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1970年から2020年の半世紀でみる出生数減少率・都道府県ランキング-ニッポンの人口動態を正確に知る(1) - 天野 馨南子

【はじめに】すべての経済活動のベースに人口がある

SDGsという言葉を聞くたびに胸が苦しくなるのは筆者だけであろうか。持続可能な開発目標、という言葉が独り歩きしている気がしてならない。

経済を回すのは、経済成長の恩恵を受けるのは一体だれか、と考えると、それは人間、なのだろう。だとすると、その持続可能な開発の恩恵を受けるはずの人口が激減していくことを棚上げして、なにを持続可能に開発するというのだろうか。

私たちは本来の目標を見失いやすい。本来は地域を活性化するはずの経済活動が、その活動を支える人口のSDGsが見失われたままで進められるならば、それは病巣を抱えた人間に対して行う「終末を覚悟した治療行為」にとどまることと同様ではなかろうか。

人口は消費者であり、生産者であり、そして継続的経済活動のディマンドサイド、サプライサイド、双方を構成している。

2020年コロナ禍元年、出生数は戦後最低を更新し、84万人となった。

この84万人という数字を、半世紀前の1970年との比較において減少率ランキングで都道府県別に計算した結果を示しておきたい。

【日本全体では半世紀で6割減少し、出生数は4割水準に】

1970年に生まれた人々はコロナ禍元年2020年に50歳を迎えた。つまり50歳の人口が生まれた時と比べて出生数が何割減少したのかを示したものが下図である(図表1)。

最も出生数が減少したのは秋田県で、75%の減少率となっている。つまり秋田県では、今の50歳男女の1/4水準にまで赤ちゃんの数が減ったのである。秋田県の50歳人口が通学していた小学校のクラスが4組から1組へ、更にいうと4学校を1学校に統合するレベルの大激減である。



秋田県と同様に半世紀で出生数が約7割減少したエリアが、秋田県以外に9エリアも存在している。

東北地方では2エリア(青森県、岩手県)、四国地方では2エリア(高知県、愛媛県)、そして近畿地方の和歌山県、北海道、中国地方の山口県、九州地方の長崎県、北陸地方の新潟県がランクインとなった。

減少の要因については別のレポートに譲るが、47都道府県中10エリアにおいて半世紀で出生数約7割減という、まさに人口消滅を思わせるスピードで少子化、つまり人口減少が起こっている。

【44エリアで出生数が約5割以上減少】

赤ちゃんが半世紀で約6割減となったのは11位から34位の24都府県である。47都道府県において、最も多い減少率は約6割減、という状況である。
 
そして約5割の減少、つまり半世紀前の約半分の出生数となったエリアは、35位から44位の10エリアとなった。

この10エリア中、関東エリア(神奈川県、埼玉県、千葉県)と九州エリア(佐賀県、熊本県、鹿児島県)がともに3エリアを占めており、関東の3エリアはすべて東京都のベッドタウンとして繫栄してきたエリアである。また、九州エリアでは、佐賀県と熊本県は福岡県に隣接している。このように大都市に隣接する5エリアに、地方大都市を有する愛知県と宮城県の2エリアを加えた7エリアについては、「男女ともに大きな労働市場が比較的身近にあり、住まい(地価)と仕事のバランスも悪くはなさそうである1」というところが出生数の減少率が低めとなっている原因と推測される。

1 10エリア中7エリアについて、令和3年度の公示地価の都道府県ランキング※を参照すると、巨大労働市場を持つ東京都が1平米あたり113万円であるのに対して、神奈川県は26万円、埼玉県は16万円、千葉県は13万円となる。同様に九州最大の労働市場を持つ福岡県は18万円であるが、熊本県は10万円、佐賀県は4万円となる。愛知県は21万円、宮城県は14万円である。
https://tochidai.info/public-price_prefecture-ranking/
以上から予想されるワークライフバランスのよさを大前提として、交通手段の利便性等を加えた結果と思われる。

【若い独身女性の動きに正直な出生数の変化】

この「男女ともに大きな労働市場が比較的身近にあり、住まい(地価)と仕事のバランスも悪くはなさそうである」という視点からみると、減少率が4割以下の水準にとどまった福岡県、滋賀県も同様である。滋賀県は「滋賀府民」という言葉が使われるほど、大阪府、京都府への通勤者が多く、ベッドタウンとしての歴史を持つ。

意外に思われるのは、東京都より出生率が高い大阪府ならびにそのベッドタウンの近畿エリア(和歌山県、京都県、兵庫県)の出生数の減少幅が東京都以上に大きいことではないだろうか。

これは若い女性の人口移動が関係しており、就職先として「大阪か、東京か」という選択の中では、大阪は常に東京都に対して社会減(転出超過)エリアとなってきた歴史が影響している。いくら域内での出生率をあげても、1組のカップルが授かる赤ちゃんの数には限界があり、人口再生産能力を持つ女性の母数をエリア外に奪われてしまうと、出生数では勝ち目はない。

若い独身期の女性の移動に注目すると、各エリアの出生数の謎を簡単に説明することができる。

本稿では半世紀での出生数の減少割合の実情のみのレポートにとどめるが、上記のような視点から各都道府県においては「少子化対策」を今一度、見直されることを呼びかけたい。

次回は東京一極集中が発生したこの四半世紀における都道府県の出生数の減少について、ランキング形式の解説を行う。

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