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  • 2021年09月09日 09:31 (配信日時 09月09日 06:00)

ポスト菅は誰か?迫る日本の〝分岐点〟- 樫山幸夫 (元産經新聞論説委員長)

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ポスト菅の自民党総裁にはだれが、どういう基準で選ばれるのか。

かつてない乱戦の様相を帯びている。そんな中で、相も変わらず、どの派閥が誰を支持するか――だけがかまびすしくとりざたされている。

日本が一流国にとどまることができるかの分岐点で、今回の総裁選は行われる。

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遅れてやってきた新型コロナウイルス感染症による医療崩壊、政局混乱に対するアメリカの懸念、アフガニスタンでの救出作戦の失敗、五輪直前のスタッフ更迭にみる人権意識の低さ――。

一流国の地位を喪失させるような問題が相次ぐなかで、新しい総理・総裁はコロナ後を見据え、緊急の問題にどう取り組み、そして、〝二流国〟への転落寸前の日本をどう立て直していくのか。コロナ後の世界で日本がどう生きるかの大きな青写真を示さなければならない。

〝永田町の論理〟、多数派工作の成功だけで選ばれた理念なき総理大臣では、「衰退した旧大国の指導者」になり下がってしまう。

斬新、大胆な発想でまったく新しい人材を選ぶという発想が政治家にも、国民にも浮かんでこないのは残念というほかはない。

米、「QUADへの影響不可避」

これほど「内外多事多難」な中で行われる自民党総裁選はかつてなかった。

菅義偉政権がわずか1年で終焉をみたことで、不安に襲われているのは、いうまでもなくアメリカだ。短命政権が出ては消え、消えては出る、かつての政局不安定の時代に逆戻りするのではいか――というのが多くに共通した見方だ。

ブッシュ政権などで対日政策に携わった知日派の元米政府高官は、中国の台頭に対抗する日米豪印の4カ国戦略対話(QUAD)の首脳対面会合への影響がでるとみる。

4首脳会合は今月下旬にワシントンで開かれ、退陣を控えた菅首相も出席の予定と伝えられるが、元高官は「日本の政局混迷が続けば、米国のインド・パシフィック構想構想そのものに障害が出る。日本は各国の信頼も失うだろう」と強く懸念する。

異常ともいわれたトランプ政権が去り、同盟国重視のバイデン政権が登場。4月に菅首相を最初のゲストとしてホワイトハウスに招き、対中問題で意見交換した半年もたたないうちに首相が退陣するとあっては、米国の失望は大きい。 

1990年代、自民党の野党転落、自社連立政権の登場、相次いだ自民党短命政権など日本の政局が混乱していた当時、東京勤務の経験もある国務省の〝ジャパン・ハンド〟が語ったことがある。「アメリカは日本と、政治・安全保障、経済など広い範囲でじっくり議論を戦わせ、協調を維持していける強い同盟関係を望んでいる。しかし、その期待は裏切られ続けてきた」と。

菅政権の退陣表明後、筆者は再び、この日本専門家に話を聞いてみる機会があった。

「そう、あのころと全く同じ状況に戻るのかもしれないね」と暗い表情を隠さなかった。

アフガン失敗は政局混乱も一因?

菅退陣という政局混乱のさなかに、アフガニスタンでの救援活動が失敗したのも象徴的だった。

事の次第は、すでに詳しく報じられているので、繰り返すことは避けるが、自衛隊輸送機を3機も現地派遣しておきながら、救出したのは日本人1人とアフガニスタン14人。助けを待つ500人もの日本大使館現地職員、協力者は置き去りにされた。

カブール空港へのテロ攻撃という不測の事態はあったものの、自国出身者に加え、400人ものアフガン二スタン人を無事救出した隣国、韓国との違いはどうだろう。

自衛隊機を出して救出作戦を行うというなら、岸信夫防衛相みずから乗り込み、陣頭指揮に当たるくらい必要だったろうが、日本はそれもしなかった。 

防衛相が自衛隊に撤収命令を出した8月31日は、総裁選を控えた菅首相が、二階俊博幹事長らの更迭を決意したと伝えられた日。総裁選をめぐる動きが自衛隊の救出作戦に影響を与えたといわれてもやむをえまい。

政治、経済、人権でももはや二流?

東京オリンピック直前に、開閉会式のショーディレクターが解任された問題も、日本のイメージを大きく損なった。過去に、ユダヤ人虐殺を揶揄するような発言をしていたことが問題視された。

ホロコーストの告発を続けている米国のユダヤ人権団体が非難声明を発表し、海外メディアも「日本の評判を落とす大問題」などと酷評、辛辣な論評を加えた。

大会組織委員長の森喜朗元首相が2月に、女性蔑視発言で辞任したことを想起させ、海外の冷淡な受け止めを増幅させたのは想像に難くない。

日本にとって深刻な問題はまだまだある。

4-6月の国内総生産(GDP)の前期比年率がわずか1.9%増(改定値)にとどまり、回復傾向にあるアメリカ(6・6%)、英国(20・7%)、中国(7・9%)の増加率に大きく水をあけられた。

GDP世界第3位の地位を明け渡す日も遠くないかもしれない。

8月30日には、テロリストや暴力団に渡る資金洗浄(マネーロンダリング)への各国の対策を評価している国際組織「金融活動作業部会(FATF)」が日本について、「大手金融機関以外は不十分」として〝不合格〟判定を出した。

そしてロシア。菅首相が退陣表明した9月3日、プーチン大統領がウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムで演説、日本との平和条約交渉に意欲を示しながら、不法占拠している北方領土に外資誘致の特区を設置する不当な方針を表明した。

同フォーラムにはこれまで安倍晋三前首相が毎年出席していたが、ことし、菅首相は招待されなかった。

7月26日には、開催中の東京五輪に水をさすように、ミシュスチン首相が日本固有の領土である択捉島を訪問している。

韓国との関係では、先方の国防予算が2022年に日本と並び、23年には超えるという報道(8月31日、日本経済新聞)もあった。

よくもこれだけのマイナス材料が総裁選の時期に集中したものだと驚くが、このタイミングにとどまらず、日々、こうした危機が続いているとみるべきだろう。

これはまさに日本の衰退を如実に示す証左というべきではないか。

経済大国の地位を失いかけている日本は、政治、安全保障、人権問題、テロ防止の分野においても、もはや十分な対策をとることのできないところまで衰退しているという烙印を押されても不思議ではない。

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