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知っておきたい敵基地攻撃論のこと

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久しぶりに敵基地攻撃論が取り沙汰されていますね。議論のすそ野が広がることは大歓迎です。

敵基地攻撃論は古くからある議論で、とりわけ近年、我が国で争点となってきた敵基地とは、北朝鮮の弾道ミサイル発射基地を指していました。北朝鮮がミサイルを発射しようとしたら、ミサイルおよび発射台を破壊してしまおうという構想です。つまり、敵基地攻撃論とは、対北朝鮮弾道ミサイル防衛政策の文脈上にあった議論1です。

他方、2021年の自民党総裁選でテーマとなっているのは、北朝鮮だけでなく中国のミサイル対処も視野に入っており、様変わりしています。米国のミサイルを日本に配備するという選択にまで踏み込んだ候補者もいらっしゃいます。

ただ、この件に関して言うと、誰が/日本(日米?)の/何に対して/いかなる手段で/いかなる目的で軍事行動をしようとしているのか、そして、日本は/誰の/何に対して/いかなる手段で/いかなる目的で軍事行動をしようとしているのか、というターゲッティングが不分明なまま話が進められています。

「伝統的な抑止理論や法理論」と「変化し続ける周辺国の軍事や兵器」という、縦と横の糸によって織り成されたものが、我が国を取り巻く安全保障環境です。外交で秩序の安定に努める一方で、北朝鮮と中国のミサイル脅威拡大を止められない現在、敵基地攻撃論は、革新的な機軸の議論ではないですし、優先順位はあれどもけっして古びた昭和の議論でもありません。

本稿では、敵基地攻撃論/策源地攻撃論について、議論の入り口となるよう、押さえておきたいところをざっくりとまとめてみることにします。

抑止とは?

抑止とは、相手に現状変更させないこと2を目的とし、抑止を機能させるためには抑止側の「意思」と「能力」が必要で、被抑止側に「伝達」され「認識」されて初めて効果を発揮します3。 厄介なことに、抑止が機能しているかどうかは証明できず4、抑止が破綻した時になってようやくそこにあった抑止が機能しなかったことが判明するので、平時において抑止力の増減を確認することはなおさら困難です。抑止側は、抑止の信憑性を保たねばならず、現状打破の試みに対し断固とした武力で対応する意思を挑戦側に正しく認識させるよう努めるのです。

北朝鮮が核実験やミサイル発射実験をたびたび行い、中国もまた東シナ海や南シナ海で軍事的挑発や恫喝を繰り返していますが、これらはエスカレーションラダーにおいては低位で、高位のエスカレーションラダーでの核抑止は破綻していません。中国や北朝鮮に対し、日米韓による「安定-不安定のパラドクス」5 はそれなりに北東アジアにおいて機能しているのです。

一方、抑止は心理的要因も大きいので、被抑止側が死に物狂いになって自らの脆弱性を第一撃によって相殺しようとする危機時には、効果はありません6。 また、そのような場合、相手の兵器システムに関して防衛的なものと攻撃的なものとを区別することが難しくなり、我が方の防衛的行動が相手には攻撃的行動として映りやすくなります7

直面している状況に対し、抑止を強要的に採用すれば危機を生む可能性があり、心理的側面にフォーカスして相手の脆弱性に応じ過ぎれば宥和を生んでしまいます。核抑止理論では、核抑止が失敗した場合の対応を準備することが、抑止を強化することになる8という主張があります。現実の政治において、核兵器は核兵器の使用のみを抑止する兵器に分類され、低烈度の抑止力として通常兵器の拡充が図られており、敵基地攻撃論はこのエリアで議論されるテーマとなります。

専守防衛とは?

