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特集:戦い済んで〜総裁選へのオタク的感想

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注目の自民党総裁選挙は、岸田文雄氏の圧勝に終わりました。本日10月1日には既に新しい自民党役員人事が固まり、注目は週明けの新内閣の組閣に移りつつあります。この先もいろいろあるでしょうが、「久しぶりに面白い政局を見た」という気がします。

「政局」とはこの世界における不思議な呼称でありまして、正しくは「権力闘争」と呼ぶべきなのでしょう。永田町内の秩序が変化する期間のことを指し、その都度、勝者と敗者が生まれ、新しい秩序が誕生します。これを何度も繰り返してきたお陰で、自民党は組織としての鮮度を保ってきたのでしょう。さて、わが国の政治体制はどんな風に変化しているのか。今回の総裁選を振り返りつつ、岸田新内閣の行方を予測してみましょう。

●”September Surprises”~投票結果を読み解く

それにしても先月は、驚くようなニュースが多かった。内外ともに、これだけ「サプライズ」が続くことも珍しい。

*9月3日、菅義偉首相が事実上の退陣表明
*9月15日、米英豪「AUKUS」が豪州向け原潜技術供与を表明。フランスが激怒。
*9月16日、中国商務省がTPPへの正式参加表明
*9月22日、今度は台湾がTPPへ正式参加表明
*9月20日、中国の恒大集団の経営危機で世界同時株安
*9月26日、ドイツ連邦下院選挙でSPDの得票がCDUを上回る
*9月27日、小室圭さんが帰国。眞子さまと結婚へ
*9月28日、人気グループ「嵐」の櫻井翔、相葉雅紀が同時に結婚を公表
*9月29日、自民党総裁選挙で岸田文雄氏が圧勝

溜池通信的には、海外ネタにも心惹かれるところなのだが、ここはやはり前号に引き続いて自民党総裁選挙を取り上げるべきであろう。

自民党総裁選挙においては、しばしば「意味深な数字」が登場し、「含蓄のある結果」がもたらされる。今回もその例に洩れなかった。1回目の投票は、なんと1票差で岸田文雄氏が河野太郎氏を上回った。さらに議員投票では、高市早苗氏が河野氏を上回るという番狂わせがあった。こんな結果は、狙って出せるものではあるまい。


事前の予想では、1回目投票では党員票に強い河野氏が1位となるものの、決選投票で岸田氏、高市氏の「2位3位連合」に敗れる、というものであった。この場合、新しい総裁は、議員票で党員票をひっくり返したという「後ろめたさ」を抱えることとなる。そのために2位の候補者を幹事長とする、といった「党内結束」のための妥協が図られるので、結果的に弱い政権が誕生する公算が高かった。

ところが岸田氏は「ハナ差」とはいえ、堂々の先行逃げ切り勝ちであった。これなら人事においても遠慮は不要となる。党役員人事においては、河野氏は党4役より一段下の広報委員長に指名された。これでは高市政調会長はもちろん、当選3回で抜擢された福田達夫総務会長よりも「格下の扱い」ということになる。

それでは、河野氏は決定的敗北を喫したのか。上の結果をよく見ると、決選投票では河野票が45票も増えている。議員心理としては、「勝ち馬に乗ろう」と1回目よりも票数が減っても不思議はなかったところだ。これは党内に、反・岸田勢力が一定数存在することの表れであろう。まだまだチャンスはある、と考えてよいのではないだろうか。

●センターレフトに「+アルファ」が必要だった

過去の自民党総裁選挙の歴史を振り返ると、2000年以降はほとんど清和会(右派)が首相を輩出してきた。それ以前は、経世会や宏池会(左派)の首相が多かった。その点、今回は河野氏でも岸田氏でも、久々に元宏池会の流れをくむセンターレフトの総裁が誕生することが当初から予想されていた。初の無派閥首相であった菅義偉氏は、その中間に位置する存在だったと言えるかもしれない。

20年周期で自民党内の振り子が動いていると考えると、なかなかに興味深い動きと言えるのではないだろうか


考えてみれば、海外でも左派政権の優勢が続いている。米国では昨年、共和党のトランプ大統領を破って民主党のバイデン政権が誕生した。9月26日に行われたドイツ連邦下院議会選挙では、長らく政権を担ってきたCDUの得票をSPDが上回った。9月20日のカナダ総選挙では、トルードー首相率いる自由党が保守党の追撃をかわして、かろうじて第1党の座を維持している。

コロナ下の政治は、どうしても「大きな政府」とならざるを得ない。そして感染を食い止めるためには、個人の自由をある程度犠牲にして、公共の安全を優先しなければならない。そんな中で、自民党も久々に党内左派にボールが回るということになる。

ただし安倍晋三元首相は、「このままではいけない」と感じたようである。自民党総裁選では、コアな保守層にアピールする新しいスターを作る必要があった。そこで高市氏の応援に動いたわけだが、彼女もまた高い説明能力を示してその期待に応えた。特にネット空間での高市ブームは大変なものだった。やはり自民党支持層の一部は、「防衛力強化、保守的な家族観、皇室重視」というタイプの候補者を求めていたのである。

実際のところ、センターレフトの総裁を担いで支持者を左に広げたとしても、「右派の支持」が弱いと自民党は選挙に勝てないのである。7月の東京都議会選挙、8月の横浜市長選挙において、自民党は支持層の6割しか固めることができなかった。逆に通常の選挙においては、「自民党支持層の8割を固めれば勝てる」と言われる。自民党は急いで、コアな保守層を活性化する必要があったのだ。

今回の総裁選において、安倍氏は3つの目標をすべて達成したと言える。すなわち、①新しい右派のスターを育成し、②盟友、岸田氏の総裁就任を実現し、③なおかつ党内にキングメーカーとしての存在感を示す、である。まさにパーフェクトゲームだが、これだけの成功を収めてしまうと、後で何らかの形で反動が出るようにも思える。

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