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自民党憲法改正案(4)

というわけでここまで、自民党の憲法改正案に対して加えられている批判が大概ダメであるという点を確認してきたのだが、では同案がいいものだと私が思っているかといえば、最初に書いた通りまったくそうではない。以下では、それは何故かという点を説明する。

まず第一に、これは趣味の問題ではあるが私は悪趣味だと思うのは、案19条の2(個人情報の不当取得の禁止)、案21条の2(国政上の行為に関する説明の責務)、案25条の2(環境保全の責務)、案25条の4(犯罪被害者等への配慮)、案29条2項付記(「知的財産権については、国民の知的想像力の向上に資するように配慮しなければならない」)という形で人権のカタログ(あるいは対応する政府の責務)をずらずらと拡張した部分である。

おそらく意図としては、改憲案が人権軽視ではない(むしろ「新しい人権」を取り込むことでは護憲派・人権派より「先進的」である)と主張することだと思うのだが、一方ではすでに法理上確立してきた権利(環境権・プライバシー権・肖像権)を含めておらず(個人情報保護(案19条の2)はプライバシーとは異なる問題)、他方でその内容が十分に安定してきたとはいえない問題(個人情報保護の範囲や知的財産権と他の人権との調整)を含めてしまっている。前者からいわゆる人権派がこの点を評価するかどうかは疑問であるし、改正の困難な硬性憲法で後者のような対応取ってあとで困らないかと懸念するわけ。要するにトンチンカンである。

これだけいろいろ並べているのに案24条2項で「婚姻は、両性の合意に基づいて成立」するとの文言を残しているのもどうかと思うところ。この文言(現24条1項では「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」)があるために日本では同性婚が憲法上認められないことになっているというのが通説だと思うが、これも(まあ当時のこととて仕方がないとは思うが)立法ミスの一つであり、地縁血縁共同体だの当事者外の力関係を婚姻の成立に影響させてはならないという趣旨の文言がうっかり同性婚を排除することになってしまったものだろう。結果的に日本では、同性婚が規範的に良いのか悪いのか・法制度上トラブルを起こさないかといった問題を考える以前の段階で議論が潰れてしまっている。別に「両当事者の合意」あるいは「当事者間の合意」と改正して憲法上の障害は除去し、しかし同性婚を認める立法を行なうかどうかは将来的な課題と言っておけばいいのにね(まあ保守派の人々は反対するのではあろうが)、とは思うわけだ。

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