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  • ロイター
  • 2021年09月12日 08:05 (配信日時 09月12日 08:02)

アングル:増え続ける「宇宙ゴミ」、衛星が保険に入れなくなる日


[1日 ロイター] - 宇宙空間の地球周回軌道上には、スペースデブリ(宇宙ゴミ)と呼ばれる役目を終えた人工衛星やロケットが無数に漂っている。そのデブリはいま増加の一途をたどって地球を周回する人工衛星を脅かす存在になっており、保険業界では保険の提供をためらう状況になっているという。

テキストや地図情報、動画、学術データをやり取りする人工衛星は何千基も新たに打ち上げられているが、打ち上げ先の軌道上には、65年近く前の初期ロケット宇宙計画以来のデブリが蓄積されている。衝突リスクが高まっており、衛星を対象とする保険を提供する数少ない保険会社に宇宙関連契約の縮小や撤退の動きが生じている、と業界幹部やアナリストは語る。

「保険契約にとって深刻な問題だ」と、保険会社アムトラスト・ファイナンシャル傘下にあるアシュア・スペースの共同創業者リチャード・パーカー氏は語る。

アシュア・スペースは1年以上前、ほとんどの衛星が運用されている地球低軌道(LEO)での宇宙保険の提供を停止した。その後もわずかながら保険契約を結んでいるが、衝突による損害は免責となっている。

パーカー氏はロイターの取材に、「近い将来、この種の保険への加入が難しくなり始めるかもしれない。とても手に負えない巨大なリスクだと認識する保険会社が増えてくるから」と語った。

統計情報を分析しているセラデータによれば、地球の軌道上には8055個の衛星が周回しているが、そのうち42%は稼働していないという。衛星のほとんどは地表から2000キロ上空のLEO上にある。

稼働中の衛星の数は前年比で68%増加し、5年前の2倍以上になっている。

新たな活動の大半は、富豪イーロン・マスク氏が経営する宇宙開発会社スペースXが、傘下の衛星通信事業「スターリンク」のブロードバンド網を拡大していることによるものだ。

スペースXにコメントを求めたが、回答は得られなかった。同社は株式非公開であり、衛星の保険加入状況については情報を開示していない。

保険関係者によれば、米アルファベット傘下のグーグルやアップル、ネット通販大手アマゾン・ドット・コムといった他の大企業もデータ転送を衛星に依存し、電気通信事業者、政府機関、宇宙研究を行っている大学も同様だという。

セラデータによれば、保険業界にとって、宇宙保険は高収益のニッチ市場だった。昨年は人工衛星やロケット、無人宇宙飛行を対象とする保険料収入が総額4億7500万ドル(521億円)に達する一方、損害に対する保険金支払いは4億2500万ドルにすぎなかった。

保険仲介企業ギャラガー・アエロスペースのピーター・エルソン最高経営責任者(CEO)によれば、宇宙保険の保険料は航空機保険の10ー20倍だという。

「そもそも、これは高リスクのビジネスだ」とエルソンCEOは語る。

<宇宙空間のゴミ>

保険会社が抱える悩みの背後には、さらに大きな問題が隠れている。つまり、宇宙に散らばったゴミを取り除く者が誰もいないのだ。

政府機関は、地上から3万6000キロのいわゆる「墓場軌道」上も含め、数千個に及ぶデブリを追跡している。旧式となった静止軌道(GEO)衛星はわずかに残った燃料を使ってこの墓場軌道上に送り込まれ、活動を終える。

地球低軌道(LEO)衛星は、静止衛星よりもずっと小さく、通常は小型冷蔵庫ほどの大きさだ。保険業界の専門家によれば、必要な補償額も50ー100万ドル程度で、静止衛星の2ー3億ドルに比べはるかに低額だ。

従来、宇宙保険の契約は、打ち上げから軌道上での活動に渡って対象機器の喪失や故障、損傷を補償してきたが、機能停止によって失われた収益は対象外だった。加入者は、衛星が他の衛星に損害を与えたり、あるいは大気圏再突入時に地上での物損・人身被害を起こした場合の賠償責任補償を付加することも可能だった。

仏保険大手・アクサ傘下のアクサXLの宇宙ビジネス部門の幹部であるデニ・ブスケ氏によれば、新たに打ち上げられる衛星のうち保険に加入しているのは半分ほどだという。保険関係者は、衝突による損害を免責とする契約が増え、保険に加入する衛星自体が減ると推測している。

「デブリが蓄積され、投入される衛星の数も増えているため、衝突の可能性は高まっている」と、保険会社グローバル・アエロスペースで保険引き受けマネージャーを務めるチャールズ・ウェットン氏は語る。

<デブリの墓場>

セラデータによれば、デブリの衝突によるものと推定される一部もしくは全部の損壊を被った宇宙船の数は過去10年間でわずか11基であり、保険業界の懸念は今のところほぼ机上のものに終っている。

だが、保険会社は現在と将来に渡る保険契約期間にわたるリスクを予測するものだ。だからこそ、宇宙保険のアンダーライターたちは、何年も先に訪れる「終末の日」のシナリオに頭を悩ませている。

ウェットン氏が指摘するのは、「ケスラー効果」が生じる可能性だ。これは米航空宇宙局(NASA)のスペースデブリ専門家ドン・ケスラー氏が1978年に提唱した理論で、LEOが過密状態になり、連鎖的な衝突が発生するという予想である。

そうした状況が切迫している兆候はないが、ケスラー効果が本当に生じるなら軌道全体が保険対象外になってしまう、とウェットン氏は言う。

アシュア・スペースのパーカー氏は、大規模な衝突が3年以内に発生し、保険加入がほぼ不可能になるのは確実だ、と語る。

新たな保険会社が新規参入すれば、保険の需給関係の逼迫は緩和されるかもしれない。だが業界専門家によれば、だがそうなるまでは、企業や大学、政府機関の財務上の負担が大きくなる可能性が高いという。

納税者が巻き添えを食う例もこれまでより頻繁になりそうだ。

米輸出入銀行(EXIM)は6月、スペースXによる打ち上げの他、スペインの通信ネットワーク事業者イスパサートSAによる打ち上げ・軌道上保険の費用として、8070万ドルの融資を承認した。

同銀のジェームズ・クルーズ首席副総裁代行兼副会長は、「EXIMの融資があってこそ、スペースXや他の米国の輸出企業は競争力を維持できる」と語った。

(Noor Zainab Hussain記者、Carolyn Cohn記者、翻訳:エァクレーレン)

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