記事

「ラーメン評論家」の炎上にみる 評論せずにはいられない人びとの心理

2/2

「評論」せずにはいられない人の心理

――なぜなら、この世の中には、「評論」することでしか、「指導」することでしか、「助言」することでしか、他人とつながるためのきっかけをつくる術を知らない者が大勢いるからだ。

他者との「《対等》なコミュニケーション」のとり方を知らないまま年齢ばかりを重ね、つねに自分が優位に立って「教えてやり」「感謝され」「尊敬を集める」ポジションに立たなければ、他者とのつながりはもちろん、自分の居場所や存在感を確保できない者たちが、この社会には相当数いる。とくに中高年男性に顕著だ。

「評論家になる」という営為は、それによって雑誌連載や書籍を出して糧を得ているプロフェッショナルでもないかぎり、ほとんどの場合コミュニケーションが不得手な一群の人びとが「だれかとつながるための手段」として採用する最終手段のひとつなのである(アニメやマンガや鉄道などの「オタク」界隈において、かれらの会話がしばしば会話の体をなさず、一方的な知識披露の独演会に終わってしまうことと相似形である)。

たとえばラーメン店に訪れて、わざわざ店主を知識量で圧倒しようとしたり、的外れな「指導」の置き手紙を置いたりするような人間が、その他の場面でなら他者と良好な人間関係を築けている――などという可能性は、言うまでもないが極めて低い。どのような場面においても、往々にして周囲の人から少し距離を置かれ、敬遠されていること請け合いである。

さまざまな趣味の界隈に生息して、そして御多分に漏れず煙たがられている「評論家目線」の一般人は、本当は評論をしたいわけではない。多くの人と友達になりたい、友達から尊敬されたいと考えているからこそ、あえてそうしているのだ。それ以外に「他人とかかわるきっかけ」のうまいやり方を知らない、ただそれだけだ。

「望ましいコミュニケーションがとれない人」はどこにいくのか?

今回、梅澤氏がきっかけとなって多くの人が氏に同情を寄せながら行っている「評論家」への非難はたしかに妥当である。

しかしながら、今回の騒動は別の大きな社会問題の存在をはからずも示唆している。

――すなわち「(他者とフラットで良好な関係性を築くことが困難な)コミュニケーション能力の低い人びとが、いったいどのようにして現代社会で他者とのつながりを得て、自分の存在価値や肯定感を獲得していけばよいのか」という問題である。これは、以前BLOGOSに寄稿した「教え魔」をテーマにした記事でも同じ論点があることを指摘した。

コミュニケーション能力がますます重要視され、そこで暮らす人びとが他者にとって望ましい存在・望ましいふるまいをつねに求められるようになった現代社会では、「他者にとって望ましくない者・望ましいふるまいができない者」の居場所は加速度的に小さくなり、また「自分がこの社会でプラスの存在である」という実感を得られる機会も着実に乏しくなっている。

「社会的に望ましい関わりができない不快な人」の言動やコミュニケーションを加害――今回の場合でいえば「教え魔」――として定義して全社会的に糾弾して追放すればするほど、私たちの暮らす社会は、たしかに表面的にはますます快適さを増していくことは間違いない。

しかしその快適さは「他者にとって快いコミュニケーションができない人」の存在を排除し疎外し、彼らをますます生きづらくしていくことと表裏一体である。

-----
BLOGOS『キャンプ場にも出没か 「教え魔」が後を絶たないワケ』(2021年4月22日)より引用
https://blogos.com/article/531494/

現代社会は「望ましい形で他者とかかわれない者」に対する風当たりが日増しに強くなっている。

他者に不快感を与えるようなかかわりをする者は「迷惑な人」として敬遠されるばかりか、それを通り越して今日では「ハラスメント加害者」と認定され、積極的に排除されることすら起こりえるようになった。梅澤氏の店で出禁になったようにだ。ある店で出禁になるような人間は、やはり別の店、別のコミュニティ、別の人間関係からも「出禁」になりがちだ。