敵基地攻撃論を議論する際、前提として確認すべきは、我が国の防衛政策が専守防衛を基調としているものだということです。

専守防衛とは先制攻撃をしないこと、というのが特徴のひとつに挙げられますが、これは専守防衛に限らず、一般的には当たり前の政策です。というのも、現在の国際法や国連憲章上、先制攻撃は原則侵略行為とされているためです。

同時に、国連憲章では例外的に武力行使を認めるケースがあり、それが国連による制裁と自衛権の行使です。自衛権行使の要件は、必要性、均衡性、違法性を満たしている場合とされます。しかし、専守防衛のもとでは、我が国は攻撃を受けて初めて防衛力を行使し、必要があっても相手の基地を攻撃できないという極端な政策を採用しています。

なお、専守防衛は戦略的には守勢ですが、相手からの武力攻撃を受けて反撃する段階では、自衛のための武力を当然行使します。つまり、戦術的には攻勢主義をとることは可能です。

盾と矛

専守防衛は単独では難しい戦略ですが、仲間がいるとなると話は別です。実際、自衛隊(盾)と在日米軍(矛)、さらには米軍増援部隊の戦力をあわせた日米同盟こそが、専守防衛を成立させています9

主権国家として日本が独自に行うことは、こうした防衛方針のもとで米軍が来援するまでの限定的な時間を耐えきることであり、単独で大規模紛争を戦い抜くことではありません10

敵にとって、日本への侵攻は時間との戦いになります。なぜなら、せっかく電撃作戦が成功して日本領内に橋頭堡を築いたとしても、そこでまごまごしているうちに日米安保に基づいて米軍が介入してくるからです。

2015年に策定された現在のガイドライン11において、米軍は、自衛隊を支援・補完するため、打撃力の使用を伴う作戦を実施することができます。米軍の作戦に対し、自衛隊は、必要に応じて支援を行うことができます。加えて、米国は、その核戦力を含むあらゆる種類の能力を通じ、日本に対して拡大抑止を提供する12ことになっており、通常戦力も当然該当します。

法理論上は?

敵基地攻撃を考える際、分類として⑴予防攻撃なのか、⑵先制的自衛攻撃なのか、それとも⑶反撃なのかというところが重要です13。 まず、⑴予防攻撃は、日本国憲法では違反とされています。次に、⑵先制的自衛攻撃に関しては、差し迫った脅威に対する先制的武力行使は広く認められています。我が国の政府答弁でも法理論的には可能であるとの解釈もありますが、依然として多くの異論が唱えられています14 15 16。 最後に、我が国がミサイルの第一撃を受けた後、その発射基地に対する⑶反撃は、個別的自衛権が発動するため憲法上も国際法上も認められています。

しかし、この議論はあくまで法理論的なものでしかありません。なぜなら、その裏付けとなる能力を自衛隊は保持していないからです。昭和51年度版の防衛白書17において、ICBMだけでなくIRBM、長距離爆撃機、攻撃型航空母艦等は保有しないということが明記されました。つまり、日本は敵地を攻撃し得る兵器を持つ意思を否定しており、法理論上は可能である敵地攻撃を能力的に制限しているのです。

なお、敵が攻撃準備に着手した証拠を特定することは難しいため、我が国が先制的自衛措置に基づく敵基地攻撃を実行する国内政治環境は整わないと愚考します。それゆえ、我が国における敵基地攻撃論は、国連憲章第51条にのっとった反撃措置として検討されていくと思われます。攻撃を受けた後の反撃であるならば、国際法にも日本国憲法にも適合するという解釈が主流ですので、議論としては前進するかもしれません。

また、敵基地攻撃能力保有議論を難しくしている原因に、自衛権の発動要件18も挙げられます。3つの発動要件のひとつとして、急迫不正の侵害を排除するために「他に適当な手段がない」という一条があり、我が国がすでに保有しているミサイル防衛や日米同盟における米軍という「適当な手段」との整合性が争点となるかもしれません。

「敵基地」は動く

法理論上の問題や周辺国への政治的配慮、お財布事情など、いくつかのハードルを乗り越えたとしても、ミサイル対処において敵基地攻撃は簡単な任務ではありません。というのも、攻撃目標である敵基地が移動するからです。

従来のミサイル発射基地というのは、下写真のようなイメージを抱きがちです。

[画像をブログで見る]
(北朝鮮・東倉里の固定ミサイル発射場。Wipipediaより)

しかし、このような大型固定施設から運用される中距離ミサイルはほとんどありません。北朝鮮や中国が保有する弾道ミサイルのうち、日本攻撃に用いられる可能性が高いものも準中距離弾道ミサイルのノドンや北極星2号、DF-21などです。他にもスカッドERや巡航ミサイルといったミサイルもありますが、いずれもTEL(Transporter Erector Launcher vehicle:輸送式起立発射機)と呼ばれる大型トレーラー程度の大きさの移動式発射機に搭載され、そこから発射されます。敵基地攻撃論において攻撃しようとしているのは、この移動可能なTELというわけです。

