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「なぜトヨタは燃料電池車の開発をやめないのか」電気自動車が苦手な2つの分野

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自動車業界では各社が電気自動車(EV)をラインナップさせる一方、水素を燃料に使った燃料電池車は販売がふるわない。水素エネルギー協会前会長で顧問の西宮伸幸さんは「たしかにEVは走行コストが安く、乗用車には向いている。しかし、トラックやバスといった大型車両では燃料電池車のほうがメリットが大きい」という――。

※本稿は、西宮伸幸『水素社会入門』(KAWADE夢新書)の一部を再編集したものです。

水素充填ステーションに駐車しているトラック※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Scharfsinn86

「環境に悪い」車のイメージを変える燃料電池車

現在、燃料電池の実用化といえば、燃料電池車がもっともよく知られた使用例でしょう。

自動車といえば、1970年代には排気ガスが大気汚染の原因のひとつとされ、また、1989年にはボルボ社が「私たちの製品は、公害と、騒音と、廃棄物を生み出しています」という新聞広告で自社の環境対策を訴えるなど、環境に負荷を与えるものと当然のように思われてきましたが、燃料電池車の登場で、そのイメージも大きく変わるかもしれません。

脱ガソリン車といえば、電気自動車(EV)が先行していますが、電気自動車が、電池を充電して走行するのに対し、燃料電池車は、圧縮水素を燃料として使用します。圧縮水素は、高圧タンクに貯蔵され、燃料電池に供給されます。ここで外気から取り込んだ酸素と反応し、電気を発生させモーターを回す、という仕組みです。

自動車の燃料に水素を使用することのメリットはいくつかあります。

エネルギー効率はガソリン車の2倍

まず、CO2を排出しないということ。燃料電池から吐き出されるのは水だけで、走行中に車外に排出されますが、環境に無害です。また、一酸化炭素や窒素化合物などの有害物質も排出しません。

また、他の動力に比べてエネルギー効率がよいということも燃料電池車のメリットといえるでしょう。

エネルギー源を揃えた比較では、燃料電池車の総合的なエネルギー効率は40%。これは、ガソリン車19%の約2倍であり、電気自動車(EV)33%、ハイブリッド車34%よりも、優れた数字となっています。なお、これらの数値は、少し古い2013年の新聞報道に基づくものです。

いくら環境にいい、エネルギー効率がいいといっても、実際に“気体”を燃料にしてどのくらい走るのか、疑問に思う人もいるでしょう。

1キロ走るコストは日産リーフが2円、MIRAIが8.8円

2020年に発表された第2世代MIRAIではタンクが従来の2本から3本、容量は141リットルになり5.6キログラムの水素を充填できます。航続距離850キロメートル、東京―大阪間を無補給で走破できます。

燃費はどうでしょう。初代MIRAIと電気自動車(EV)の日産リーフのカタログデータをもとに、電気と水素の比較を簡単に計算してみました。

トヨタのMIRAIと日産のリーフ(写真左)トヨタのMIRAI(写真=Turbo-myu-z/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons)、(写真右)日産のリーフ(写真=Kazyakuruma/CC-Zero/Wikimedia Commons)

MIRAIの場合、満タン5キログラムの水素を充填でき、航続距離650キロメートル。単純計算で1キロメートル走るのに、0.008グラムの水素を消費します。水素の売価はどこの水素ステーションでも1キログラム=1100円なので、0.008グラムで、8.8円。1キロに対するコストは8.8円です。

同じ計算をリーフですると、満タンで40kWh(キロワットアワー)、航続距離400キロメートル。1キロ走るのに0.1kWhの電力を消費します。その売価は2円なので、1キロに対するコストは2円。

電気自動車に比べると、燃料電池車の走行コストは4倍以上ということになります。現状での水素エネルギーの弱点は結局のところ価格ということになります。

ちなみに、ガソリン車との比較はどうなるのか、計算してみましょう。

ガソリン車は具体的に車種を限定するのは難しいので、一般的に燃費性能が15km/リットルの場合、ガソリンの売価を150円/リットルとすると、1キロメートルを走るのにかかるコストは10円となります。

走行コストに関しては、電気自動車に大きく水をあけられているものの、ガソリン車との比較ではほぼ同じ、というのが、燃料電池車の現状です。

2030年に水素ステーションは5倍に増える

水素燃料電池車に水素を供給する水素ステーションは、現在(2021年8月)全国に166カ所あります。全国に3万カ所あるガソリンスタンドと比較すると、安心できる数字とは言い難いでしょう。今後、燃料電池車を普及させていくためには、水素ステーションの増設が必要条件となるはずです。水素基本戦略では、2030年には900カ所にまで増やすことを目標にしています。

水素ステーションの形態は、大きく分けて3つあります。

オンサイト型と呼ばれるタイプは、ステーション内で天然ガス、LPガス、メタノールなどを改質して水素を製造します。水素の供給には、製造装置の他、圧縮機、蓄圧器、冷凍機などの設備が必要となるため、広い敷地面積が必要です。

オフサイト型は、外部で製造した水素をトレーラーやローリーで運んで貯蔵しておき、燃料電池車に充填します。敷地面積が限られた場所でも開設が可能です。

また、大型トレーラーの荷台に水素供給のための設備一式を搭載した移動型ステーションもあります。週1~2回と限定されるものの、複数の場所で水素供給が可能になります。

高技術が必要な水素供給を担う2大事業者

水素の充填は、ガソリンと同じように、車体横の水素注入口に水素ディスペンサーのホースのノズルを接続しておこないます。注入するのは圧縮水素ですが、タンク内に注入して膨張させると温度が上昇するので、あらかじめマイナス40度にプレクールしてから充填します。

主な事業者は、ガソリンスタンドでおなじみのENEOS(エネオス)と、カセットコンロで有名な岩谷産業で、それぞれ50近い水素ステーションを運営しています。

ENEOSでは、石油精製所内の水素製造設備を利用して水素を製造し、高圧圧縮でオフサイトステーションに供給しています。また、既存のガソリンスタンドを併設する形で、増設を進めています。

岩谷産業は、戦前から工業用水素を扱うこの分野の草分けです。高圧圧縮がメインですが、液化水素の貯槽をもつステーションも扱っています。宇宙航空用も含めて、液化水素の国内シェアは100%です。

液化水素の場合、マイナス253度の超低温を維持し続けるのは難しく、外部からの侵入熱によって、わずかずつですが気化(ボイルオフ)が発生します。このボイルオフを、水素吸蔵合金によって回収して、圧縮水素として燃料電池車に充填する仕組みができています。

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