇に伴って、ガソリン・灯油などのエネルギー価格が前年同月比で+7.4%の上昇を見せて、ヘッドライン上昇率に対して+0.52%の寄与を示した一方で、通信料(携帯電話)が前年同月比▲44.8%の下落で、▲1.23%の寄与となっています。エネルギー価格の上昇と政策要因に近い携帯電話通信料の下落のバランスで、エネルギー価格の上昇と波及が上回ってのプラスという結果であると私は受け止めています。

ただ、これも引用した記事にあるように、別の政策要因というか、何というか、昨年のGoToトラベルによる値引きの反動で、宿泊料が前年同月比+43.1%の上昇を見せ、寄与度も+0.28%あります。先行きの物価動向を考えると、国際商品市況における石油価格の上昇に加えて、国内外の景気回復とともに、物価は緩やかに上昇幅を拡大していくものと私は考えています。例えば、日銀から公表されている企業物価指数の国内物価も、最近時点では+5%を軽く超える前年同月比上昇率を示しています。物価は上昇基調にあると考えるべきです。

さて、ここで、はなはだ、私の専門外ながら、石油天然ガス・金属鉱物資源機構のリポート、また、みずほ証券のリポートなどから、石油価格について情報を取りまとめておきたいと思います。まず、石油価格上昇の背景にあるのは天然ガス価格の上昇です。すなわち、発電分野で天然ガスへのシフトが一気に進んだため、欧州の天然ガス価格は一時、原油換算で1バレル当たり200ドルを突破し、その後も160ドル台と高止まっています。この価格水準はWTI原油先物価格の約2倍に相当することから、相対的に割安な石油へのシフトが進み、発電需要から石油価格が上昇している面があります。加えて、今冬は厳寒が予想されていることもあり、需要面から石油価格上昇がもたらされています。

さらにさらにで、OPECとロシアなどの大産油国からなるOPECプラスによる供給拡大のペースが鈍く、増産幅が日量40万バレルで据え置かれたままになっていて、供給面から需要を満たすほどの増産がなされていません。従って、年末にかけてさらに石油価格は上昇し、1バレル当たり90ドルを突破する可能性が十分あるとの見方が広がっています。

我が国のデフレの初期に「悪い物価下落」と「いい物価下落」という二分法が幅を利かせた時期があります。今回も石油価格上昇に伴うインフレですので、同じような二分法の議論も聞かれます。しかし、私は我が国にとってはデフレ脱却の機会である可能性もあることから、政府や日銀の政策当局の適切な判断を期待しています。

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