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【原発避難者から住まいを奪うな】避難者側が改めて国際人権法違反を指摘 急ぐ裁判官「次回期日で主張尽くせ」~〝東雲追い出し訴訟〟第7回口頭弁論

島県が原発事故で〝自主避難〟した4世帯を相手取り、国家公務員宿舎「東雲住宅」(東京都江東区)からの退去などを求めて提訴した問題で、うち1世帯に対する第7回口頭弁論が9月29日午前、福島地裁206号法廷(松川まゆみ裁判官)で行われた。被告(避難者)側代理人弁護士が第5準備書面を陳述。7月の前回期日に続き、国際人権法の観点から「2017年度末で住宅提供を打ち切ったのは国際法違反」、「福島県による明け渡し請求の代位行使は許されない」などと主張した。次回期日は11月10日11時半。被告側は来年にも国の担当者を証人として尋問したい意向だ。


【「住宅打ち切りは国際法違反」】

陳述された第5準備書面は、A4判21ページ。

 「日本政府の避難者に対する施策が、条約等によって認められる住民の健康に対する権利を侵害し、国内避難の指導原則に反していると繰り返し国際社会から懸念を表明されてきた」として、①2017年3月31日をもって災害救助法に基づく避難住宅の提供を打ち切った措置が国際法に違反する②国際人権規約違反が憲法13条、22条、25条等に違反する③国による所有権に基づく明け渡し請求は信義則に反して許されず、原告(福島県)による明け渡し請求の代位行使も許されない─の3点について主張している。

 まず、国連人権理事会の枠組みや普遍的定期的レビュー(UPR)の基本的な内容を説明。

 原発事故以降、2012年10月と2017年11月に行われた日本に対する審査を挙げ、2012年だけでなく2017年の審査後にもオーストリアやポルトガル、ドイツ、メキシコから区域外避難者に対する住宅支援の継続、国内避難に関する指導原則の適用、許容放射線量を年20ミリシーベルトから年1ミリシーベルトへ戻すことなどについて勧告を受けたことから「国際的に見れば、2017年の段階においても、避難の相当性が否定され、賠償を含めた支援が打ち切られるような状況ではなかった」と結論づけた。

 さらに、国連人権理事会特別報告者アナンド・グローバー氏の報告(2013年5月)、国連有害物質及び廃棄物の環境面での適切な管理及び廃棄の人権への影響に関する特別報告者バスクト・トゥンジャク氏の報告(2018年10月)の内容を列挙。

 「国際的に見れば、公衆被ばく線量限度年間1ミリシーベルトは、まさに『放射線の許容限度』であり、2017年の段階においても、被災地の住民らの健康に対する権利の侵害は継続していたということであり、そのような被災地からの避難者の避難の相当性が否定されてはならず、住宅提供を含めて避難者支援を打ち切ることが許される状況ではなかった」と改めて主張している。





被告・避難者側代理人弁護士が提出した第5準備書面の一部。国の帰還政策に基づく住宅提供打ち切りが国際人権法上も誤りであったなどと主張している

【国の担当者を尋問する意向】

 法廷でのやり取りは10分程度で終了。

 被告(避難者)側代理人の平松真二郎弁護士は「国際人権法に関して補充主張したいと考えている。それから、明け渡し請求権の代位行使に関して、原告(福島県)が第4準備書面で『国が代位行使を福島県に求めることは、県が明け渡し請求権を代位行使する要件として必要ではない』と言っているが、今回ケースで代位行使は認められないという主張も補充したい」と述べた。

 これに対し、松川裁判官は「いつまでに提出するのか」、「次回期日までに補充主張は出し尽くして欲しい」などと厳しい姿勢。補充主張は次回11月の期日までに提出されることになった。

 また、今後の立証方針について平松弁護士は「国(財務省)の担当者を法廷で尋問をしたい。然るべき時期に人証申請する」と意向を口にしたが、現段階では誰を尋問するのが適切か判断ができていない。しかし、松川裁判官は「人証申請をしていただかないと進まない」、「次回期日には人証申請していただくという理解でよろしいか」などと迫った。被告(避難者)側としてはまだ主張整理も終わっていない段階だが、「担当者氏名不詳」という形で11月の期日で裁判所に申請することになりそうだ。

 原告(福島県)の代理人を務める湯浅亮弁護士は「被告側の主張が出尽くした段階で反論する」と述べた。  閉廷後の囲み取材で、証人尋問について平松弁護士は「国(財務省)の担当者に出て来てもらって、明渡し目的で使用許可を出すことが不当であること、訴訟目的では使用許可など出せないというところを詰めたいと考えています。福島県が提出した書類では、使用目的が『避難者に貸すため』となっているので、その使用許可をもって福島県が明け渡し訴訟を起こして良いことにはならないことを立証したい」と述べた。

 松川裁判官は審理を急いでいる様子だが、証人の採否について平松弁護士は「採用するつもりは多分無いのでしょう」と語った。


閉廷後、囲み取材に応じた山川幸生弁護士(左)と平松真二郎弁護士。「国が前面に出たくないから福島県に代わりにやらせている。そんなことのために債権者代位権は使えない」などと述べた。

【「理屈に合わない代位行使」】

 また、山川幸生弁護士は、本来の所有者である国が前面に出ず、代わりに福島県が原告となって訴訟を起こしている構図を改めて批判した。

 「なぜ国が出て来ないで福島県なのか。国に『そちらでやってくださいよ』と言えばいいだけの話。結局、国が前面に出たくないから福島県に代わりにやらせている。そんなことのために債権者代位権は使えない。しかも、今回は厳密に言うと不動産賃貸借契約ではない。国が行政処分として使用許可を与えているケース。福島県は避難者に貸すために国から使用許可をもらっているわけだから。理屈に合わない債権者代位権の使い方をしている」

 「もし今回のような理屈が認められたら、なかなか退去してくれない時に行政が〝追い出し業者〟に使用許可を出して、代位行使でもって〝追い出し業者〟に明け渡し訴訟をさせるということができてしまう。これは大変なことですよ。行政が全く前面に出てこない形で行政財産に関する裁判ができることになっちゃう。何か理由があって退去できない人は行政と直接、争えないことになってしまう。場合によっては裁判を受ける権利の侵害にもなるかもしれない。避難者の問題にとどまらない、重大な判断をはらんでいる裁判なんです」  平松弁護士も「市営住宅などで家賃滞納で明け渡しを求めたいときに、山川弁護士が言ったように適当な〝追い出し業者〟に使用許可を出して、業者が裁判で追い出す。市は一切前面に出ないでやれてしまう。そういう先例になりかねない」と指摘した。

 なお、この日の弁論では12月、来年1月、3月の期日が予定として決められた。

(了)

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