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ジョブ型で企業のマネジメントはどう変わるの?と思ったときに読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。非常に興味深いテーマの本を読んだので、今回は筆者の見解も合わせつつ紹介したいと思います。

「日本版ジョブ型」時代のキャリア戦略――38歳までに身につけたい働き方のかたち
加藤 守和
ダイヤモンド社
2021-08-18





日本人の自分自身のキャリアに対する意識は非常に低く、本書の紹介する国際調査では

・会社への満足度
・仕事への満足度
・出世意欲
・継続勤務の希望
・転職意欲
・会社以外での自己啓発の有無

すべてにおいて日本は14か国中栄えある最下位に位置しています(パーソナル総合研究所「APAC就業実態・成長意識調査(2019年)」)。

具体的にはこんなイメージです。

「あー会社も仕事もつまんない。もう出世とか無理ってわかってるし。今の会社に70歳までいるとか悪い冗談でしょ。でも転職するのもかったるいし、そもそもオフで勉強とか一切してないし」

あーいるいる、と思った人も多いはず(苦笑)

筆者も各種の国際調査に目を通していますが、こうした傾向は顕著ですね。日本人は世界で一番会社も仕事も嫌いな一方、転職の意欲も低く自己啓発もしていないんです。

でも、それは日本人が諸外国の人たちと比べて怠惰だからというわけではありません。日本特有のメンバーシップ型雇用を維持するために、会社が個人にキャリアを押し付けてきた結果なんですね。

内定出した後で配属先を決め、会社の都合で全然別の職種にジョブローテとかするわけで、そんな流れの中で“キャリア意識”なんて持たれたらむしろ扱いづらいわけです。

「日本社会や企業が『キャリアに対する無思考』を求めてきたからである」という本書の指摘はまったくもって同感です。

ただし、日本企業のメンバーシップ型雇用は既に限界を迎えており、ジョブ型への移行は不可避です。まず優秀層が納得しません。
右肩上がりの業績が続くと、企業側も処遇の大盤振る舞いができます。「課長相当の人」が多少増えたところで、組織内に良い仕事が潤沢にあるので問題はありません。昇給や賞与も十分に行われるため、各自に不満は出ません。

しかし、業績が低迷すると、一気に状況は変化します。(中略)自分とは明らかに責任差がある「課長相当の人」が自分と同じ処遇を受ける、というのは納得がいくことではありません。
同じく優秀な若手も同様です。
また、次代を担う有望な若手・中堅社員の流出も課題です。これらの人材はそれほど気が長くありません。会社が「活躍の場」を提供できなければ、さっさと見切りをつけて出て行ってしまいます。しかし、人を中心とした「職能型」では、若手・中堅社員の登用を阻害してしまうことがあります。
そして、職場の高齢化も見逃せない点です。本書は60歳以降に処遇を大きく切り下げることでモチベーションが大きく下がる点を挙げ、それを回避するには年齢で一律に処遇するのではなく、やはりジョブで処遇を決めるしかないとします。

筆者の意見をくわえると、実際には40代からすでに出世競争で脱落した社員の消化試合化はスタートしているので、問題の根はずっと深いと思います。

ただし、本書は、日本企業が一斉に欧米のようなジョブ型組織に雪崩をうって変革するとは予想していません。

というのも、日本社会には、新卒一括採用や定年制度といったメンバーシップ型雇用と密接に結びついた制度があり、一足飛びに企業内の雇用制度だけをアップデートするのは難しいし、不合理だからです。

これは筆者も同感で、たとえばいきなり「よし、来季からジョブ化するんで職種別採用をやるぞ!一律初任給も廃止ね!」なんてやっても応募できる水準の学生はほとんどいないだろうし、採用部門も何やっていいか全然わからないと思いますね(笑)

そこで、ジョブ化は管理職あたりから上のグレードで実現し、一括採用新卒そのものは今後も残されるというのが本書の見立てです。

筆者自身も以前から「管理職やリーダー以上がまずジョブ化され、高度人材や経営幹部受けの職種別採用は導入されるが、ゼネラリスト枠として従来の新卒一括採用枠も残される」と述べてきました。ほぼ同じ見立てだと思います。

というわけで、これからのビジネスパーソンは、30代後半までの“猶予期間”に、いかにしてジョブ型人材になるかが極めて重要なテーマとなるのです。

以降、
マネジメントはこう変わる
個人が取り組むべきキャリア戦略

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