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「GAFAに富が集中し低賃金労働者が増大する」ITの雇用破壊で日本はこれから超格差社会に突入する

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規模が大きい企業ほど価格競争に強い

なぜ独占が生じるのだろうか? 情報産業でも、「固定費用」はゼロでないことに注意しよう。固定費用は、生産量にかかわらず掛かる費用だ。ソフトウェアを最初に作り上げるには、それ相応の開発費用が掛かる。購入者が1人であっても100人であっても、変わらず掛かる費用が固定費用である。

限界費用ゼロで固定費用だけが掛かるこうした産業では、規模が大きい企業ほど優勢になる「規模の経済」が働く。ある企業Aが1000万円でソフトウェアを開発したとする。このソフトウェアが100人に売れる見込みであれば、10万円以上で売ることによって利益を生み出せる。

それに対して規模の小さなライバル企業Bが同様のソフトウェアを1000万円で開発したとしよう。このソフトウェアが、10人にしか売れる見込みがないのであれば、100万円以上で売らなければ利益が出ない。したがって、企業Bは、規模が小さいがために価格競争力を持ち得ず、企業Aに太刀打ちできないのである。

プリント基板※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Artith Chotitayangkoon

だからGAFAが市場を独占する

私達がWindowsに対抗してOSを開発しても、全く儲からなそうな気がするのはこのためだ。すなわち、限界費用ゼロの産業では規模の経済が働くがために、巨大企業が市場を独占するのである。

だから情報産業では、似たような商品やサービスを展開する企業が乱立するような状態にはなり得ない。実際、パソコン用のOSのほとんどは、マイクロソフトとアップルによって提供されている。

検索エンジンやSNSのようなプラットフォームも、基本的には、限界費用はゼロに近いが固定費用はプラスだ。最初の開発に掛かる費用の他に、サーバーの維持費などが固定費に含まれる。固定費は利用者が1人でも掛かるが、追加的な費用は100人増えてもほとんど掛からない。

したがって、プラットフォームについても規模の経済が働き、よく知られているように、グーグルやフェイスブックが独占企業ないし寡占企業として君臨している。限界費用ゼロは、ITの雇用創出力が弱いことだけではなく、一部のIT企業に富が集中することの原因にもなっているのである。

「巨大企業以外は低賃金」の超格差社会が到来する

さらに悪いことに、プラットフォームでは「ネットワーク外部効果」が働く。これは利用者が多いほど利便性が増す現象を指す。古くは電話やファックスがそうだが、この効果の見られる分野では利用者が増えれば利便性が増し、さらに利用者が増大するという好循環が生まれる。極端な話、世の中に自分1人だけが電話を持っていても、掛ける相手がいないので、なんの役にも立たないだろう。

『ゲンロン12』(ゲンロン)
『ゲンロン12』(ゲンロン)

電話の所有者が多ければ掛ける相手も多くなり、電話の利便性は上昇する。検索エンジンやSNSは、ネットワーク外部効果を生じさせるようなプラットフォームサービスだ。

ネットワーク外部効果もまた、独占を生じさせる要因になり得る。なぜなら、利用者が多いほど利便性が高まるのであれば、やはり規模の大きい企業が提供するサービスがその利便性ゆえに利用されがちになるからだ。

したがって、このままいけば情報社会の未来は、暗澹たるものになる。富はGAFAのような企業に集中し、他に風変わりなソフトウェアやネットサービスを提供する企業がそこそこ儲けて、後は肉体労働に従事する低賃金労働者が大勢いるという超格差社会が到来するのである。

もう資本主義はやめるべきなのか

では、格差がもたらされるから、もう我々は資本主義とおさらばすべきなのだろうか? 既に述べたが、互酬が市場経済にとって代わる気配はないし、それが望ましいとも思われない。資本主義のオルタナティブは今のところあり得ないだろう。

ソ連邦崩壊後に立ち現れた、出口なしのように見える資本主義を「資本主義リアリズム」と言う。イギリスの批評家マーク・フィッシャーによれば、それは「資本主義が唯一の存続可能な政治・経済的制度であるのみならず、今やそれに対する論理一貫した代替物を"想像することすら"不可能だ、という意識が蔓延した状態」である(※)。

このリアリズムに対し取り得るスタンスが二通りある。一つは、資本主義を減速する立場で、もう一つは加速する立場だ。(『ゲンロン12』へつづく)

※Fisher, Mark. Capitalist Realism: Is there no alternative?, John HuntPublishing, 2009, p.2. 邦訳はマーク・フィッシャー『資本主義リアリズム』、セバスチャン・ブロイ、河南瑠莉訳、堀之内出版、2018年、10頁、引用符原文。

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井上 智洋(いのうえ・ともひろ)
駒澤大学経済学部 准教授
早稲田大学非常勤講師、慶應義塾大学SFC研究所上席研究員。博士(経済学)。2011年に早稲田大学大学院経済学研究科で博士号を取得。早稲田大学政治経済学部助教、駒澤大学経済学部講師を経て、2017年より同大学准教授。専門はマクロ経学。最近は人工知能が経済に与える影響について論じることが多い。著書に『人工知能と経済の未来』(文春新書)、『ヘリコプターマネー』(日経BP)、『AI時代の新・ベーシックインカム論』(光文社新書)、『純粋機械化経済』(日本経済新聞出版)、『MMT』(講談社)など。
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(駒澤大学経済学部 准教授 井上 智洋)

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