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対談・「ソーシャルメディアの光と影」①

人によっては日常の中に密接に入り込んできている「ソーシャルメディア」その光と影の部分について2013年1月、佐賀県上峰町で開かれた「情報モラルシンポジウム」の中で株式会社ローカルメディアラボ代表取締役の牛島清豪氏と、佐賀県警サイバー犯罪対策室の藤井慎吾警部が対談した。それぞれの発言要旨を詳報する。

牛島清豪さん(株式会社ローカルメディアラボ代表取締役)
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■ ソーシャルメディア、「光」の側面

ソーシャルメディアは「誰もが簡単に情報発信者になれる」「双方向性がある」「人と人とがつながりやすい仕掛けがある」などの特徴を持つメディアだ。現在、あらゆるインターネットサービスが「ソーシャル」の要素を持ち始めている。ゲームやショッピングなどにもソーシャルの要素が入ってきている。なぜソーシャルが注目されているか。情報や目的、自分の感情の共有などのほか、「自己実現のためアマチュアが大活躍できる」という点も大きいと思う。

「アマチュアのミュージシャンが自分の曲をアップして音楽会社にスカウトされる」などの例はまさにそうだ。発信の機会があるということは、これまで発表の場がなかったアマチュアにとって大きな可能性をもたらす。「絆の再生」という要素もある。2005年くらいから総務省が旗振り役をして、薄れつつある地域の絆を復活できないか、と各地で実証実験を行った。その流れから、今もいくつかの地方は「地域SNS」と呼ばれるソーシャルメディアがあり、自治体などが運営、インフラ的に使う例もある(佐賀の場合はSNS「ひびの」)。また、ソーシャルメディアの最近の広がりは、スマートフォンの普及も大きい。スマホを買うと、はじめからフェイスブックアプリなどが搭載されていて、いつでもどこでもソーシャルメディアにアクセスしやすくなった。

■ 子どもとソーシャルメディア

ソーシャルメディアは自由に発信できる、というサービスではあるが、自由、ということの背中合わせに「自己責任」が生じる。自分で責任を取れるかがソーシャルを使う上で重要。子どもたちの世界ではある中学校だけ、あるいはあるクラスだけ流行っているソーシャルメディアというものもあったりする。ソーシャルというと、ついフェイスブックやmixiを思い浮かべてしまうが、子どもたちは我々大人が全く知らないサービスを使っていることもある。子どもたちは「反応がある」「気軽につながれる」といったことを喜びとしてこういうサービスを使っていく傾向にある。

■ソーシャルゲームとは

ソーシャルの上にゲームが追加され発展していったのが「ソーシャルゲーム」。国内ではあまり見かけないが、フェイスブックの中で遊ぶゲームというものもある。専用の端末がいらず、パソコンや携帯電話があれば簡単に始められるのが特徴。しかも無料で始められる。

しかし使い始めていくと、アイテムが欲しくなり、そこで課金がかかるという仕組みだ。「アメーバピグ」は、ネットの中に自分の分身を作って、その仮想現実の中で遊べる。分身は性別なども自由に決められるので、男性の格好をしていても実際には女の子ということもある。1千万人以上の会員がいると言われている。時には芸能人のアバターが出てくることもある。15歳以下のユーザーにはコミュニケーションが取れない仕様に。「出会い系」の要素があるからだ。

しかし自己申告であって、母親の個人情報を使って始めるというケースもあるので不完全だ。「GREE」も元々はソーシャルメディアで、そこからゲーム機能がついて増えてきた。はじめは無料だがアイテムを集めていくと課金が発生する。「射幸心(確率による利益を願う気持ち)」をあおると言われている。アイテムを集めると新たなレアアイテムが手に入る「コンプガチャ」と呼ばれる商法が、子どもの遊びから高額請求を生み、社会問題になったことは記憶に新しい。これに対して運営会社は月の利用料金に上限を設けるなどを始めている。

■「つぶやき」

ツイッターは、140字で気軽に発信でき、拡散力が強いメディアだ。芸能人や政治家の利用により国内で広まった。自治体や報道機関もアカウントを持ち、速報などで利用している。実名・顔出しのフェイスブックは何となく安心できるという雰囲気の中で広まった(実際には本人でないケースも)。日本人のプライバシーの考え方を変えたともいわれる。ツイッターもフェイスブックも、設定をしない限り、書き込んだ内容はネット上に広くひろがり誰でも見える。そのことにより就職が決まっていた学生が、内定取り消しになるなどの事態も起きている。フェイスブックは日本人のプライバシーの考え方を変えたといわれるが、このプライバシーの設定はかなり細かく、うまく使いこなすのは実はなかなか難しい面もある。

■「LINEの台頭」

無料通話から広がった「LINE」はすごい勢いで広がっている。先日、世界中で1億ユーザーを突破した、と発表された。世に出てから2年もまだたっておらず、フェイスブックよりもペースが速い。日本の業者のサイトが海外でこれだけの規模で使われているというのも珍しい。かわいい「スタンプ」で表現できることが特徴で、わりと高齢の人も使っている。おばあちゃんと孫が使っているというケースもあるという。

LINEは新着メッセージを「プッシュ」で送るのも特徴。いろいろと可能性のあるメディアだ。最近では「首相官邸」というアカウントもあり、速報を送る試みなどを行っている。昨年暮れの北朝鮮のミサイル発射の報道は「発射時刻」から10分くらいで首相官邸から速報が出た。その後、30分くらい経って各報道機関の速報が出たので、これはLINEの可能性がよく引き出された結果だと思う。

フェイスブックが「バーチャルグラフ」であるのに対して、「LINE」は「リアルグラフ」と言われる。グラフ、というのはソーシャルメディアの世界では「人のつながり」を指す。フェイスブックはネット上のつながりだが、LINEは携帯電話の電話帳からつながる相手を創り出すので「リアルグラフ」と呼ばれる。ということは比較的安全なメディアのようだが、いろいろと非公式なサービスもあり、不特定多数の人とつながる仕組みもあるため、出会い系サイトとしての側面が出てきているとの指摘もある。

情報化社会は広がる。ソーシャルメディアは、ライフラインとしての側面も持ち始めるだろう。ゲームだけでなく、家電、自動車にも搭載されていくかもしれない。デジタルネイティブと見られるこれからの子供たちは案外、大人が思うよりうまく使っていくのではないかと思う時もある。しかし自分の子どもなどを見ていても、やはり危なっかしいことをやってしまっている時もある。ネットの世界をうまく乗りこなすには、法の整備や利用機会の制限などの枠組みつくりも大事だが、やはり教育も大事だ。専門家の教育もいるかもしれない。そして社会教育の観点で、我々親がネット・デジタルについてもっともっと学ぶ機会を増やすことが大事なのではないだろうかと思う。そうした環境づくりのために、私も活動していきたい。

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