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法科大学院制度は、司法試験合格者2000人でも成り立たない!

 法科大学院制度自体が志望者の激減という事態の中で危機的状況にあるということは誰もが認識しているところです。
 この煽りを受けてか、法学部の進学希望者すら減っていて、東京大学文Ⅰ系(法学系)の入試において、足切りがなかったことが大きな話題になっています。

東大文1、門前払いなし 13年ぶり 難関敬遠?」(朝日新聞2013年2月15日)
最新! 国公立65大学志願者に異変 東大文Ⅲ人気、法は敬遠…」(Zakzak2013年2月5日)

 これまで東京大学の法学部といえば、官僚養成学部と言われたり、政財界への足掛かりのようなところがあり、競争率も高ければ、それこそ「優秀」な人たちが目指していたところなのでしょう。そのような求心力のもとで、エリート学部となっていったのでしょうが、明らかに地盤沈下が起きています。
 もともと法的素養があることが重宝されていた、というよりも単にエリート学部としての求心力が「優秀」層を吸収していたのだろうと思いますが、その求心力が一気に瓦解したということですもともと法的素養に重きがないとすれば、崩壊するのもあっという間ということになります。
 東京大学ばかりでなく、法学部自体が地盤沈下してしまっています。

 これだけ求心力を失ったのですから、法学部や法科大学院が一気に瓦解していくことは時間の問題だと思うのですが、不思議なのは、法科大学院を擁護する学者たちが、そのような危機感を持っていないことです。
 何故か、すべての原因を法科大学院課程修了者の司法試験合格率の問題に矮小化してしまうのです。司法試験合格率さえ高くなれば、志望者は回復され、以前のような「優秀」な層が集まってくると思っているのです。
 現実逃避も甚だしいと言わざるを得ません。

 ところで、司法試験合格率を上げるための方法はいくつかあります。
①司法試験合格者数自体をさらに増やす方法
②入学定員を削減する方法
③厳格な成績評価と修了認定によって修了者自体を絞ってしまう方法

 法科大学院を推進する人たちは、これらの方法について、どこに比重を置くかの違いがあるだけで、これらの方法をみな主張しています。
 弁護士の中の推進派も口では、司法試験年間合格者数を減員せよなどということを言っていますが、本音は違います。減員に反対です。それまでの言動を見てみればわかります。
 その代表格は、日弁連現会長の山岸氏でしょう。
東京弁護士会法友会の反省 日弁連会長選挙の裏
 札幌弁護士会でも同様です。
 昨年の当会の1000人決議に対しても、法科大学院推進派はこぞって反対し、これを潰そうとしていました。
日弁連会長選挙 山岸憲司氏を支援する人たち
 中には、最後に「賛成」に挙手した推進派もいましたが(伊藤誠一氏)、その時の議決が9対1での圧倒的多数での賛成であったので、最後まで反対しきれなかったのでしょう。
 ご本人曰く、「苦渋の決断」だったそうですが、いかに自分が会員の総意とはかけ離れたところで決議を潰そうとしてきたのかということを思い知るべきです。

 少なくとも法科大学院制度は、司法試験年間合格者数を2000人以下にしてしまったら持ちこたえることができません。最低限、2000人を死守する必要がありますが、それだけでは十分ではありません。
 ましてや1500人、1000人ともなれば、現状の法科大学院制度を成り立たせることは無理です。全国での適正配置などは明らかに不可能になります。
 法科大学院推進派は、そのことを十分に認識しています。
 だから、法科大学院制度を擁護する人たちは、司法試験の合格者数の減員にも反対しているのです。
 その意味では首尾一貫しています。
 逆に減員には賛成だが、法科大学院制度は維持すべきという人は全く一貫性がありません。
 おそらく、
①単なる感情だけで結論を出している
②本音は減員に反対
のいずれかでしょう。
法科大学院制度を擁護する若手の意見について

 ところで、この合格率ですが、本当に司法審で言っていたような7~8割の合格率にすれば、志望者を回復できるのでしょうか。
 旧司法試験が合格率数パーセントでも志望者を維持できたのは、誰でも受験できたからです。逆に撤退することも自由にできました。仕事を持ちながらでも可能でした。
 しかし、法科大学院は違います。一度、入ったら撤退ということが著しく困難になります。高額な学費やら勤務先をやめての入学になりますから、撤退すれば「中退」です。
 そのような中で、合格率が7~8割、逆にいえば、不合格率は2~3割にもなるということです。法科大学院への入学という重大な決断をしても、2~3割も不合格になるのです。
 さらには、上記合格率を上げる方法の③(厳格な成績評価と修了認定)も問題になります。
 法科大学院推進派の中には、現状でも7~8割の合格率を確保できると主張する人もいます。それは厳格な成績評価と修了認定によって受験者を絞ればいいんだというのです。
 医学部でいえば卒業を保留されてしまうようなものです。医師の国家試験に合格できるだけの学力がないと判断された場合、その学生が受験すればその大学の合格率が下がってしまうので卒業させない(受験させない)という方法が行われているわけです。
 もちろん学力のない学生を卒業させてしまうこと自体、問題なのですが、この問題は実は医学部の学力低下の問題とあいまって非常に大きな弊害が生じているという現状が看過されています。
法科大学院は、医学部に学べ!?」

 厳格な成績評価と修了認定それ自体は必要なことですが、しかし、これによって司法試験が受験できないということになれば、それでは、その学生にとっては、受験前から「不合格」とされたのと同じ結果になります。
 それだったら、入学試験で合格させないでよ、ということになりかねません。
 厳格な成績評価と修了認定が指摘され始めてから、修了率も年々、下がってきてるのですが(それまでは甘かったということでしょう。)、そうなってくると、実際の入学者が最終的に合格できる割合を示さなければ、みかけだけの合格率になり、あまりにも詐欺的です。
(詐欺的とお認めになった井上正仁さんのような方もいます。「態勢は詐欺的かもしれません」(Schulze BLOG参照))

 もちろん、志望にあたっては、志望希望者は、その点まで考慮するでしょうから、結局のところ、実際の合格率は低いということは当然にわかること、だからこそ、志望はしない、それが志望者激減という結果になって現れているのですが。
 「合格率7~8割」を達成しても、志望者を回復できるはずもないということです。
 そのためには、どうしても合格者数自体をさらに増員するしかないのです。
 3000人が合格するとなれば、合格率7~8割であるならば、全体の水準は下がるので、合格できるかどうかの予測がつけやすくなるからです。
 しかし、それでも所詮は予測でしかありません。

 しかも、合格できるかどうかの「予測」で簡潔するわけではありません。
 合格者数を3000人はもちろんのこと、現状の2000人、さらには1500人、実は1000人にしても、合格後に食えるようになっているかどうかは厳しい予測しかありません。合格者数を増員すれば、それに拍車が掛かります。
 そうなれば、絶対に志望者を回復することはできない、ということです。
 ましてや、1000人以下として、合格率を7~8割とするならば、もはや現状の法科大学院制度は成り立たないことも明らかですから、現状の法科大学院制度は抜本的に改める必要があります。
 廃止か受験資格要件撤廃のどちらかということになります。それ以外の結論はありません。

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