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岩波新書「政治的思考」を読む

 岩波新書の新刊「政治的思考」(杉田敦)を読みました。政治というものを、熱くならずに距離をおいて眺めるような、ちょっと不思議な感じのする本でした。私たちは、あまりにも政治に多くを期待し過ぎていたのかもしれません。目次は以下の通りです。
第1章 決定~決めることが重要なのか
第2章 代表~なぜ、何のためにあるのか
第3章 討議~政治に正しさはあるか
第4章 権力~どこからやってくるのか
第5章 自由~権力をなくせばいいのか
第6章 社会~国家でも市場でもないのか
第7章 限界~政治が全面化してもよいのか
第8章 距離~政治にどう向き合うのか

 よく誤解されるのですが、政治でよく用いられる「多数決」は、唯一の真理や正義を決めるシステムではありません。多数が誤った判断をする場合は、いくらでもあります。何かについて多くの人間の意見が分かれるときに、とりあえず不満を最小にするために、仕方なく決めて前へ進めるための方法の一つであるに過ぎません。

 ですから政治的な決定に対して、異議のある者が抗議をするのは、当然の権利です。選挙で負けたから発言の権利がないなどと封じ込めるのは、原理的に誤りです。これは王政で権力が一人の個人に集中していても、民主的に成立した政権でも同じことです。ただし国民個人は、権力を承認し構成している当事者でもあるのです。そこで、この本で最も重要と思われる著者の言葉か出てきます。

 「権力を一方的に行使されているという考え方をやめ、権力過程の当事者であるという意識を持った時に、すなわち責任者はどこか遠くにいるのではなく、今ここにいると気づいた時に、権力のあり方を変えるための一歩がふみ出されるのである。」

 現代は政治的な選択肢の幅が、決して広くない時代です。政権は国民に「利益の配分」ではなく「負担の配分」を求めなければなりません。万人に人気のある政策を実行するのは、非常に難しいのです。こういうときに危険なのは、打倒すべは敵を国内または外国に求めて人気を集めようとするポピュリズムです。それらに流されず、国民の主権をつらぬくには、個々人の冷静な判断の力が必要なのです。

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