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北朝鮮ミサイル発射のたび語られる「振り向いてほしい論」

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北朝鮮のミサイル発射のニュースを見るソウル市民(2021年9月15日 韓国・ソウル) 出典:Photo by Chung Sung-Jun/Getty Images

【まとめ】

北朝鮮、長距離巡航ミサイルと偏心軌道短距離弾道ミサイルを発射。

・報道で、またもや「振り向いてほしい論」がまことしやかに語られた。

・すぐさま「振り向いてほしい論」に向かうのは「北朝鮮分析の貧困」を示している。

北朝鮮は9月11-12日、長距離巡航ミサイルの発射を行ったと発表し、15日には偏心軌道の短距離弾道ミサイルの発射も行った。3月に4日の間を置いて「巡航ミサイル2発」(3月21日)と「弾道ミサイル2発」(3月25日)の発射実験を相次いで実施してから6カ月ぶりだ。

1、北朝鮮巡航ミサイル発射は失敗?

巡航ミサイルはジェット・エンジンで推進するミサイルで、速度は遅いが概して命中精度に優れている。低速なので発見できれば撃ち落とすのは比較的容易だが、通常、きわめて低い高度を進むので、目前に現れるまでレーダーに探知されにくい。しかし、内陸部の攻撃には正確な3D地図情報がプログラム化されていなければならず、この点が保証されなければは攻撃に失敗する。それゆえ自国で1500km飛び回ったからと言って他国に対しても同様の精度が保てる保証はない。ただ海岸線近くの都市の攻撃や対艦攻撃任務には3D地図情報の精密度は関係ない。

一方、弾道ミサイルはロケット推進で高速で打ち上げられ、その勢いの慣性で飛んで標的を攻撃する。高い高度まで上がるので、遠くからでもレーダーで捕捉・追尾されやすいが、今回の短距離弾道ミサイルは、偏心軌道で高度60kmという迎撃ミサイルの隙間を狙って攻撃してくるので防御には困難が伴う。それも今回は従来の車両式ではなく、初めて列車から発射し、奇襲性を高めた。

しかし、偏心軌道だからと言って妖怪変化のように自由に飛び回れるわけではない。このロケットにも一定の制約性がある。撃墜が不可能なものではない。また北朝鮮の鉄道は時速40km以上出せないほど劣化している。北朝鮮が放映した映像だけを見て過度に恐怖を煽れば、北朝鮮の罠にハマる事になる。

国連安全保障理事会は北朝鮮の「弾道ミサイル技術を利用したいかなる発射」も禁止している。したがって、巡航ミサイルの発射は国連安保理決議違反ではないが、短距離弾道ミサイルの発射は種類を問わず国連安保理決議違反に当たる。だが、トランプ政権時代は、短距離弾道ミサイルの発射で国連安保理の招集を求めたことはなかった。

バイデン政権は今回、国連安保理の招集を行ったが、非難決議を出せなかった。中・ロが反対したからとしているが、対話へつなげたいために本気で非難する気がなかったと見ることもできる。

今回の発射について日本政府は強く非難したが、「巡航ミサイルの発射は、失敗だったのでは」との見解も示している。たしかに北朝鮮はこれまで発表していた命中写真を発表していない。

▲写真 北朝鮮のミサイルのファイル画像を見るソウル市民(2021年9月15日 韓国・ソウル駅) 出典:Photo by Chung Sung-Jun / Getty Images

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