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「10年以上無職のダメ人間だと妻に言えず」生活費欲しさに結婚詐欺を繰り返した夫

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裁判傍聴芸人の阿曽山大噴火です。今回傍聴したのは8月27日と9月16日に東京地裁で行われた仲澤一晃被告人の詐欺の初公判と第2回公判。大手商社マンを装って婚活アプリで知り合った女性からお金を騙し取ったと報じられた事件です。

他に余罪があるという伝えられ方をした事件でしたが、その後の詳細を伝える報道もなく8月27日にひっそりと初公判が行われました。

起訴は2件です。1件目は2015年10月4日〜11月17日の間、被告人が被害女性Aさん(41)に対して「会社の仮払いをしなきゃいけないのに空き巣に入られた。50万必要、貸して欲しい」とLINEを送り、50万円入金させた件。

2件目は、2021年3月12日に、被告人が被害女性Bさん(49)に「会社から借り入れしていた880万円の返済を求められていて、返さないと会社クビになる。半分は払ったので残り440万円必要」とメッセージを送り、3月15日に440万円入金させた件。

それにしても、6年前の事件と今年の事件が一緒に起訴されているというちょっと珍しいパターンです。

罪状認否で被告人は「間違いありません」と罪を認めていました。

検察官の冒頭陳述によると、被告人は専門学校を卒業後、会社員として働き、その後は税理士事務所など職を転々としていたそうです。

2005年に結婚して、犯行当時も現在も妻子と一緒に住んでいるとのこと。

2014年にYahoo!パートナーというマッチングアプリに登録して「上場企業勤務で年収1000万以上、独身」というプロフィールを作成。そのマッチングアプリでAさんと知り合い2015年8月から交際。同年11月に50万円を振り込ませたそうです。

2021年2月にはマッチングアプリでBさんと知り合い、今年3月上旬から交際。3月15日に440万円振り込ませたというのが検察官の冒頭陳述です。

取り調べに被告人は「勤務先はペーパーカンパニーだった。様々な支払いに追われウソをついてしまった。返済するつもりだと言っていたがアテはなかった」と述べているそうです。

婚活アプリを利用していたので「婚活詐欺」と報じていたメディアもありましたが、被害女性との交際期間を経ての詐欺なので結婚詐欺という事なのでしょうね。

検察官の証拠が全て読み上げられたので、このまま被告人質問をやるのかなあと思いましたが、続きの弁護人立証は次回公判で行う事に。しかも…。

弁護人「検察官に確認ですけど捜査は全て終わっているんですか? 追起訴はないですか?」
検察官「はい。これで全ての予定です」

このやり取りから察するに余罪が他にもあると話しているようなものだけど、罪に問うのはこの2つだけという事になります。追起訴がないことを確認して初公判は10分程で閉廷でした。

被告人の妻「職を切らさず働いていると思っていた」

そして、9月16日に行われた第2回公判です。今回は弁護側の立証から。まずは、被告人が書いた謝罪文と被害弁償の一部を支払った証拠が提出されました。被害弁償と言ってもBさんに対しては150万円だけ、Aさんからは被害弁償を断られている状況のようです。弁償を拒否するとは、相当怒っているのでしょう。

続いて被告人の奥さんが情状証人として出廷です。結婚詐欺師の妻というなかなかツライ立場での証人ですけど、気になるのは事件をどれくらい知っていたのか?まずは弁護人から。

弁護人「結婚して何年ですか?」
奥さん「17年目になります」
弁護人「結婚してからずっと被告人は仕事をしてなかったのでしょうか?」
奥さん「いや、最初半年くらい無職だったんですけど、その後は職を切らさず働いていると思ってました」

被告人は働いていない時期も仕事をしているかのように装っていたみたいです。

弁護人「最初の事件が起きた2015年頃、生活費はどっちが払っていましたか?」
奥さん「生活費は主に主人が払っていました。私が長男を出産したばかりの頃で子ども関係は私が払っていました」
弁護人「支払いはギリギリだったのでしょうか?」
奥さん「いや…主人が給料明細を見せてくれないのでギリギリなのかどうか…」
弁護人「仕事していると思っていた?」
奥さん「仕事の委託で、あったりなかったり」
弁護人「こんな事を長年やっていたのはなぜだと思いますか?」
奥さん「ウソをつく事に抵抗感がない……ん〜、助けてくれる人がいると依存しやすいのかなと」
弁護人「金遣いの方はどうでした?」
奥さん「高価な物を買うとかギャンブルとかは全くありませんでした。少し汚れただけで買い替えるというのはあったかなという程度で」
弁護人「今後も同居は続けるんですよね?」
奥さん「できればそうしたいです。家計簿をつけて身の丈に合った生活をしたいです」

