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「かかりつけ医」の意味を問い直す-コロナ対応、オンライン診療などで問われる機能

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1―はじめに ~「かかりつけ医」の 意味を問い直す~

近年、医療制度改革の論議で、「かかりつけ医」という言葉を頻繁に見掛ける。例えば、新型コロナウイルスへの対応では、かかりつけ医への発熱相談などでクローズアップされたほか、オンライン診療を初診から認める特例の継続、外来医療の明確化などの文脈でも、かかりつけ医の重要性が論じられている。

しかし、かかりつけ医は必ずしも制度的に位置付けられておらず、その意味は曖昧である。本稿では、かかりつけ医の制度的な位置付けが曖昧になっている背景として、30年ほど前の議論を振り返る。その上で、かかりつけ医を制度化しているイギリスの事例などを参考にしつつ、患者にとっての「医療の入口」を1カ所に絞る登録制度の是非も含めて、今後の方向性を問い直す。

2―かかりつけ医が注目される文脈

ここでは、かかりつけ医が注目されている文脈として、(1)新型コロナウイルスへの対応、(2)オンライン診療の特例継続、(3)外来医療の明確化――という3つに大別する。第1の新型コロナウイルスへの対応では2020年9月、身近な医療機関に電話で相談した上で、地域の「診療・検査医療機関」を受診する仕組みに変更された。さらに2021年度に入って本格化したワクチン接種に関しても、日本医師会(日医)の中川俊男会長から「(筆者注:かかりつけ医による)個別接種の方が、ワクチン接種には強力な武器になる」との期待感が示された。

第2のオンライン診療の関係では元々、2018年度に初めて保険給付として認められたが、初診を対面で診察した患者に限定する「初診対面原則」などが導入されたことで、実施医療機関は増えなかった。その後、新型コロナウイルスへの対応策として、「院内感染を防ぐためにオンライン診療が重要」という意見が強まり、初診対面原則が事実上、撤廃される特例が2020年4月から導入された。

さらに菅義偉政権の下で特例の恒久化が決まり、2021年6月に閣議決定された「規制改革実施計画」では初診からの実施について、原則として、かかりつけ医による対応が基本とされた。

3点目に関しては、各医療機関の外来機能を明確にする議論が絡んでいる。日本の医療制度では患者が自由に医療機関を選べる「フリーアクセス」が採用されており、各医療機関の外来機能が不明確である。そこで、2016年度診療報酬改定では紹介状なしで大病院に行った場合、5,000円の追加負担を徴収する仕組みが導入され、その後も追加負担を徴収される医療機関の対象は少しずつ拡大されたが、今年の通常国会で成立した改正医療法では、紹介患者を中心に外来医療を提供する「医療資源を重点的に活用する外来」(仮称)を明確にすることが決まった。

この一環で、大病院への外来集中を防ぐ観点に立ち、かかりつけ医の機能を明確にするよう求める意見が強まっている。

3―「かかりつけ医」の意味

では、かかりつけ医とはどう定義されているのだろうか。日医などは2013年8月の報告書で、図表1のような定義と機能を示している。

しかし、かかりつけ医の制度的な位置付けは曖昧であり、その曖昧さの淵源は1990年代に遡る。以下、当時の経緯を振り返ることとする。



4―「かかりつけ医」の経緯

かかりつけ医という言葉が医療制度の論議で初めて使われたのは1990年代前半であり、慢性疾患患者の増加などを踏まえ、かかりつけ医と患者をマッチングさせるモデル事業が1993年度にスタートしたが、この事業が始まる際には1980年代後半、厚生省と日本医師会(日医)が「家庭医」の創設を巡って激しく対立したことが影響した。

具体的には、継続的に健康状態などを把握する「家庭医」を制度的に育成しようとした厚生省に対し、日医は「既に開業医が同様の役割を果たしている」と主張。さらに、厚生省が医療費抑制に向けて、家庭医の制度化を目指していることを日医は警戒した。

結局、新たな制度は設けられず、現行制度をベースにしつつ、かかりつけ医を広げて行く形が選ばれた。この結果、かかりつけ医は制度的に明確に位置付けられず、今に至るまで制度的な位置付けや役割は必ずしも明確になっていない。

その後、継続的に患者の状態などを把握するプライマリ・ケアの専門医として、総合診療医の制度的な育成が2018年度から始まったものの、かかりつけ医と総合診療医の違いは整理されていない。

敢えて言えば、総合診療医はプライマリ・ケアの「能力」を持つのに対し、かかりつけ医は図表1のような「機能」を果たす医師と整理されている。その分、かかりつけ医には能力を測る客観的な評価基準や要件が不明確となっている。

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