[画像をブログで見る]
(スカッドを載せて起立したTEL。Wikimediaより。)

TELは、舗装道路であれば時速60kmほどで移動します。仮にTELを発見して攻撃するまでに1時間かかるとすると、TELは少なくとも数十km移動しています。特定した座標を即座に精密攻撃することが要求されます。もちろん、発射側は発射位置の特定をさせないように、車両の隠ぺいやカムフラージュ、偽物を配備するなどといった欺瞞を仕掛けてきますから、これらを見破らなければなりません。

こうしたことから、「敵基地攻撃」ではなく、「敵策源地攻撃」という語が用いられることもあります。基地というと固定された建造物を想像してしまうので、策源地という方が確かに適切かもしれないですね。とはいえ、本稿では便宜上、敵基地攻撃を使用します。

移動目標攻撃は難しい

1991年の湾岸戦争において、多国籍軍の航空機ユニットの出撃回数(ソーティ)は総計1,459に達しました。そのうちスカッド関連施設に対する「スカッド・ハンティング」は、215ソーティ。50%が固定施設へ、30%がミサイル製造工場などインフラへ、15%が隠匿されていないTELへのものでした19

スカッド・ハンティングによってイラクの弾道ミサイル戦力は確かに衰えましたが、多国籍軍がこれだけの物量を投じても、イラクのスカッド部隊は戦争終了の数時間前まで火を噴き続けました。湾岸戦争後のアセスメントとして、航空優勢+地上の特殊作戦部隊の支援+比較的単純な砂漠の環境など、敵基地攻撃に都合の良い条件がそろっていても、固定翼機によるスカッド・ハンティングに効果はなかったと結論付けられています20

その後、湾岸戦争の経験を踏まえて様々なシステムが革新された結果、2003年のイラク戦争ではTEL狩りの実績が目覚ましく向上します。開戦前、イラクが持っていた約80基のTELは、空爆によって46基が破壊されました21。湾岸戦争によってイラク空軍が受けたダメージや経済制裁による戦力の低下も加味しなければなりませんが、米軍のTEL狩り能力がアップしたという見方が妥当です。

イラクは北朝鮮の約3.5倍の面積を持っていますが、TELを隠すには北朝鮮の方が適した地形を持っています。砂漠が広がるイラクとは違って、北朝鮮には山や谷によるセンサーの死角となる場所が多いからです。しかも、ノドンだけでもTELは50基22で、韓国を巻き込んだ有事シナリオとなるとスカッド・シリーズの100基近いTELも含まれます。

中国ともなると、面積はイラクの約22倍で、米センサー群の効果を低下させる能力、地勢の複雑さ、保有するTELの数は短距離・準中距離弾道ミサイルと陸上発射巡航ミサイルを足したものが約500基、どれをとってももはやイラクや北朝鮮の比ではありません。

固定施設は硬い

無論、敵基地攻撃論全体における攻撃目標は、TELにとどまるものではありません。滑走路、航空機や爆撃機の格納庫や掩体壕、弾薬庫、燃料貯蔵庫、レーダー施設、通信施設、指揮統制システムなど23も含まれます。ただ、我が方の被害を局限するために固定目標を攻撃することは無駄ではありませんが、限定的なリソースをそこに注ぎ込むのに合理的なほど効果を得られるのかどうかは分かりません。

もとより、上述の目標を特定するには、米国の情報・監視・偵察(ISR)能力でも不十分ですし、滑走路やバンカーは頑丈に補強された抗たん化目標であるため、通常の巡航ミサイルでは破壊できません。2017年シリアにおいて、59発のトマホークがシリアの航空機、抗たん化航空機用シェルター、石油・兵站貯蔵庫、弾薬補給バンカー、防空システムやレーダーを攻撃しましたが、数時間後にシリア空軍は作戦飛行を再開しています24

勝つための方針

戦争は政治の延長ですから、戦いの究極目的は、こちらの政治目標を敵に強要すること25です。敵兵を殺したり、敵部隊を全滅させたりするのは、あくまでも政治的勝利を得るための手段でしかありません。敵兵を1人も傷つけることなく勝つこともあれば、戦場の敵を全滅させても負けることもあるわけです。