このようなやり取りがあり、今後の監督を約束していました。

続いて検察官からの質問。

検察官「2015年当時、1ヶ月の生活費はいくらでした?」
奥さん「家賃が11万円、食費が6~7万円、光熱費や通信費とか…」
検察官「30万円くらいですか?」
奥さん「大体は…」
検察官「被告人は何を払っていたんですか?」
奥さん「家賃や生活費もろもろ…」
検察官「あなたは子育て関連のお金を出していたと言ってましたけど、いくらですか?」
奥さん「10万円はいかないですけど…」
検察官「じゃあ20万円は被告人が出していたと。それで月にいくら貰っているのか分かってなかったんですか?」
奥さん「教えてもらえなくて…。訊くと、『明細出ないんだ』とか『貰ってない』と言うので」
検察官「おかしいとは思いませんでしたか?」
奥さん「結婚当初からずっとそうなので…。お金の話になると『オレが出しているからいいだろ』とか『生活できているんだからいいだろ』とケンカになってしまって…」
検察官「どこの会社で働いていると思っていたんですか?」
奥さん「保育園でも書かなきゃいけないので…ただ何度も変わっているので…事務職とかですね…」

どこに勤めているか、いくら稼いでいるかとかを質問するとケンカになるので訊けなかったという夫婦関係。不思議と言えば不思議だけど、まさか結婚詐欺で得たお金とは想像もしてなかったでしょうからね。この後、裁判官からは今後の監督などについて訊かれて奥さんの証人尋問は終了です。

10年以上無職を隠していた被告人

続いて被告人質問です。まずは弁護人からの質問。

弁護人「借金があったという話ですが、なぜお金を借りたのですか?」
被告人「日々の生活費が足りなかったからです」
弁護人「いつから働いてなかったんですか?」
被告人「定職がなくなってからなので……10年以上です。探していましたが、若い人や単身者が優先で採用されませんでした…」
弁護人「仕事をしてないと奥さんに言ってないのはなぜですか?」
被告人「妻は非常に真面目な性格で正義感も強く、私が仕事もせずにダラダラしているだけで離婚を切り出すタイプなので…」

それは真面目な性格とか関係ないでしょう。働かずに部屋でゴロゴロしている毎日では離婚を切り出されても仕方ないような。

弁護人「奥さんに対してはどう思っていたの?」
被告人「本当のことが言えず、お金のやりくりでケンカになっていて、ダメ人間と分かってしまうのが…」
弁護人「お金は何に使っていたんですか?」
被告人「日々の生活費です。ギャンブルもお酒もタバコもやりませんので」
弁護人「月の生活費はいくらでした?」
被告人「習い事とかもあって、月40〜50万円くらいだったと思います」

この手の事件だと、超派手な暮らしをするケースも多いですが被告人は無趣味。生活費を稼ぐための結婚詐欺だったようです。

弁護人「二件目の事件、今年の事件も生活費のためだったのですか?」
被告人「はい。家賃の滞納とかがあって…裁判所に呼び出しもされていたので」
弁護人「奥さんや親族に正直に言えなかったですか?」
被告人「母とは疎遠になっていて…。大変な状況とは言えませんでした」
弁護人「そもそもマッチングアプリを利用していたのはなぜですか?」
被告人「子どもができる前から結婚生活に不満を抱いていまして、女性とやり取りする事で現実から逃げていました」
弁護人「被害者に対しては?」
被告人「アプリの中は良い人だらけで、私が登録しなければ幸せな人生を送っていたに違いない、私と出会ってなければ…と思っております」

そもそも既婚者なのに婚活アプリを利用しているのもどうなのだと。犯罪ではないのだろうけど。

弁護人「今年は働こうとしていたんですよね?」
被告人「はい。今年に入ったところで人間関係がない、配送の仕事を始めようと思って」
弁護人「再犯しないためにどうしますか?」
被告人「弱い人間で、イヤな事から逃げたりして仕事が続かなかったので…。妻にも相当迷惑掛けて、被害者にも弁済できていませんのでちゃんと働いて。働いて働いて、返していきます!」
弁護人「奥さんとお子さんに対してはどう思っていますか?」
被告人「ダメな夫で、ダメな父親と分かったと思いますので……素直になれずカッコつけてきたのが申し訳ないです」

無職を隠していたのはカッコつけていたという感覚だったのですね。確かに「ダメ」なんだけど、その一言で説明できるものなのかどうか。

再犯しない事や被害者への謝罪をして、弁護人の質問は終了。

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