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9月にバラエティが続々終了 最終回を民放各局が注視する理由

『有吉反省会』は9月で終了

 この秋、多くのバラエティ番組が終了する。その中には、長らく視聴者に親しまれたものも少なくない。すでに最終回を迎えネット上で惜しむ声が上がった番組もあるが、民放各局はこうした最終回放送前後のネットの反応を注視しているという。その理由とは? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

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 民放各局の番組改編会見が終了し、新番組に関するニュースと、それを見た人々のコメントがネット上をにぎわせました。ただ今秋の改編で、新番組と同等レベルで注目を集めていたのが、9月で終了するバラエティ。長年親しまれてきた番組や、希少な視聴者参加番組などが多数含まれていたことに賛否の声が飛び交いました。

 9月で終了する主な番組を挙げていくと、日本テレビ系が『有吉反省会』『おしゃれイズム』『幸せ!ボンビーガール』『アナザースカイ』『ウチのガヤがすみません!』。テレビ朝日系が『あいつ今何してる?』『日本人の3割しか知らないこと くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館』『爆笑問題&霜降り明星のシンパイ賞!!』『パネルクイズ アタック25』(ABC)。TBS系が『ぴったんこカン・カン』『爆報!THEフライデー』『教えてもらう前と後』(MBS)。フジテレビ系が『超逆境クイズバトル!!99人の壁』(特番に移行)などがあります。

 実際、早くも14日に『幸せ!ボンビーガール』、16日に『ハナタカ!優越館』の最終回が放送されましたし、9月30日までの残り2週間弱ですべての番組が終了する予定です。

 季節ごとに最終話が放送されるドラマとは異なり、バラエティの最終回は「打ち切り」というムードが漂い、視聴者にとっては「寂しく終わっていく」という印象があるのは否めません。しかし、このところ民放各局の関係者たちから、「最終回の放送前後はネット上のコメントを注視している」という声を聞くようになりました。なぜ終了が決まっているバラエティへの反応を気にかけているのでしょうか。

“失敗”ではなく“復活”もありえる

 これまでバラエティが終了する理由の多くは視聴率の低迷によるものでしたが、最近の会見では編成担当者が「総合的に判断させていただいた」とコメントするケースが増えました。これは視聴率だけでなく、費用対効果、コロナ禍の影響(スタジオの密や海外ロケの難しさなど)、マンネリを避けるため、当初の目的を達成など、さまざまな要因によるものです。

 つまり、バラエティの終了は「必ずしも“失敗”のらく印を押されたわけではない」ということ。たとえば、日本テレビの『有吉反省会』『おしゃれイズム』『アナザースカイ』は固定ファンが多く、視聴率もまずまずであり、「余力を残した状態で終わらせよう」という姿勢がうかがえます。これは「もっと大きな数字を狙いたい」「もっと若年層に刺さる番組を作ってテレビの存在価値を高めたい」などの前向きな姿勢によるものでしょう。

“失敗”のらく印を押されたわけではない以上、「最終回放送時の反響を知っておきたい」と考えるのは自然な思考回路。「どのくらい惜しまれているのか」「どこが好きだと思われていて、最近はどう思われていたのか」「長寿番組を終わらせるとどうなるか」などを注視し、マーケティングとして今後に生かそうとしているのです。

 しかもこれらの声は通常放送時には得られず、「番組を終わらせるからこそ引き出せる」というもの。だからテレビマンたちは、自局だけでなく他局の番組も含めて、最終回にかかわる動きを注視しているようです。

 また、「マンネリのイメージが薄れて鮮度を回復した」「ファンからの待望論が高まった」「時代や人々のニーズが番組内容に再び近づいてきた」などの現象があれば、“復活”という選択肢が生まれるのも事実。

 実際、この点に関して最も柔軟性のあるテレビ朝日は、『しくじり先生 俺みたいになるな!!』『ナニコレ珍百景』『帰れま10』(『お試しかっ!』内で放送)などを復活させた実績があります。かつては「過去の番組を復活させるのは恥ずかしい」と考えるテレビマンも多かったのですが、現在ではそうではないのでしょう。

ネットコンテンツとしての復活も視野

 この“復活”は単純な地上波での放送に限りません。CSや動画配信サービスなどの有料番組、あるいは公式YouTubeチャンネルのコンテンツなどで復活させる可能性が視野に入っていて、総合的に「収益化が見込めるものか」を見ているのです。

 たとえば9月終了のバラエティも、「地上波での復活はありえるのか」という観点だけではありません。「動画配信サービスやYouTubeでの可能性はあるのか」という視点も含めて、最終話放送後のネット上を注視しているのです。

 以前のようなCMでの広告収入を得ることが難しくなる中、民放各局は視聴率に基づくビジネスだけでなく、「どうやって収入を得ていくか」というマネタイズを考えるようになりました。これまで以上に「バラエティは自局の財産であることを意識し、それをどう生かして収益に変えていくか」を意識しているのです。

 それ以外の理由として最後にもう1つ挙げておきたいのは、昨春に行われた視聴率調査リニューアルの反動。リニューアルによって、これまでの「どれだけの世帯が見ているか」(世帯視聴率)ではなく「どんな人が何人見ているか」(個人視聴率)がわかるようになり、民放各局は「主に10~40代向けの番組を制作する」という戦略にガラッと変わりました。

 これは、「スポンサー受けのいい年代向けの番組を作ることでCM収入を得よう」という戦略ですが、私が取材している限り、テレビマンたちは必ずしも一枚岩ではありません。「もっと人口ボリュームのある50・60代向けのバラエティが必要」「これ以上CM収入だけに頼るビジネスモデルは視野が狭く危険」などと見ているテレビマンもいて、「10~40代の個人視聴率が低い」という理由で終了させることを疑問視しているのです。

 そんなテレビマンが最終回の放送時にネット上の反応を注視して、判断の成否を探っているようですが、少なくとも民放各局の中で「変わらなければいけない」という意識が高まっているのは間違いないでしょう。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。

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