ここで必要になってくるのが、セオリー・オブ・ビクトリー(Theory Of Victory: TOV)26です。抑止が破綻して実際に戦争が発生した時、どのように戦ってどのように勝つかを示す指針27を最初に明確にしなければなりません。この指針に従って、開発・配備するべき兵器システムの検討が始まります。言うまでもなく、日本と米国とでは地理的・財政的・法的制約が大きく異なるため、両国の採用するハードウェアは同じものとは限りません。

なお、本稿では大規模熱核戦争のシナリオは取り扱わず、下記の有事シナリオは通常兵器による紛争を想定します28

対北朝鮮

北朝鮮の政治目標は、最大の主敵である米国を制圧し、屈服させることに焦点を合わせています*29。とはいえ、「屈服させる」というのは修辞的なものでしょう。同じ日の金正恩委員長の演説内で、米国が対北敵視政策を撤回することを条件に、新しい米朝関係が樹立30されるかもしれないとの言及がある通り、現実的には、米国と核戦力において軍事的均衡を確立することを目標にしていると考えられます31

北朝鮮の政治目標を考慮すると、朝鮮半島で高烈度の大規模紛争が早晩生起する蓋然性は低いと考えられますが、仮に抑止が破綻した場合、通常戦力で米韓に劣る北朝鮮は速戦即決を目指します。米韓の航空優勢を麻痺させるべく、短距離~中距離弾道ミサイルによって日米韓の航空基地を集中的に攻撃します。同時に、軍事境界線から近いソウルには、境界線沿いに配備した数百門の長距離砲、ロケット戦力で飽和攻撃を加えるでしょう。

日米韓のTOVは、これらの作戦シーケンスの鎖を切ることに向けられます。まず、先制的自衛攻撃か第一撃を受けた後に反撃するか、という選択が必要です。先制的自衛措置として敵基地攻撃を行う場合、在韓米軍の朝鮮半島有事における作戦計画「5015」32が参考になります。それによると、北朝鮮による弾道ミサイル発射の兆候をつかんだ後、30分以内に北朝鮮内にあるミサイル発射拠点や司令部、レーダー基地、軍事境界線沿いに展開している多連装ロケット砲など約700カ所の戦略目標を攻撃、巡航ミサイルや長距離爆撃機による空爆、無人機などによる攻撃33を想定しているとのことです。

次に、反撃措置の場合です。第一撃への対処能力はミサイル防衛システムしかないので、ミサイル防衛によって損害を限定しつつ、カウンターフォース(対兵力攻撃)を図ることになります。ここでのTOVは、反撃のための航空優勢を維持することですから、米軍は外交交渉が決裂しないうちに空母を含む米航空戦力を複数か所に分散させます。結果的に航空戦力の損耗を局限できれば、その時点でシーケンスのキルチェーンは成功です。

航空戦力の保護に失敗した場合、ミサイルの再装填による第二波と地上戦力の南進を阻止することがTOVとなりますから、作戦計画5015と同様の標的を米海軍の巡航ミサイルを主力として無力化することを目指しますが、トマホークのような巡航ミサイルでは、滑走路やバンカーを十分に破壊することはできません。我が国の敵基地攻撃の議論もここに位置づけられます

対中国

中国の政治目標は、建国100周年にあたる2049年までに「中華民族の偉大な復興」の達成を追及することです。その政策には、台湾独立の反対と海洋主権の保護が含まれます34

敵基地攻撃論において、我が国が想定するべきシナリオは、おそらく台湾有事における反撃措置でしょう。東シナ海のガス田や尖閣諸島「程度の」問題で、中国が弾道ミサイル戦力を動員する蓋然性は低いでしょう。同様に、それ以上のエスカレーションが起きうる事態において、我が国が中国に先制的自衛措置として敵基地攻撃を行う蓋然性もまた極めて低いと考えられます。

