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G20閉幕~名指しでの批判を回避した「まだ何もしていない」日本

 「一番の成果は、通貨戦争とあおられるのを完全に抑えられたことだ」

モスクワで開催されたG20財務相・中央銀行総裁会議では、懸念されたアベノミクスに対する名指し批判は、「日本側の徹底した理論武装」が功を奏する形で避けられた。「日本経済が成長すれば各国の利益にもつながる」という日本側の主張が認められた格好だが、「G20-7」国に自国の為替取引に制約を加えている国が多く存在するG20が、市場介入もしていない日本を名指しで批判するのは所詮難しい話し。

 「おれたちはまだ何もしていない。ちょっとアゴでするだけで株価は2割強上がり、為替もスルスルと円安になった」

14日の麻生派の会合でこのように発言し、自らのアゴを突き出しながら日本政府による「円安誘導」との指摘を打ち消した麻生財務相。「まだ何もしていない」と発言する財務相が、G20で「徹底した理論武装」をするというのも面白い構図。

麻生財務相の「ちょいとアゴでするだけで、為替もスルスルと円安になった」という一見ふざけたような発言は、事実に基づいた発言でもある。

日銀が市場に供給している資金量(マネタリーベース平均残高)は、1月時点で131兆9205億円と、前年同月比では10.9%増加しているものの、前月比では▲0.05%と、昨年末の131兆9837億円から僅かに減少している。

一方、FRBのマネタリーベース(季節調整済)は、前年同月比では3.9%増、前月比では2.53%増。ECBは前年同月比で9.1%増、前月比で0.00%増となっており、日銀が「次元の違う金融緩和」に踏み切ったことで円安が進んだとは言い切れない、むしろ日銀は「まだ何もしていない」と言える状況。「まだ何もしていない」のだから、日本が名指しで批判を受けなかったのはある意味当然のこと。

安倍政権誕生以降「スルスルと円安になった」のは、日銀による「次元の違う金融緩和」の効果ではなく、各国の金融政策に対する市場の見通しが変って来たことを反映したもの。日本では、「これから」「大胆な金融緩和」が行われる可能性が出て来たのに対して、米国では金融緩和の「出口」が議論され始め、欧州ではECBが金融市場の安定のために供給して来た資金の一部がECBに戻り始めている。こうした各国の金融緩和の「時間軸上の立ち位置」が変化して来たことが、「スルスルと円安になった」大きな要因である。

あくまで想像でしかないが、FRBがQE3のさらなる強化を模索し、ECBが金融市場の安定を目的にさらなる資金供給を続けなければいけない状況下であったとしたら、アベノミクスで「大胆な金融緩和」を打ち出すだけで、少なくともこんなに短期間に「スルスルと円安」になることはなかったはずである。

「デフレ不況への対策が成功し、日本経済が再び活力を取り戻すことができれば、間違いなく世界経済にいい影響が与えられる。われわれがそう確信してやっているという点が、一番理解を得られたのではないかと思う」

国際会議で「ちょっとアゴでするだけで」という説明は通用しないと思ったのか、日本側は「日本経済が再び活力を取り戻すことができれば、間違いなく世界経済にいい影響が与えられる」という理論武装をしてG20に臨んだようだ。しかし、「日本経済が成長すれば各国の利益にもつながる」という日本の主張がすんなりと受け入れられたのはやや意外。

「日本経済が成長すれば各国の利益にもつながる」というのは、必ずしもG20諸国が望んでいるものではない。日本を含む各国が望んでいるのは、「日本経済が『内需主導』で成長」することのはずである。内需低迷が続く中での日本経済の成長は、「外需主導の景気回復」を意味する。世界各国が「通貨安戦争」を警戒しているのは、自国の内需が低迷し、多くの国が「外需主導の景気浮揚」を潜在的に欲しているからである。その中で、日本が「外需主導」で景気回復を図るということは、他国の内需を脅かすことでもある。

「日本経済が成長すれば各国の利益にもつながる」という日本の主張が認められたとすれば、それは暗黙の内に、G20各国が日本の成長を「内需主導での景気回復」であると捉えているということ。

「内需主導の景気回復」は、金融市場と異なり、「ちょっとアゴでするだけ」では達成出来るものではない。「まだ何もしていない」で幸運にも金融市場での異常な株安や円高に歯止めが掛けられた今必要なことは、一定規模の公共事業を維持することで内需を安定させ、本来「禁じ手」であったとしても、雇用者報酬の増加や雇用の拡大を図る、「次元の違う 『内需主導』 経済対策」を推し進めることである。

マスコミ中心に、金融市場の好転によって「景気は底をついた」という希望的観測も高まって来ているが、実体経済が「何もしていない」内に回復することはあり得ないことを政府は肝に銘じるべきである。実体経済には、金融市場にいたドジョウはいない。

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