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iPS細胞 実用化へ国挙げて支援を

iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った再生医療の実用化へ、意義ある一歩が踏み出されたことを歓迎したい。

iPS細胞で目の難病「加齢黄斑変性」の治療を試みる理化学研究所(神戸市)チームの臨床研究が、実施先の医療機関である先端医療センター(同市)で承認された。

同センターは3月にも理研と共同で厚生労働省に審査を申請する予定だ。順調に承認されれば、ノーベル医学・生理学賞を受賞した山中伸弥京都大教授が世界に先駆けて作製したiPS細胞を使った初の再生医療が、2013年度にも国内で始まることになる。

加齢黄斑変性は加齢に伴う網膜の障害で視力が低下する難病。失明の恐れがあり、根本的な治療法がない。臨床研究では、患者の皮膚から作ったiPS細胞を傷んだ網膜に移植して視力の回復状況を数年間かけて検証し、効果的な治療法の開発をめざす。

iPS細胞による再生医療の国際的な開発競争が進む中で、今回の承認は臨床研究でも日本が世界をリードしつつあることを示した形だが、本格普及への課題は多い。

第一は、臨床研究で成果が得られても、実用化段階では厚労省の承認までにかなりの時間がかかりかねない点だ。肝心の実用化で後れを取ることがないよう、これまで前例のないiPS細胞を使った治療に対応する、新たな承認の仕組みなど制度面の環境整備を急がなければならない。

もちろん「安全性の確保」も欠かせない。iPS細胞は移植後、がん化するリスクが指摘されるが、目の細胞組織はがんになりにくい。加齢黄斑変性が最初の臨床研究に選ばれたのはこのためだが、今後、神経や他の臓器などの病気で臨床研究を広げていくには、安全性についての一層の研究や検証が必要だ。

また、iPS細胞の安定した量産化も重要だ。患者自身のiPS細胞で治療するには多くの時間と費用がかかるため、山中教授は移植に適したiPS細胞のストックに「さい帯血バンク」を活用することによって、この問題を乗り越えようと構想している。

こうした環境整備や研究促進には、国の継続的な支援が不可欠だ。このため自公連立政権は、12年度補正予算案に214億円を盛り込んだのに続き、13年度予算案でも12年度当初予算比倍増の90億円を計上。さらに今後10年間、毎年90億円程度を拠出し、拠点整備や疾患別の実用化研究などを後押しする方針だ。

実用化へ国を挙げた支援を加速させていきたい。

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