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政府のワクチンパスポート エンタメ業界救う「一筋の光明」になるか

緊急事態宣言下では野外フェスの開催も賛否を呼んだ。*写真と本文は関係ありません(時事通信フォト)

 政府は、11月頃をめどにワクチン接種などを条件に行動制限を緩和する方針を示している。9月6日に行われた政府の「第1回デジタル社会推進会議」では、ワクチンパスポート(接種証明書)をオンラインで発行する方針を決定した。早ければ年内に利用開始となる見通しだ。

 そんななか、アイドルグループのアップアップガールズ(仮)、吉川友、和田彩花らが所属する芸能事務所YU-Mエンターテインメントの代表取締役である山田昌治氏は〈弊社主催のイベントに関して11月ごろを目処に、新型コロナウイルスワクチンの「接種済証」や、いわゆる「ワクチンパスポート」或いは、48時間以内の「PCR検査の陰性証明書」の提出者のみを入場可能とする事を検討しております〉(9月6日のツイートより)と発表した。

 人気タレントが多数所属する芸能事務所としては、いち早くワクチンパスポートに前向きな姿勢を示したことになる。山田氏に取材したところ、反響は「賛否両論」だという。

「もちろん、お客様並びにスタッフ、演者が安心して楽しめる空間を作るのが一番の目的です。なので、この判断が何かの分断に繋がったり、差別を助長するような結果にはしたくありません。11月から新たな方針を導入する予定ですが、その頃には希望者全員がワクチンを接種完了しているという政府の発表に基づいて決めた時期なので、接種状況によって柔軟に変化させるつもりです。

『弊社がエンタメ業界の先陣を切る』と意気込んでいるわけでもありませんので、皆さんのご意見を伺って、いろいろ模索するうちに、良い形を見つけられたらと思っています」(山田氏)

 新型コロナウイルス感染拡大によって、エンタメ業界は大打撃を受けた。それだけにワクチンパスポートをめぐる動きが業界全体から注視されている。

 多くのステージを手がけてきた舞台監督及び舞台制作の会社、クリエイト大阪の代表取締役・長野真梧氏は、「弊社はスタッフとしての舞台監督会社ですが、ワクチンパスポートの提示などに関しては、『主催者側の判断に任せる』が現状で一番近い回答です」とコメントする。

「現状、弊社が関わっているコンサートなどで来場者へのワクチン接種証明(もしくは当日PCR陰性証明)の義務を課しているものは見当たりませんが、感染状況によりチケット販売条件に加えていく動きはあるかもしれません。

 ワクチンパスポートを現場に導入するにあたって、若年層へのワクチン接種が遅れている現状は課題のひとつかと思います。業界内では、スタッフ側へのワクチン接種義務のようなことは増えており、音楽4団体職域接種での接種促進を行っております」(長野氏)

これまで通りの警戒体制が続くとの見方も

 また、年間約100本のトークイベントを開催するイベンターでライターの大坪ケムタ氏は、「現状では自分の主催イベントで、『入場時ワクチンパスポート必須』を打ち出す予定はありません」とコメントする。

「自分がイベントを行っているライブハウス級の会場では、デルタ株が拡大した今夏も臨機応変な対応をとったところが多く、パスポートの有無だけで入場を判断するケースは少ないと思います。ですが、感染拡大リスクの高いホール級以上のイベントでは導入するところも多そうですね。

 ただ、このコロナ禍の中でもライブに来ることに慣れているお客さんは、この1年間でのライブハウスの感染対策を見てきているので、もしパスポートを導入したとしても前向きに受け入れてくれる人が多いと思います。

 自分も出演者・会場の要請があれば従うつもりですし、ライブ中の演者と観客の距離が近いステージが売りのグループなんかはパスポート提示を導入するところも出てくるのではないでしょうか」(大坪氏)

 コロナ禍で苦境に陥ったイベント業界にとって、ワクチンパスポートは一筋の光明となるか。大坪氏は冷静な見方を示す。

「ただ、ワクチンパスポートを導入したイベントであっても、即コロナ以前の盛り上がり方に元通り、ということはないと思います。

 10月から緊急事態宣言も解除されましたが、ほとんどの会場やイベント主催者は、しばらくは宣言中のルールをキープしていくようです。政府や東京都のこれまでの施策に対する不信感と、デルタ株で若い層にも感染拡大したこと、それにブレイクスルー感染や『またすぐ第6波が来るのではないか』という不安もあって、次のコロナ拡大の波がどの程度か見極めるまでは、エンタメ業界はこれまで通りの警戒体制は続くのではないでしょうか」(大坪氏)

 なお、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」などの音楽フェスを開催する株式会社ロッキング・オン・ジャパンは10月5日、署名つきで掲出した「音楽を止めない。フェスを止めない。」というメッセージの中で「ワクチン接種証明の提示や事前のPCR検査の実施も検討しています」と言及している。さらに12月17日~19日に京都パルスプラザにて行われる音楽フェス「ポルノ超特急2021」は、ワクチン接種2回完了者もしくは入場72時間以内のPCR検査陰性者のみ入場可能と発表された。

 感染対策を継続しながら、イベント業界は“新たなイベントの在り方”を模索しているうようだ。

◆取材・文/原田イチボ(HEW)

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