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北朝鮮がKN-23弾道ミサイルを発射

北朝鮮が、13日の長距離巡航ミサイル発射に続いて今度は弾道ミサイルを2発発射しました。
박정천비서 철도기동미싸일련대의 검열사격훈련 지도、朝鮮労働新聞、2021/9/16.

いかなるロケット/ミサイル発射も安保理決議違反

北朝鮮による巡航ミサイル発射は、国連安全保障理事会決議に抵触しません。一方、弾道ミサイル技術に関する活動は厳しく制限されています。人工衛星だろうと核兵器だろうと、北朝鮮によるロケット/ミサイル発射は、国連安全保障理事会決議1695、1718、1874への違反ということになります。

まず、北朝鮮によるミサイル発射が国際秩序に挑戦するものであることは、毎回押さえておきたいところです。

低空を飛翔するKN-23

2発の弾道ミサイルは、北朝鮮西部の平安南道・陽徳から鉄道機動ミサイル連隊による運用の下で鉄道移動発射台から発射されたようです。

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現時点では、いずれも KN-23 と見られます。

『朝鮮労働新聞』によると、水平方向に約800km飛翔したとのこと。『韓国聯合ニュース』では、最高到達高度は60kmであると報じられています。防衛省の発表では、最高高度約50km程度を変則軌道で約750km程度飛翔し、日本の排他的経済水域(EEZ)に落下したと推定されています。

(北朝鮮・陽徳を中心に半径800kmの範囲。)



約800kmを超えて飛翔する弾道ミサイルだと、通常、到達高度は約400kmを超えますが、KN-23は約60kmと、いわゆるディプレスト軌道を描いています。

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今回のKN-23をMETで発射した場合、雑な計算ですが約1,590kmに達する可能性があります。もはや準中距離弾道ミサイルですが、実運用でもMETで飛翔させるのではなく、高度50〜60kmくらいで近くに速く着弾させることを目指すのではないでしょうか。

KN-23のベースとなっているロシアの「イスカンデルM」も、ロシア軍による実験で到達高度は最大で50kmくらいに設定されているようです。
The Iskander-M weighs 4615 kg. It is system is equipped with two solid-propellant single-stage guided missiles, which use stealth technology. Each missile in the launch carrier vehicle can be independently targeted in a matter of seconds.

The missile cruises at hypersonic speed of 2100–2600 m/s (Mach 6–7). The high velocity of the missile allows it to penetrate antimissile defenses. Flight altitude is up to 6–50 km. Interval between launches: less than a minute. The missile can maneuver at different altitudes and trajectories and can turn at up to 20 to 30 G to evade anti-ballistic missiles. It is controlled in all phases of the flight with gas-dynamic and aerodynamic control surfaces. Targets can be located not only by satellite and aircraft but also by a conventional intelligence center, by an artillery observer or from aerial photos scanned into a computer.

The missiles can be re-targeted during flight in the case of engaging mobile targets, making it possible to engage mobile targets (including ships). The optically guided warhead can also be controlled by encrypted radio transmission, including such as those from AWACS or UAV. The electro-optical guidance system provides a self-homing capability. The missile's on-board computer receives images of the target, then locks onto it with its sight and descends towards it at supersonic speed. The circular error probable (CEP) is 5–7 meters.

Andrei Akulov, Russian Iskander-M Missile System: Credible Deterrent, Strategic Culture Foundation, 2016/9/19.
METを描くことがなく、基本的にはディプレスト軌道で飛翔し、マッハ6〜7の速度、大気圏内での機動などがイスカンデルMの特長ということのようです。

KN-23は探知が難しい?

KN-23は射程距離が大きく延伸し、速度はマッハ10を超え、本家イスカンデルMの短距離弾道ミサイルというカテゴリーに収まるものではなくなりました。

しかし、低い弾道軌道をとることは依然として運用上の要です。METで発射された弾道ミサイルが描くような楕円軌道ではなく、KN-23は高度50〜60kmで大気とぶつかりながら降下とプルアップを繰り返しながら、概ね平たい軌道を描きます。

ミドルベリー国際大学院モントレー大学院(MIIS)のFerenc DV (@ferencdv) 氏は、「弾道ミサイルなので巡航ミサイルのような自律的な回避軌道をとるわけではなく、変化球でいうとナックルボールのような予測不可能な軌道をとりえる」というような特徴を指摘しています。

ロシアや中国が開発を進めている極超音速滑空体(HGV)のように、滑空状態にあるKN-23の飛行経路の特定は難しくなります。実際、「防衛省幹部によると、ミサイルは通常の弾道ミサイルが描く放物線軌道ではなく、変則的な軌道で飛行したため、発射直後は飛行距離を割り出せなかった」(読売新聞)と報じられるように、KN-23を探知した後、追跡がうまくいかなかったことが取り沙汰されています。

KN-23は迎撃が難しい?

日本国内に向かってくるKN-23に対する迎撃の可否は、PAC-3(SM-6も?)の展開次第だと思います。PAC-3の配備地である九州北部へ向かうものは迎撃できます。あとは、KN-23の発射数と迎撃ミサイルの数の問題だと思います。なお、迎撃ミサイルの配備数には限りがあるものの、攻撃側も必要な戦域で防衛システムを飽和させられるほど配備できるかどうかは現時点で不明です。

イージス艦のSM-3ブロック2Aの最低迎撃高度が70kmなので、北朝鮮はこれを超えないようにするでしょう。KN-23の射程が1,000kmに達する場合は高度が80kmを超えます。SM-3の攻撃圏内に飛び込んでくるような運用をするかどうかについては懐疑的です。

KN-23開発の目的は?

KN-23は500kgほどのペイロードですし、遠距離となるとさらに弾頭重量は減るので、2、3発で大きな破壊力は見込めません。大量に発射して迎撃ミサイルを消耗させるか、ノドンや北極星2号(KN-15)、スカッドER、さらには巡航ミサイルをミックスしてミサイル防衛システムに対して同時多目標迎撃を強要するか、という構想ではないかと思われます。北朝鮮にとってKN-23とは、極超音速で滑空気味の飛翔体として、ロシアや中国の通常兵器型HGVと同様の立ち位置という愚見です。つまり、迎撃システムに複雑な対応を迫り、意思決定者が対応策を評価するタイムラインおよび迎撃システムのタイムラインを圧縮し、迎撃の機会を限定するのが巡航ミサイルやKN-23の狙いではないでしょうか。

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