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【原発事故と復興大臣】「〝福島のウチナーンチュ〟になるよう頑張る」 西銘大臣が福島県知事を表敬 復興庁職員も首かしげる兼務

岸田文雄首相が新しい復興大臣と沖縄及び北方対策担当大臣を兼任させた問題で、西銘恒三郎復興大臣が6日夕、福島県の内堀雅雄知事を表敬訪問した。

「何回でも足を運ぼうと気合いが入っている」と話す西銘大臣とは裏腹に、復興庁職員ですら兼務を疑問視しているが、当の大臣は「福島が片手間になることは全くありません」、「一生懸命にやって福島県民の皆さんの不安が少しでも消えていくように行動で示すしかない」と重ねて強調。内堀知事からかけられた言葉を引用する形で「〝福島のウチナーンチュ〟になるよう頑張ります」と高らかに宣言した。



【「全力で頑張りますから」】

 「全力で頑張る」、「とにかく足しげく」…。

 福島県庁を訪れた西銘大臣の口からは原発事故からの復興について具体的な話は出ず、歴代大臣と同じように「現場主義」を語りながら「何回でも足を運ぼうと気合いが入っている」、「とにかく現場に出向いて、話をたくさん聴いて、心のひだが触れ合うようなお仕事ができたら」と述べるのが精一杯だった。

 知事表敬後に行われた記者会見。朝日新聞記者から「福島県民のなかには初の兼務に対する不安や、大臣が沖縄出身であることから福島が二の次になるのではないかという懸念がある」と問われると、次のように答えた。

 「沖縄は生まれ育って67年間、見ておりますので、現場に足を運ばなくてもある程度…。物理的に限られた時間で、優先して被災地域に足を運べるのではないか。知事さんから今日からがスタートですから、という話をいただきましたので、こればっかりは一生懸命にやって福島県民の皆さんの不安が少しでも消えていくように行動で示すしかないのかなと考えております」

 筆者も会見終了間際、「本当に兼務などできるのか?」と質問した。

 西銘大臣は移動の足を止めて「できますか、というより拝命しておりますので全力で頑張りますから、どうかご理解をいただきたい」と回答。さらに筆者が「福島が片手間になることはないですか?」と問うと、大臣はこう強調した。

 「福島が片手間になることは全くありません。全力で取り組みますので、これは見ていただくしかないかなと。〝福島のウチナーンチュ〟(沖縄の言葉で「沖縄の人」)になるよう頑張ります」

 大臣によると、取材者を退室させた後の内堀知事との会話の最後に「〝福島県のウチナーンチュ〟になってください」と言われたという。




福島県の内堀雅雄知事を表敬訪問した西銘恒三郎復興大臣。復興大臣としては初めての兼務については「全力で頑張りますから、どうかご理解をいただきたい」と答えるのが精一杯だった

【「復興はいまだ途上」】

 西銘大臣は福島駅近くの福島復興局で職員に訓示をした後、福島県庁を訪問。17時45分から特別会議室で内堀知事と面会した。

 4日の定例会見では、日頃直接的な表現を避ける内堀知事には珍しく「沖縄北方担当大臣兼務であるからこそ、福島に何度も来ていただき…復興大臣として全力を傾注していただきたい」と語ったが、この日は〝大人〟の対応。「福島県庁にようこそ、いらっしゃいました。一昨日、就任されたばかり。そのなかでまず福島県を訪問していただいたこと、うれしく思います。復興大臣ご就任、おめでとうございます」と西銘大臣を出迎えた。

 内堀知事は「私たちにとって復興大臣は、とても大切な大臣です」と前置きしたうえで「現在進行形」、「複雑・多様」、「現場主義」の3点について話した。

 「福島の震災・原子力災害からの復興はいまだ途上、過去形ではありません。現在進行形。しかも、ここから先も長い闘いが続きます。たとえば、福島第一原発の廃炉には30年から40年の期間がかかると国のロードマップで示されています。あるいは中間貯蔵施設も県外最終処分も30年という期間が見込まれています。まさにわれわれは、復興に向けて長い闘いの真っ最中。進行形だということをぜひ感じていただければと思います」

 「(住民帰還率に差があるなど)12市町村ひとつとっても、それぞれの自治体がステージが全く違う状況にありますので、こういった点にについてもぜひ、知っていただければと思います」

 「機会を見て幾度も福島に足を運んでいただいて、それぞれの地域の市町村長さん、議会の皆さん、また住民の皆さんと今日の私たちのように目を合わせて、そして言葉を交わして、想いを交流させる。こういったものが積み重なっていくことで西銘大臣ならではの『福島の復興はこうやるんだ』という強い想いが必ず生まれてくる」

 西銘大臣は時折うなずき、メモを取りながら聴いていた。




この日は山口壯環境大臣も内堀知事を表敬。帰還困難区域の除染問題や中間貯蔵施設、汚染水の海洋放出問題などの課題に取り組むと述べた

【「いずれ切り捨てられる…」】

 相次ぐ質問にも嫌な顔ひとつせず足を止めてまで答えるなど、誠実さは伝わった。「兼任を決めたのはあくまで岸田総理。大臣本人は任命される側にすぎない」と同情的に見る福島県幹部もいる。

 だが、西銘大臣の「全力で頑張る」という言葉とは裏腹に、部下である復興庁福島復興局の職員ですら「震災に加えて原発事故問題のある福島は、被災3県のなかでも別格。故郷に戻れない方々が大勢いる。そういうなかで、兼務など難しいと個人的には思う。沖縄の方々にも失礼な話」と口にするくらいだ。前号で紹介した意外にも、福島県内には復興大臣兼務に否定的な声が多い。

 国と東京電力の関係者を刑事告訴した「福島原発告訴団」団長・武藤類子さんは「3つまとめて『辺境の問題』とされたのでしょう。復興庁が存続したとは言え、福島の復興はもう重要では無いのではないでしょうか。いずれ、予算が切れる時に切り捨てられていくのかな…」と語る。

 また、会津放射能情報センター代表の片岡輝美さんも「復興五輪も〝成功裏に終わった〟として、いよいよ隅に寄せられていく感じがします。そもそも沖縄に強いている課題があれほど大きいのに、北方問題と一緒にする。そこに福島を一緒にして、十把一絡げにする。人権を軽視している証拠だと思います。中央からは、物理的にも意識の上でも『遠い周辺の出来事』なのでしょう」とのコメントを寄せた。

 これからは「福島のウチナーンチュになる」が西銘復興大臣のキャッチフレーズになるのだろう。この言葉には早くも帰還困難区域から避難している住民から「ふざけている」と怒りの声があがった。また、避難指示区域ばかりが話題になることに、中通りの住民は「私たちには関係ないから期待もしていない」と話した。区域外避難者も含め、どこまで原発事故被害に寄り添えるのか。原発事故から11回目の冬が近づいている。
(了)

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