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「あえてコスト削減はしない」アイリスオーヤマが工場の3割をわざと遊ばせているワケ

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ビジネスを効率化するため、多くの企業がコスト削減に努めている。IT企業レッドフォックスの別所宏恭社長は「現在の商品やサービスを『最適化』しすぎると、いざ売れなくなった時に身動きが取れなくなるリスクがある。企業は素早く切り替えられる余裕を持っておくべきだ」という――。

※本稿は、別所宏恭『ネクストカンパニー 新しい時代の経営と働き方』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

■企業は血のにじむコスト削減を続けているが…

経済の先行きへの危機感から、あるいは景気の影響もあって、多くの会社では、さまざまなコスト削減の取り組みを行っていると思います。

こまめに照明や空調のスイッチを切ったり、コピー機の紙として裏紙を使ったり、会社によっては少しでも交通費を安くするために、時間がかかっても安い路線をわざわざ使って打ち合わせに行かせたり……ということもあるかもしれません。

これらは本当に効果があるのか不明な部分もありますが、とくに製造業であれば、もっと厳密で科学的なコスト削減を日ごろからしているはずです。たとえば、1工程当たりの時間をコンマ単位で削ったり、工場内のモノの配置を効率化したりと、それこそ血のにじむような努力を当たり前にされているでしょう。

ただ、とくにこれからの時代は、コスト削減の効果がこれまでのようには儲けにつながらなくなってきます。

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/awiekupo

■高品質で安価な製品を大量に売る時代は終わった

それはなぜか?

実は「コスト削減」は、あることが前提になっています。

それは「今、これを、こういう形でつくるのが正しい」ということ。この点を大前提として、「現在」に特化して効率化を進めていくのがコスト削減の考え方です。

これまで日本の製造業は、従業員をうまく巻き込みながら、「乾いた雑巾をさらに絞る」と表現されるような地道で細やかな改善活動を続けてきました。そのおかげで、品質を高めつつコストを下げることを可能にし、高品質かつ安価な製品を世界中に提供してきたのです。

ただ、この考え方が通用していたのは、「いいものを安く大量につくり、たくさん売る」ことで儲けていられた時代までです。

■コスト削減の先に「明るい未来」はない

新しい技術がどんどん出てきて、消費者の嗜好も目まぐるしく変わり、結果として商品のライフサイクルが短くなっている現在。製造業に限りませんが、商品ごとに血のにじむようなコスト削減をいくら積み重ねようが、売れなくなってしまえばすべてが水の泡です。また、売れ筋自体が大きく変わっていく中では、今あるものを改良しても、おのずと限界が訪れます。

いずれにせよ、「コスト削減」で儲かっていた時代はすでに終わり、ゼロベースで考えて商品をつくっていかないと儲からない時代に突入しているということです。

もちろん企業の基礎的な能力として、コストを抑えつつプロダクトをつくっていくノウハウは必要ですが、無駄を極限まで省いてコスト削減していっても、もはやそこに「明るい未来」は訪れません。

「何を、どんな形でつくるのが正しいのか」という前提自体が変わっていくのですから、それに特化しすぎるのは逆に危険。注力すべきはそこではないのです。

■今のビジネスを「最適化」しすぎるリスク

コストダウンは「最適化」の一種といえますが、より大きな視点でいえば、コストダウンに限らず、「現在に最適化しすぎない」ことが重要です。

商品やサービスのアイデアを生み出し、リリースするまでには、「現場で情報を集め、社内で共有して分析し、アイデアを練って商品開発する」=「企画」という一連の流れがあります。「企画」は業種にかかわらず、企業のコアとして普遍的な役割を担っており、この部分については、今後も徹底的に最適化した仕組みづくりをするべきです。

ここでいう「やってはいけない最適化」とは、あくまで「今やろうとしているビジネス」に対してのものです。

具体的に「最適化」のどんな点が問題になるのか? それは、そもそもの大枠である現在のビジネスに対する「最適化」が度をすぎてしまえば、「それしかできないプレーヤー」になってしまうことです。そうなると、そのビジネスが通用しなくなったとき、儲からなくなったときに、身動きが取れなくなってしまう危険があるのです。

■「世界の亀山モデル」頼りのシャープは敗北した

2000年代に、シャープは液晶テレビ「アクオス(AQUOS)」で一世を風靡(ふうび)し、三重県の亀山工場で一貫生産する液晶テレビをブランド化して「世界の亀山モデル」と謳っていました。吉永小百合さんが出演したテレビCMを覚えている方も多いでしょう。

この勢いを駆って、シャープは液晶ディスプレイのパネル生産のために、2009年設立の大阪・堺工場(当時)など莫大な投資を実施。さらに生産能力を高め、液晶パネルのビジネスへの「最適化」を進めます。

その一方で、ソニーや東芝などほかのメーカーへのパネルの外販が想定したほどにはうまくいきませんでした。そうこうしているうちに世界的なパネル価格の低下などに巻き込まれて韓国のサムスンやLGに敗北を喫し、結果として台湾・鴻海精密工業の傘下となったのは、記憶に新しいところです。

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