世間の人びとはそれを無邪気に歓迎している。「他人によって煩わしい思いをしなくなるのだから、なにも悪いことではない。世の中は良い方向へと前進しているのだ」――と。だが、どういうわけかこうした論調を肯定的に語る人びとは、自分のことをいつだって「他人から煩わされる被害者の側」「他人をジャッジして切り捨てるかどうかを決める側」に自分を置いて主張している。逆の立場になりうることを想像すらしない。そんな保証はどこにもないのだが。

だれもが素朴に賛同し、達成を目指している「快適な社会」は「不快感を催す人間」を疎外・排除することによって成立している。

「コミュニケーション能力の低い不快感を催す他者に煩わされない快適な社会」を際限なく追求していけば、当然ながら「望ましい人間としてのふるまい」のハードルも上昇しつづける。いずれは自分もそのハードルを越えられなくなり、「迷惑な人間」としてジャッジされる日がやってくる。

「めんどくさい他人」に煩わされない、快適な「無縁社会」の裏側

「この国は、困っている人がいてもだれも助けようとはしない」 「日本社会は、生きづらさを抱えるひとに対して冷酷だ」

――などと、この国における協力的な他者の希薄さを嘆く声が増えている。

たしかに、日本は世界でも屈指の「自己責任大国」なのかもしれない。

だが、こうした人びとが望む「本来あるべき暖かいつながり」は、残念ながらいくら嘆こうがこれからますます少なくなっていく。「他人への望ましいかかわり」を達成するための心理的・コミュニケーション能力的なハードルが高くなり続けるからだ。

「他者への望ましいかかわり」のハードルを高めれば高めるほど、たしかに評論家のような「面倒くさい他人」は現れなくなって快適だ(かりに現れても「加害者」としてみんなで糾弾し、追放することが正当化される)。しかしいざというときに手を差し伸べてくれる他人も一緒にいなくなってしまう。いや、現にいなくなりつつある。

「頼まれてもいないくせに、上から目線でアレコレ口出ししたり、ハラスメントまがいな言動をとったりする、身の程をわきまえない勘違いも甚だしい迷惑人間」だけが都合よくいなくなってくれたらいいのに――だれもがそう願ってやまない。しかし良いところ取りはできない。私たちは、そうした他人との接点を減らすために、「支えてくれる人とのつながり」を代償に捧げるほかなかった。

出典

注1:元AKBラーメン店主、取引先に「反社と繋がっている」と「ウソ」の連絡され「麺オタク」を提訴へ(弁護士ドットコムニュース、https://www.bengo4.com/c_18/n_13523/
注2:ブログbyフードジャーナリスト はんつ遠藤『梅澤愛優香さんに対する、はんつ遠藤の意見』http://hants.livedoor.biz/archives/52184019.html

あわせて読みたい

「アイドル」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    年収 30年横ばい狂騒記

    ヒロ

    10月18日 11:33

  2. 2

    梅澤愛優香さん、文春が報じた産地偽装問題を謝罪 「エビや牛モツが海外産だった」

    キャリコネニュース

    10月18日 09:57

  3. 3

    安倍、麻生を裏切り総理を操る甘利明・幹事長という「狡猾の人」

    NEWSポストセブン

    10月18日 10:43

  4. 4

    東京五輪後に東京不動産は暴落すると言っていた人たち

    内藤忍

    10月18日 11:50

  5. 5

    空港の保安検査場の締切時間を守らない客を待つことがサービスなのか?ANAさん間違ってます

    かさこ

    10月17日 13:37

  6. 6

    ドコモ障害 ひろゆき氏「200万人困っただけ」に対して専門家「実際はもっといる」

    ABEMA TIMES

    10月18日 10:36

  7. 7

    いまだに変わらない日本の罰点社会 厳しいバッシングに不快感

    ヒロ

    10月17日 14:35

  8. 8

    鳥よけシートは“トー横キッズ”対策? 物理的排除に批判の声も

    NEWSポストセブン

    10月17日 10:11

  9. 9

    「70歳定年」の時代へ 退職後の生活で意識したい3つの収入とは

    NEXT MEDIA "Japan In-depth"

    10月17日 17:35

  10. 10

    悪い円安が加速、日本人はますます貧乏になる

    藤沢数希

    10月17日 13:11

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。