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  • ロイター
  • 2021年10月13日 15:35 (配信日時 10月13日 15:32)

焦点:「グリーン・リチウム」はEVシフトの救世主になるか


[カリパトリア(米カリフォルニア州) 7日 ロイター] - 2020年代末までに電気自動車(EV)のバッテリーに使われるリチウムに対するグローバル需要の25%、あるいはそれ以上を賄えるのではないか――自動車メーカーや投資家、さらには油田サービス大手のシュルンベルジェまでが、環境負荷の少ないリチウム生産テクノロジーに熱い視線を注ぎ始めている。

自動車メーカーのステランティスやビル・ゲイツ氏らによる投資ファンド「ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ」などは最近、直接リチウム採取(DLE)と呼ばれる技術を開発するスタートアップ企業に対して数百万ドルの投資を行ったり、供給契約を締結している。この技術を今後1、2年のあいだに商業生産レベルにまで前進させようとする試みだ。

従来、リチウムを得るためには、岩石を採掘するか、塩湖から採取するかん水(塩分を含む天然水)を蒸発させる方法が用いられていたが、DLEであれば利用する土地と地下水が少なくて済む。業界アナリストらは、DLEがEV産業にとってリチウム確保の新たな方法になると考えている。ただし、それにはこの技術が大規模に展開されるようになることが必要だ。

「このテクノロジーの謳い文句は、『もっと多くのグリーン・リチウムを』だ」と語るのは、独自動車大手BMW傘下のベンチャーキャピタルファンドであるBMWiベンチャーズのカスパー・セージ氏。同社は今週、DLE関連スタートアップのライラック・ソリューションズに出資した。

DLE技術を何かにたとえるならば、飲料水から金属類を取り除く家庭用浄水器だ。

この処理では、リチウムの濾過に数時間しかかからず、スペースも平均的な規模の倉庫で済む。対照的に、これまでの手法で用いられていた蒸発池は数百エーカーの規模になることもあり、近隣の帯水層を恒久的に枯渇させ、しかもリチウムを生産するのに数年を要する。

とはいえ、ほとんどのDLE技術は、太陽光を利用する蒸発池に比べて運用コストが高い。また大量の真水と電力が必要になる場合もある。

米大手アルベマールなど既存のリチウム生産企業は、DLE技術の研究は行っているものの、エネルギーと水の消費が大きいという懸念があるため、このテクノロジーが主流になるとしても2020年代終盤になるだろうと判断しているという。

リチウム生産業界に設備を販売するスエズPAで水テクノロジー事業を担当するジョン・ペイシェル氏は、「DLEにとって主要なハードルの1つが、清浄な水へのアクセスだ」と語る。

水圧破砕法で知られるシュルンベルジェは、米ネバダ州でDLEプロジェクトを進めている。同社の「究極目標」は、真水を使わないリチウム生産だという。これは、米エネルギー省が推奨している目標でもあり、同省は地熱利用による最も優れたリチウム生産テクノロジーの開発を対象に賞金400万ドルのコンテストも主催している。

<投資家の思惑は>

潜在的な障害はあるものの、いわゆる「グリーン・リチウム」に対するウオール街の関心は薄れていない。

スタンダード・リチウムのDLE技術は、アーカンソー州での実験段階にすぎないが、同社の株価は7月のニューヨーク証券取引所上場以来6倍に上昇した。

オーストラリアのバルカン・エナジー・リソースの株価は、ドイツ国内でのDLEプロジェクトからステランティス、ルノーに対してリチウムを供給する計画を8月に発表して以降、40%高騰している。

ハウス・マウンテン・パートナーズの独立系業界アナリストであるクリス・ベリー氏は、これまでに行われた発表を元にすれば、2020年代末にはDLEにより世界のリチウム供給量の4分の1を生産するようになると予測。一方で、すべての技術を同じように評価すべきではないとも指摘する。産業コンサルタントの中には、4分の1よりも高い数値を予想する見解もある。

昨年、世界全体でのリチウム需要は約32万トンだった。2025年までには100万トン、2020年代末には300万トンに達すると予想されている。

「DLE技術を各リチウム鉱床に合わせて応用する際には多くの課題があり、投資家は、それを考慮してこの技術の利点を評価する必要がある」

DLE技術の開発者たちの注目を集めている地域が、ロサンゼルスの南東約258kmに位置するソルトン湖だ。リチウムを豊富に含む超高温のかん水が、サンアンドレアス断層の真上にある同地域の地底に渦巻いている。

ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハザウェイとエナジーソースは、現地にある既存の発電所にDLE技術を追加し、発電の傍らリチウムを処理する方法を模索している。

また近隣では、株式非公開のコントロールド・サーマル・リソーシズ(CTR)が、ゼネラルモーターズ(GM)への供給を目的とした地熱によるリチウム抽出プロジェクトを進めている。GMでは「当社のリチウム需要のうちかなりの量」をCTRが供給する可能性があるとしている。

このプロジェクトとアルゼンチンで進められている類似案件はライラック・ソリューションズの技術に支えられており、DLE実用化に向けた最初のテストケースの1つと見ているアナリストもいる。

ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンスのデータによれば、リチウム価格は過去最高に近づいており、新技術の実用化に向けた競争は白熱している。

アルゼンチンのリチウム生産企業オロコブレと提携している株式非公開のエナジー・エクプロレーション・テクノロジーズで最高経営責任者を務めるティーグ・イーガン氏は、「リチウム供給はEVへのシフトにとって主要なボトルネックになっているが、DLEが供給拡大につながる可能性がある」と話している。

(Ernest Scheyder記者、翻訳:エァクレーレン)

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