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厚労省分割と省庁再編に必要なこと

自民党総裁選で、厚労省分割など省庁再編が話題に上がっている。僕が厚労省に入ったのは2001年4月。旧厚生省と旧労働省が合併したすぐ後に入省している。旧厚生あるいは旧労働と両方の部局を経験してきた。2019年9月末に退官するまでの間にも、何度か分割論は浮上しては立ち消えた。そのたびに、自分自身も分割について、自分事として考えてきた問題だ。

ただ、今はもう厚労省の職員ではないので、自分事とは言えない問題になっている。政府全体として対応力をどう強化していくかという視点から、この問題を見つめている。

厚労省分割以外にも、健康危機管理庁やこども庁など、省庁再編に関するテーマが総裁選でも話題となっている。なんとなく、新しい省庁が出来たり、分割したりすると、今うまくいかないことが進むようになるようなイメージを持つ方も多いのではないだろうか。

僕も、省庁の枠組みは固定的にとらえる必要は全くなく、時代に応じて適切な枠組みにしていくことは当然と思う。

一方で、霞が関の業務、意思決定プロセス、組織のあり方については、多くの方には見えにくいだろうとも思う。そうしたことを加味しながら、どういうことをちゃんと考えていかないといけないのか、お話してみたい。

今般、特に話題になっているのは、厚生労働省の分割だ。正直、元々忙しい厚労省はコロナ対応で体制的にも限界の状態が続いていると感じる。コロナ以外にも厚生労働分野は政策課題が多く、対応力の強化が必要なのは間違いない。しかし、単なる分割は解決策にはなりえない。

大事なことは、どういう政策課題にどのような意思決定プロセスを作るか、適切に政策の立案と執行の能力を確保する組織体制をどうつくるかという具体的なビジョンとプランだ。そうした仕事がうまく進むための具体的な組織構想なく、単なる分割を進めるのであれば、むしろマイナスとしか言いようがない。

まずもって、組織の再編には多大な労力がかかるし、組織が機能するまでに数年はかかる。そして、再編後の絵姿を考えると管理部門が2つできるので、余計に人員も必要になる。分割すると、コロナなどの有事の対応が必要になった時に省内で柔軟に融通できる職員の母数も少なくなる。例えば、厚労省のコロナ対応には労働部門の職員も迅速に多数応援に入っているが、これは次官をトップとした管理部門の差配により迅速にできるからだ。別の省庁になれば、事務次官や大臣の意思決定だけでは、柔軟な配置転換ができなくなる。ただし、大臣の守備範囲を狭くして負担を軽減する効果はある。分割そのものは、人員を増やさなければ省庁の対応力をますます低下させることになることに留意が必要だ。コロナ禍では、政治が意思決定しても現場がなかなか動かないという課題が露呈したのだから、大臣が身軽になるだけでなく、職員がしっかりついてこれる体制をよく考えないといけない。

また、短期的には、マンパワーと業務量のバランスが極端に悪く、限界まで働いている今の厚労省に、組織分割の仕事をプラスすれば、コロナ対応をはじめとした重要課題の対応は不可能になる。検討するにしても、タイミングもよく考える必要がある。

さらには、省庁再編は万能ではなく、組織の枠を変えれば、別の縦割りが発生することにも留意が必要だ。例えば、こども庁にしても(全面的に反対しているわけではないが)、新たな縦割りをつくることにも留意が必要だ。こども庁が何を担当するのか見えないが、就学前の教育を文科省からこども庁に移管すれば、小学校以降の教育は別の省の担当になる。障害児の政策が厚労省に残るのでれば、障害児とそれ以外のこどもが別の省の担当になるし、障害児の政策をこども庁に移管すれば、障害児の政策と障害者の政策が別の省の担当になる。、母子保健をこども庁に移管し、産科医療・小児科医療を厚労省に残すなら、これも新たな縦割りが発生する。

そうしたコストやマイナス面と、再編によるメリットを比較し、論理的に検討を進めることが必要だ。

ある政策課題に必要なマンパワーを質・量ともに定義して、それを政府内・民間を含めて確保することが必要だ。肥大化を防ぐためには、セットで不要な業務プロセスを減らして効率的な業務運営を確保することも必須だし、事業の廃止・縮小の検討も考えないといけない。そもそも、省庁の枠組みを超えて柔軟に閣僚を任命したり、業務の多い省に人員配置を手厚くしたりする仕組みの創設も必要で、再編の前にでもやればよい。

そうした総合的な検討がなければ、これまで幾度となく話題に上るも実現しなかった厚労省の分割や省庁再編は、うまくいかないだろう。分割ありきで検討を進めるのであれば、政策課題の対応力が強化され、国民生活を支える力が向上することにはつながらない。

政策の立案と執行の能力を向上する組織をどうつくっていくのか、新たな縦割り問題にどう対応するのか、そうした議論が真剣に進むのか、よくウォッチしていきたい。

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