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順当トップ交代人事では払拭できぬ三菱電機の"悪玉"企業風土とは

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トップ交代後にナンバー2登用 路線踏襲に疑問

三菱電機が、鉄道用空調装置などを巡る検査不正の責任をとって辞任した杉山武史社長の後任として、漆間啓専務執行役員を充てる人事を発表し話題になっています。

話題の争点は、長年にわたる組織的な不正検査問題で引責辞任したトップの後任が、その側近であったナンバー2でいいのか、というものです。

三菱電機は今回のトップ人事に関して、「従来の、前任トップが後任を推薦するやり方を改め、社外取締役を含めた指名委員会主導で議論を重ねて決定した」と選出経緯を説明しています。

杉山社長の辞任から約1か月をかけた人選の結論が、なぜ従来路線踏襲なのか。三菱電機という企業にはびこるそこはかとない闇の深さを感じます。

相次ぐ不祥事は三菱電機の企業風土に起因?

Getty Images

三菱電機の不祥事は、鉄道用空調装置およびブレーキ用空気圧縮機などの製品検査において、納品先が指定した検査をおこなわず自社仕様の検査のみを実施して、指定検査を経たかのように偽装していた品質管理不正です。

この不祥事での最大の問題点は、不正が1980年代から35年以上にわたっておこなわれてきたこと。加えて、同社ではここ数年、半導体デバイス部門での製品検査不正やビルシステム部門での仕様不適合ゴム製品出荷など、他部門で不祥事が相次いでいながらなお不正が続いていたという事実です。

さらに今般、不祥事発覚による杉山社長辞任後に、業務用空調機器でも法令で検査を義務づけられている製品も含め、検査機器の故障による約7年間にわたる検査不備が見つかっています。

その総数4万台。同社の不正は底なし沼状態です。いずれにせよ、組織の自浄作用が全く働いていないという、お粗末すぎる企業統治の実態が明確になったと言えます。

不正が35年もの長年にわたって繰り返されていたこと、多数の部門で同じように不正がおこなわれていたこと、過去に社内で不正が明らかになるという機会を得ながら他部門での不正が正されることがなかったこと、から考えると、個々の不正に個別の原因があるという類のものではなく、すべては三菱電機の企業風土に起因するものであると言えるでしょう。

なぜ三菱財閥の古き企業風土が"悪玉"化してしまったのか

では、三菱電機の企業風土とはいかなるものであるのか。端から見ても分かる最大の特徴を申し上げれば、三菱グループという旧財閥系企業グループ特有の、よく言えば伝統を大切にする、悪く言えば保守的さ故に長い歴史の中で硬直さを増してきた企業風土であると言えるでしょう。

「企業風土は善玉菌にも悪玉菌にもなりうる」とは、『"社風"の正体』の著者である、元日本銀行審議役・植村修一氏の言葉です。今回、不祥事の温床としての企業風土を探る観点からは当然、悪玉に変質した古き企業風土を疑ってみる必要があるでしょう。

旧財閥系企業グループは戦前において、国と太いパイプをもって産業の根幹を支えると同時に、優先的に国家的プロジェクトを割り振られるなどの特権的な地位を得ていました。中でも"元祖政商"である岩崎弥太郎創業の三菱財閥は、特に大きな力を持っていました。

戦後の財閥解体によって財閥自体は消滅したものの、旧三菱財閥企業はその後も「金曜会」と称してグループとしてのつながりを堅持しており、「組織の三菱」と評されるその文化は構成企業の組織風土として脈々と受け継がれていると言えます。

不祥事にみられる三菱電機の驕った姿勢での長年の手抜きは、歴史的な国との近しい関係による特権階級意識が作り出した「甘え」であり、これこそが“悪玉"的財閥企業風土であると考えます。

三菱自動車のリコール隠し問題後も風土刷新には至らず

Getty Images

三菱グループにはこれまでにも、同じように不祥事で出直しを迫られた企業があります。2000年、2004年の二度にわたるリコール隠し事件と、2016年の燃費偽装事件で社会的糾弾を受けた三菱自動車工業です。

リコール隠し事件の際には、グループの中核企業である三菱重工業が三菱自動車を関連会社化して企業再建に乗り出したものの、結局同じ三菱文化の下では企業風土を刷新するような抜本的な更生には至らず、燃費偽装発覚後にグループ外企業である日産自動車の傘下入りをすることで、更生の道を歩むことになりました。

この例をみても分かるように、旧財閥系である「三菱」系企業で企業風土が悪玉化してしまった場合、社内でトップの首を挿げ替えや同グループ内で経営権の委譲をおこなった程度では、簡単には修正が効くようなものではないのです。

一度身に付いた悪しき企業風土の厄介さは、半端ではありません。今回の三菱電機のトップ交代は、由々しき不祥事をトップと一緒に見過ごしてきたナンバー2へのバトンタッチという至って平時仕様の人事であり、一部から強い疑問符を投げかけられるのは至極あたり前のことと言えるでしょう。

冒頭で申し上げた、「社外取締役を含めた指名委員会主導で議論を重ねて決定した」という指名委員会の後任選びについても、5名の委員のうち委員長を務める1名は旧財閥的人選を感じさせる元官僚トップ、1名は社内役員、1名は三菱グループ中核企業元トップと、実質旧三菱財閥の身内とも言えるメンバーがその過半を占めているのです。

果たしてこの委員構成の指名委員会で、悪しき企業風土の抜本改革を本気で先導する後任トップの人選ができると言えるでしょうか。

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