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大学新聞の記事だって載せるコロラドの大手新聞


2回訪れた米・コロラド州デンバーには思い出がいくつかあります。マイルハイシティの印がある州議会議事堂前の階段に座ったこと、標高1マイルもあるので空気が薄くてゴルフボールがよく飛んだこと、牧場主に「ウチの牛はホルモンをタップリ与えてるので成育が早い」といわれてビビったこと、そして、すぐとなり町のオーロラの小学校を折り紙を持って訪ねたら、ちょうど授業で、原爆症からの回復を願って千羽鶴を降り続けた佐々木禎子のことを取り上げていて、子供たちに折り鶴を教えたら大喜びされたこと・・・・

そんなこともあって、なんとなくデンバーには思い入れがあって、2009年春に、何度もピュリッツァー賞に輝いたデンバーの有力紙「ロッキーマウンテンニュース(Rocky Mountain News=以下RMNと略)」が廃刊になったことに驚き、RMNの”残党”が、RMNのジャーナリズム精神を引き継ごうという動きがあることをこのブログでも何回か取り上げてきました。

そのうちの一つで、参加した記者が多かったINDenver Independentの試みは頓挫ましたが(サイトは残っています)、NHKBS1で放映された「新聞が消えた日」が取り上げたローラ・フランク(Laura Frank)記者が、その後、調査報道ニュースサイトI-NEWS, the Rocky Mountain Investigative News Network立ちあげていることも書きました。

その後がどうなっているのか気になっていましたが、最近のPoynterの記事が明らかにしてくれていました。デンバーでは、ジャーナリズムの新たなうねりが起きているというのです。

記事はかなり長文なので要約すると、RMNの記者たちの試みに中で、生き残ったのはI-NEWSのほかにローラと同様に調査報道記者だったアン・イムス(Ann Imse)記者によるColorado Public News(CPN)もあって、ともにコロラド州内の小規模な新聞に無料で記事を配信しているということです。

CPNは速報ニュースは「既存のメディアがやればよい」との立場から扱わず、掘り下げた記事のみを州内44の報道機関に提供しているそうです。I-Newsの配信先数については言及がありませんが、こちらは地元の公共放送であるPBSテレビとNPR系列のラジオ局とも提携しているのが特徴です。

廃刊前のRMNは、州内ローカル報道機関への記事提供という通信社的な機能を持っていましたが、それを、2つのNPO報道機関が補っているわけです。

そして、RMNのライバル紙だったDenver Postは、廃刊後のRMN読者の受け皿となっていて、41万部あまりもの部数を誇りますが、それでも、経営は苦しく、かっては240人ほどいた記者は170人ほどに減っているという報道もありました。

そこで、Post自身が、I-NewsやCPN、さらにネットメディアとして初のピュリッツァー賞を2010年に獲得、2011年にも連続受賞したProPublicaの記事を受け入れているだけでなく、これもデンバーのお隣にあるコロラド大ボールダー校のジャーナリズム・マスコミュニケーションプログラムの学生が作るトレーニング用のニュースサイトCU News Corpからも記事提供を受けています。

学生に記事製作の経験を積ませることを目的に昨年夏にスタートしたCU News Corpですが、コロラド州内の殺人事件の情報が得られる警察のHomicide Watch platformの認可も取ったということですから地元コミュニティの後押しもあるようです。

このように、RMNの廃刊後に顕著になってきた、新聞、テレビ、ラジオといった既存メディア、NPO報道機関、大学までが一緒になって協力しあう動きこそがあらたなうねりであり、コロラドの現代ジャーナリズムを磨いているとPoynterの記事は主張しているわけです。

また、その記事では言及していませんが、自社の記者による記事や大手通信社の配信記事だけにこだわらず、幾つもの提携先から広くコンテンツを集めるPostにおいては、ソーシャルメディア、とりわけTwitter活用のうねりも顕著です。

米国の報道機関別に所属記者のフォロワー数をランキングするmuckrack.comというサイトがありますが、そこでPostのページを見ると、NO.1のJones記者(スポーツ記者)は2万7千余りです。3位まで1万以上で、6位が4,200です。

ちなみに、日本の新聞で最もTwitter活用に熱心な朝日新聞ですと、公認アカウントが150ほどで、うち、記者個人のものはその半分ほどでしょうが、ガ島通信に載った昨年1月に始めた”第一期公認”記者15人のその後をチェックしてみると、1人だけフォロワー1万4802と1万を超えていますが、その他は800〜4000程度。

見た目の数字はそれほど差が無いようですが、部数にして朝日はPostの20倍ほどで、対象も日本全国なのに対し、Postの市場であるデンバー、オーロラ、ボールダー地区の人口は300万人ほどであることを考えると、相当な意識の差があるように見えます。

これはコロラドに限らず全米的な傾向でしょうが、この面でも、日本の新聞の出遅れが気になります。ちなみにニューヨーク・タイムズのランキングで1位のDavid Pogue記者(テクノロジー担当)のフォロワー数は146万、6位の記者でも43万です。

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