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1日の中で「自分らしい時間」を持てたかどうかはその日の眠りを大きく左右する - 泉谷閑示

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精神科医であり作曲家である泉谷閑示さんの新刊『「うつ」の効用 生まれ直しの哲学』が発売になりました。本書は長年、精神療法を通して患者(クライアント)に向き合ってきた著者が、うつを患った人が再発の恐れのない治癒に至るために知っておきたいことを記した1冊です。「すべき」ではなく「したい」を優先すること、頭(理性)ではなく心と身体の声に耳を傾けることが、その人本来の生を生きることにつながると説く著者。前回に引き続き「眠れない」の背景に潜む仕組みを紐解きます。

*   *   *

さて、「眠るまい」と「心=身体」が反発するのには、いくつかの理由が考えられます。まず第一に、そもそも眠りは「心=身体」の側が自然に行うはずのものであって、「頭」によって指示される筋合いのものではないということです。

「頭」に相当する部分を持たず「心=身体」だけでできている自然界の動物においては、睡眠は自然な欲求であり、葛藤なく実現されています。ですから、「心=身体」にしてみれば、「頭」が睡眠に口を差し挟んでくることは越権行為であり、それに反発を覚えるのも当然のことでしょう。

現代人の生活は、案外歴史の浅い、時計仕掛けの硬直化した時間によって毎日の生活が規制されています。季節が変わっても、天候がどうであれ、体調や気分がどんなでも、決まった時間に起床し出勤しなければなりません。そこから逆算して、睡眠を○○時間とるべきだから何時には寝るべきである、と「頭」が計算し、きちんと実行できることが「規則正しい」ことだとして奨励されています。

日々刻々と変わる生き物としては、必要とする睡眠の長さが日によって違ったり、眠くなる時間が変動したりすることはごく自然なことなのですが、しかしこれも現代の常識からすれば、不規則な睡眠として異常視されてしまう状況なのです。また、「うつ」状態においてよく見られる昼夜逆転の状態も、その意味が熟慮されずに、はなから病的なものと捉えられてしまう残念な傾向もあります

一八世紀フランスの思想家ルソーは、いまや教育論の古典とされている『エミール』という主著で、次のようなことを述べています。

「食事と睡眠の時間をあまり正確にきめておくと、一定の時間ののちにそれが必要になる。やがては欲求がもはや必要から生じないで、習慣から生じることになる。というより、自然の欲求のほかに習慣による新しい欲求が生じてくる。そんなことにならないようにしなければいけない。子どもにつけさせてもいいただ一つの習慣は、どんな習慣にもなじまないということだ」(『エミール 上』、ルソー、今野一雄訳、岩波文庫)

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