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  • 2021年10月21日 12:52 (配信日時 10月21日 06:01)

各論だらけの選挙公約 コロナを政争の具にするな - 樫山幸夫 (元産經新聞論説委員長)

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総選挙が公示され、秋口の自民党総裁選をめぐる動きから始まった〝政治の季節〟は大詰めのクライマックスを迎える。各党は英知を絞った公約を掲げ、まなじりを決して活発な論戦を交わしている。しかし、相変わらずの各論重視、与野党の応酬も目先の問題ばかりといっていい。

むろんそれなりに重要な政策課題であり、真剣に議論しているのはわかる。だが、日本の転換期にあって、有権者が聞きたいことは、それだけではない。「日本国の将来」のかたちについて政治家による真剣勝負こそ、有権者が最も望むところだろう。

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男女差別意識しなかった故森山女史

仰けから横道にそれるが、公示前日の18日、 日本記者クラブでの総選挙恒例の党首討論が終わった直後、NHKニュースで訃報が伝えられた。森山真弓さんが93歳でなくなった。平成元年(1989年)、自民党の海部俊樹内閣で女性初の官房長官をつとめた元衆院議員だ。

森山女史の話を持ち出したのは、今度の総選挙論戦で、夫婦別姓、LGBTなど、〝多様性〟の問題が焦点になっているからだ。

与野党の論戦を冷笑するつもりは毛頭ないが、森山さんなら、「そんなに熱くならなくても……」と苦笑いしているかもしれない。30年以上も前に、これだけ重要ポストに就いたのだから、当時ですら能力、実力があれば、性別など関係ないことを森山さんははっきりと示したというべきだろう。

女史はたしかに、法相時代(小泉内閣)、夫婦別姓の法改正に取り組むなど女性の社会進出促進に熱心だった。しかし、官房長官時代は女性を意識しているところはつゆほども感じられなかった。

「自分がこのポストについたのは適任だからだ」と自信をみなぎらせ、ごく自然に困難な職をこなしていた。「女性だから・・」などと気負ったり、愚痴めいたことを言ったりしたことは、聞いたことがない。

最近、大組織のトップに就任した女性が、「ガラスの天井を打ち破るチャンスと考えて」受諾を決断したと語っていた。立派な決意だが、森山さんに、そんな気負いはさらさらなかったろう。

「多様性」主張なら社会の将来像議論を

夫婦別姓やLGBTは当事者だけではなく、国民全体にとって重要な問題だ。しかし、誤解、批判を恐れずに言えば、短期決戦の選挙の場でシロクロつける問題ではないように思う。

当事者はもとより、国民の多くが「これならいい」と納得するよう、じっくり時間をかけるべきではないのか。早急に、しかも選挙争点にして結論を出すと禍根を残す。望まない結論を強いられた当事者がかえって不利な扱いや、いやがらせを受けたり、逆効果を生むことにならないか。

今度の総選挙で結論を出したい党がほとんどだから、ここで決着するのもいいだろう。しかし、LGBT、夫婦別姓が実現すれば事足りるというのではなく、〝多様性〟を主張するからには、それによって将来、どんな国にしていくのか、その青写真を見据えた議論が必要ではないのか。 

立憲民主党は「政策集2021」のなかで、外国人労働者を受け入れ、「生活者」として遇すること、難民認定制度、収容者送還制度の見直しを提言している。将来の移民完全受け入れを視野に入れているのかは判然としないが、野党第一党の提言だ。

この提案を機会に、均一な日本社会から脱皮し、将来、アメリカのように移民を受け入れて人口減を補う〝多民族国家〟として生まれ変わっていくのか。こうした根本的な議論を始めるのも意味あることだろう。

コロナ対策は危機管理として議論すべき

自民党総裁の岸田文雄首相は総選挙の争点を問われて真っ先に「コロナ対策」をあげた。他党も公約の第一がそれだ。

再び誤解を恐れずに言えば、コロナ対策は総選挙最大の争点であるべきなのか。感染を食い止め、国民の生命を守り、回復を急ぐ、そして疲弊した経済を立て直すというのは与野党共通の大目的ではないのか。そこに論争の余地があろうはずがない。

ワクチン接種時期をどうする、カクテル療法、治療薬開発を急ぐ、国民一律に現金を支給する――などという主張は、総選挙の争点に掲げて国民の審判を仰ぐべき問題だろうか。予防、治療、生命の安全にかかわる問題は、日本感染症学会など医療専門家による研究、検討に委ねるべきだ。

それに関連する問題はコロナ対策を検討してきた国会の与野党協議機関で具体的に話し合うのがスジであり、よほど建設的だ。総選挙の争点にすることこそ、まさにコロナ問題の政治利用というべきだろう。

コロナ対策について選挙で議論するというなら、自民党の公約が若干触れている危機管理上の問題としてとらえるべきだろう。総理大臣はじめ閣僚の多くが感染した場合、国会議員の多くが入院した場合、どうするのか。

国民の考えを聞き、判断を仰ぐべきは、こうしたことを想定した危機管理対策であるはずだ。それは、究極的には憲法の改正の是非に行き着く。

姿見えぬ「新しい資本主義」

岸田首相掲げる「新しい資本主義」「日本型資本主義」。あたかもアダム・スミスやケインズに並ぶような大きなテーマにも聞こえるが、内容はよくわからない。

「成長と分配の好循環」の実現ということらしいが、それなら何ら新しい議論とはいえない。安倍晋三内閣の時から続いている論争だ。中間層の国民の生活向上がかかった重要な問題ではあるのはわかるが、「分配が先か、成長が先か」という議論は、総選挙の争点として、国民にどれだけ理解されるか。 

このテーマに関連して、岸田首相が総裁選で打ち出していた「令和の所得倍増」が所信表明演説から消え、代表質問で追及された。自民党公約集の「新しい資本主義」の項目にも見当たらなかった。

この政策は、岸田氏率いる名門派閥「宏池会」の初代会長、池田勇人元首相(1960-64年在任)の「所得倍増」「高度成長」のコピーであるのは明らかだ。当時とは異なる現代で、「令和版」とはいえ所得倍増を打ち出したのは無理だったと判断したのかもしれない。

しかし、当時は魅力的なアイデアだったこのプランを原型に、アップデートな要素を取り入れて現在でも関心をひく公約を打ちせなかったものか。定年延長、週休3日、テレワーク時代――など国民の関心をひくテーマはいくつもあろう。

そうした心動かされる公約が登場すれば有権者は歓迎し、選挙戦も盛り上がるはずだ。

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