台湾有事において、人民解放軍は、台湾に加えて在日米軍基地や日本の航空基地、レーダーサイト、ミサイル、宇宙アセット、通信施設などの防空システム、港湾施設に対するミサイル攻撃や精密航空爆撃を通じて、台湾の防衛力を低下させ、台湾の指導部を無力化する35と想定されています。さらに、島嶼上陸作戦の戦力も整備中で、兵站、空・海支援、電子戦との連動した作戦に基づく複雑な行動計画を検討しているとされます。

したがって、日米のTOVは、これらの作戦シーケンスの鎖を切ることに向けられます。まず、中国のミサイル(巡航ミサイル+短~準中距離弾道ミサイル)による第一撃を無力化するのは難しく、対処能力はミサイル防衛システムしかありません。よって、第一撃を受けつつも中国の継戦能力を絶つ、または継戦意思を削ぐことが、次善策となります36

中国の作戦シーケンスの鎖のひとつが海上・航空優勢確保なので、まずは、第一撃による損耗を局限するために米海空戦力を複数か所に分散させておきます。米海軍はすでに武器分散コンセプト(Distributed Lethality)37構想のもと、各種水上艦戦力すべてに攻撃能力を付与し、地理的に分散配置、必要な時に必要な場所へ最適な部隊を構成し始めています。結果的に十分な海空戦力を保護できれば、シーケンスのキルチェーンは成功です。

仮に、第一撃後の日米海空戦力の損耗率が高ければ、中国大陸の航空基地群を無力化してシーケンスを断つことがTOVとなりますが、上述の通り、トマホークのような巡航ミサイルでは、滑走路やバンカーを十分に破壊することはできません。

中距離核戦力(INF)全廃条約の影響38で、現在の米国は中国の航空基地を無力化するための中距離ミサイルを保有しておらず、日本も保有していませんから、このシナリオにおいて、日米は人民解放軍による航空優勢確立を阻止することができません。日本が敵基地攻撃システムを持つのか、米国による中距離ミサイル配備構想を進めるのか、という議論に至ります。

航空優勢と同時に考慮するべきTOVは、人民解放軍による海上優勢の阻止です。これは、米海軍の既存の海・空発射型巡航ミサイルでは実行できないミッションで、米国の既存の対艦ミサイルと日本の対艦攻撃能力との連携による飽和攻撃を指向します。12式地対艦誘導弾能力向上型やは島嶼防衛用新対艦誘導弾の研究・開発は、このシナリオにおいて威力を発揮することになります39

北朝鮮、中国のどちらにとっても、日米韓台のキルチェーンの信頼性が向上し、エスカレーションの先に勝機が見えなければ、両国から第一撃を仕掛けることの誘因性が減少し、武力行使を決断する閾値は高くなります40

ミサイル防衛システム

限られたリソースの中で盾も矛もシームレスにそろえようというのは不可能です。軍事的問題の扱われ方は軍事的に決まるわけではなく、政治的・経済的な論理にも大きく左右される41ことを踏まえると、我が国が強化を進めている総合ミサイル防空(IAMD、米国では統合ミサイル防衛)は、専守防衛を掲げて各種の制約を受ける我が国の政治目標をバランスよく満たすことのできる優秀なシステムです。

ミサイル防衛の目的は、⑴敵が数発の弾道ミサイルによって「安易な脅し(cheap-shot blackmail)」を仕掛けようとするのを抑止すること、⑵本気で攻撃を仕掛けるようとするならば、ミサイル防衛を突破するために大規模攻撃を余儀なくさせ、その結果として米国から大規模報復を受ける信憑性を高めること、⑶抑止が失敗した場合には、相手のミサイルを可能な限り迎撃して我が方の損害を限定すること42です。複雑な状況を織り込んだ作戦計画を攻撃側に強いる(コスト賦課)ことが、抑止の信頼性を高めることになります43

核保有国同士による大国間競争観のもとでの核抑止理論において、ミサイル防衛はいわゆる相互確証破壊(MAD)を損ねるシステムとして忌避されます。核使用された後の世界を計算可能なものにし、「勝機に乗じた戦争」の蓋然性を高めてしまうという理由からです。拙ブログ管理人は、中国と北朝鮮の核戦力が対米核抑止においてはまだ限界効用逓減に達していない上、中距離ミサイル戦力で米中の格差が大きく、米ソ/米ロの核抑止理論がそのまま適用し得る地域ではないという愚見から、ミサイル防衛を支持しています。

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