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高橋メアリージュン「マスク強制への疑問」投稿 専門家はどう見る

感染対策は「マスクが全て」ではないはずだが…(時事通信フォト)

 8月下旬、モデルで女優の高橋メアリージュン(33)が、マスク着用を求める風潮に「あれ?マスクって強制だっけ?」と疑問を投げかけ、大きな話題になった。マスクによって体調不良を起こす人々がいると指摘しており、高橋自身もマスクで〈酸欠状態〉になって頭痛を引き起こすことがあるため、〈苦しい時はなるべく鼻は出しています〉とのこと。

〈あれ?マスクって強制だっけ?と不思議に思うわけです。でもそれも言えない空気になっています。皮膚が過敏な方、酸素不足で体調悪くなってしまう方達(誰がなってもおかしくない)はお店に入れない。制限がかかる。そんな世の中ってどうなんですか?と違和感を感じるんですね。みんなの健康を守るという優しい目的がズレてしまってないかな?と思うんです〉(8月27日のInstagramの投稿より)

 マスク反対派ではないことを念押しした上で、〈選ぶ権利は守られてほしい〉〈コロナでの死者も出てほしくないしマスクを外せない事が原因での死者も出てほしくない。もちろん他の事が原因でも〉と自身の考えを述べている。

 高橋の投稿に対して、ネット上では「マスクが息苦しいのは、みんな同じ」「個人の自由を振りかざして他人を危険にさらさないで」「こういう人がいるから感染拡大が止まらない」などといった意見が続出した。一方で、高橋に賛同する声も多く、「呼吸器の病気持ちだからマスクは辛い」「肌荒れを起こしてしまう」といった意見も寄せられている。

 マスクについて医学的に解説した『マスクの品格』(幻冬舎)の著者である聖路加国際大学大学院公衆衛生学研究科の大西一成准教授は、人々が「マスクの着用」という一点で対立する構図にやりきれなさを覚えている。

「(1)感染源がある、(2)感染経路がある、(3)抗体などの免疫機能が十分でない、の3つの要素がそろうと、新型コロナウイルスの感染が成立します。つまり、感染対策においては、この3つの要素のうちひとつ以上を取り除くことが重要です。

 感染経路を遮断するマスクは、要素(2)に対して有効な手段です。マスクを着けられない人であっても、手洗いやソーシャルディスタンシングによって、(1)の要素をコントロールすることはできます。また、ワクチン接種は(3)の要素をできるだけ取り除こうというものです。

 もちろん、密な環境でノーマスクで大声でしゃべるような人は、今の状況下では問題外ですが、マスクを着用していない時でも(1)と(3)の要素には気をつけられます。この3つの要素を踏まえて考えると、マスクだけで感染対策について誰かを批判しても仕方ないことがわかります。しかもマスクを着けている人たちが、正しい方法でマスクを着けられているかと言えば、残念ながら答えはノーです」(大西氏)

 マスクを着けられない理由には、さまざまな理由による感覚過敏(聴覚、触覚、視覚、嗅覚などの刺激に過敏に反応してしまうこと)などが挙げられる。大西氏は、コロナ禍の前から、マスクを着けられない人々の相談に乗ってきた。また、自身もマスクで肌荒れを起こしやすく、「マスクを着けたくない」という感情は理解できるという。その上で、大西氏は、マスク生活に不満を持つ人々にこのように呼びかける。

「『息苦しいし、肌が荒れる。だからマスクは悪いものなんだ』ではなく、そういったデメリットと、コロナに感染するリスクを天秤にかけて選択することが大切です。また、正直なところ、『マスクが及ぼす悪影響』のような情報には、こじつけのようなものも多くあります。いろいろ研究開発が進み、感染経路を遮断する効果があった上で呼吸もしやすいマスクというのは市場にすでに存在します。なので、マスクはダメだと切り捨てず、自分に合ったものがないか、ぜひ探してみてください」(大西氏)

 大西氏は、「マスクをする、しないは本来自由に選ぶべきこと」と語る。

「こういう社会状況だと、どうしてもある程度の我慢や協力は必要になってきますが、マスクをする、しないは本来自由に選ぶべきことです。もともと誰もがマスクなしで生活していたのですから、マスク着用に不満が出ること自体は当然です。かつて足尾銅山では、有毒な粉塵が舞っているにもかかわらず、やはり支給されたマスクを嫌がる労働者がいました。人間の感情とは、今も昔も変わらないのです。

 情報を正しく解説するには時間がかかります。そのため、『とにかく不織布マスクをしなさい』のような手っ取り早い警句が広がり、強制のような空気が強まってしまう。感染成立の3つの要素を知れば、『マスクを着けない』という一点だけで他人を責めることがいかに無意味であるか、わかると思います。

 有名人のSNSの発信の影響力は、非常に大きいし話題になりやすい。そういう賛否両論がある中で、まず両者ともに『マスクがどういうものか』を理解して不安を取り除いていただきたいです。そして、社会全体のマナーとして、複数の感染対策を同時に行うことの協力をお願いしたいです」(大西氏)

 もちろん、感染防止対策においてマスクは非常に重要なアイテムだ。しかし、マスクを着けていないことを厳しく糾弾する「マスク警察」に違和感を示す声が多いのもまた事実。マスク着用をめぐって暴力沙汰に発展した例もあり、マスクをめぐって人々の分断が進んでいると言っても過言ではない。

 大西氏も指摘する通り、高橋メアリージュンの投稿が巻き起こしたようなマスクをめぐる対立の背景には、知識不足も関係している。むやみにマスクを忌避するよりも、むやみにノーマスクを糾弾するよりも、まずは正しい知識を身につけることが大切だ。

◆取材・文/原田イチボ(HEW)

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